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文化庁指針(漢字のとめ・はねなど)への誤解と早とちり(マチポンブログ)

文化庁指針(漢字のとめ・はねなど)への誤解と早とちり

今回は山口翔平(しょかき)さんのブログ『マチポンブログ』からご寄稿いただきました。

文化庁指針(漢字のとめ・はねなど)への誤解と早とちり(マチポンブログ)

指針への理解

2.29読売新聞夕刊

文化庁の文化審議会漢字小委員会が漢字に関する指針(案)※1を作成しました。

どのような内容か、ちょっと読売新聞を引用して述べますと、

漢字の手書き文字について、「はねる」「とめる」など細かい違いで正誤はなく、多様な漢字の形が認められていることを説明する※2

というもので、具体的には画像のようなものです(画像は2.29読売新聞夕刊より)。

つまり、「とめ」「はね」など些細な違いで漢字の正誤を判断するのは誤りであるから、それを説明する指針を作ったわけです。また、これは、学校教育などでも柔軟に評価するように求めています。

すこし結論めいたことをいうと、漢字を厳しく採点するのは教員間で徐々に出来上がった代物であり、それに全く根拠はありません。実は、細部にこだわらなくてよいということは、文部省時代から60年以上にわたって述べられていたことで、どちらかというと教員の方がそのことを理解せず、厳しい指導をしてしまっていたのです。いわば、それを是正する指針でもあります。

女の2・3画目

教師の厳しい採点には根拠がないわけです。ですから、例えば、私の中学時代の国語教師は「女の2・3画目は交差したら不正解」と声高に言っていましたが、国語教科書の教科書体(1977年以降)はすべて突き出す形である、ということが起きます。(画像:東京書籍中1国語教科書『新しい国語1』(2015))

「ははあん、なるほど、僕も理不尽な採点をされたことあったなあ」と賛同される方もいるかもしれません。

その通りなのですが、「細部にこだわらないと漢字がめちゃめちゃになってしまう!」のような意見も少なくありません。

確かに、誰か読む人が想定されている場合は丁寧に書く必要があります。郵便局員の友人が言っていた「綺麗に書け」という言葉は心に刺さるものがありました。

ですが、今回の文化庁から出された指針は「乱雑に書いてもよい」「適当でもよい」という話ではありません。とめる・はねる・つけるなどが漢字の骨組みに影響しない場合は、その差で誤りとしない。という内容です。「整っているか」「丁寧に書かれているか」などは別の観点です。

指針のQ&Aの部分には、このようにも書かれています。

字体〔注:漢字の骨組みのこと〕が読み取れる字であれば,どのような書き方をしてもよいということを言おうとしているのではありません。整い方,丁寧さ,美しさ,巧みさなどに配慮して文字を書くことが大切な場合があることを踏まえた上で,しかし,これらの評価や観点は,正誤の判断とは別のものなので,混同せず区別して考えましょうというのが,当指針の考え方です。

「女」という字を例にとると、前述したような出す・出さないは、漢字の判別に影響がありません。ですから、出す・出さないでどちらかが正しく、どちらかが誤りということはありません。

「矢」はどうでしょうか。突き出すと「失」という字になってしまいます。このように、漢字の判別に影響してしまうものは、区別しなければ完全に誤りです。

今回の指針は、「女」のように出す・出さないなどで字の判別に影響がないような、「本来こだわらなくてよい細部で正誤を決めてしまうのはやめましょう」という話で、「乱雑に書いてもよい」などとするものではありません。

では、もっと掘り下げて内容を見てゆきましょう。

「字体」と「字形」

これから説明する内容に関係することですので、先に「字体」と「字形」の違いについて説明しておきます。

どちらも似たような言葉で混乱しやすいのですが、常用漢字表の考え方では、

「文字の骨組み」を「字体」

「書くなどして現れた具体的な文字の形」を「字形」

としています。

たとえば、「宇」「字」「学」「學」などはそれぞれ文字の骨組みが異なりますから、「字体が違う」と言えます。
一方、下の図の字はすべてが骨組みの同じ「宇」と認識できます。そのことから、まず、「字体が同じ」ということができます。そして、文字の太い細いや、デザインなど、具体的に表れた形が異なります。ですので、「字形が違う」と言えます。

字体は同じで字形が違う

字体は同じで字形が違う

※ただし、過去の文部省の通達などでも「字形」のことを「字体」と称しているなど、混乱しています。

緩やかな基準でよいとされてきた

先ほども述べたように、60年以上にわたって「細部にこだわらなくてよい」としてきました。常用漢字の前身、当用漢字の字体を示すものとして出された『当用漢字字体表(1948)※3』には、以下のように書かれています。

この表の字体は,これを筆写(かい書)の標準とする際には,点画の長短・方向・曲直・つけるかはなすか・とめるかはね又ははらうか等について,必ずしも拘束しないものがある。そのおもな例は,次の通りである。

このように書いて、例えば糸へんの「小」を3点で書くような書き方が示されています。

それを引き継いだ『常用漢字表(1981)※4』にも以下のように解説が載せられています。

常用漢字表では,個々の漢字の字体(文字の骨組み)を,明朝体活字のうちの一種を例に用いて示した。このことは,これによつて筆写の楷書における書き方の習慣を改めようとするものではない。字体としては同じであつても,明朝体活字(写真植字を含む。)の形と筆写の楷書の形との間には,いろいろな点で違いがある。

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