ビジネス書を読んで成長できる人・できない人の決定的な違いとは?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

ビジネス書を読んで成長できる人・できない人の決定的な違いとは?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第30回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

 

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「本の読んだ時の反応の仕方で、その人が成功するかどうかがわかる。それは『へぇ』と『そうそう』だ」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第4巻 キャリア33より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。

成功者の本を読むだけでは成功できない?!

ある日、井野が桜木の事務所へ行く途中に本屋に立ち寄ると、ビジネス書を立ち読みしている桜木を見つけます。井野が興味本位で「自己啓発本を読むのか?」と尋ねると、桜木はページをめくりながら「啓発書を山ほど読んでも成功には近づかない」とつぶやきます。

その言葉に驚いた井野は、「成功者が成功法則を書いているのだから、成功しないはずがないのでは?」と言います。しかし桜木は「読み方が正しければ役には立つが、成功しているのは本人だけだ」と素っ気ない様子です。実は「本を読んだ時の反応を見るだけで、その人が成功できるかどうかがわかる」のだ、と話す桜木。その反応の仕方とは「ヘぇ」と「そうそう」というものでした。

桜木が言うには、「本を読んで『へぇ』と思う人は、新しい知識に感心するだけで、すぐに次の本に手を伸ばす。一方、『そうそう』と思う人は、本の内容と自分の考え方が似ていることに自信をつけて、堂々と行動できるようになる」のだ、と。「そもそも万人向けに書かれている本を、そのまま真似してもうまくいかないのは当たり前。ポイントは、自分の頭で考えて応用する力だ」と語るのでした。

内容を活かせないのは「疑問」が明確になってないから

巷では「ビジネス書を読んでも、内容を仕事に活かすことができない」という声をよく聞きますが、そういう人は、もしかしたら漠然と知識を得ようとしているだけなのかもしれません。確かに知識をつけることも大事ですが、知識とは使って初めて意味を成します。

本来、ビジネス書を読む目的とは「ビジネスに活かすこと」以外にはありません。ですから「自分の行動をどう変えていくのか?」という一点に集中して読むべきです。学んだ知識を活かせないという方は、もっと自分の中で疑問を明確にした上で、「この問題を解決できる方法はないか?」と意識していれば、答えは自然に入ってきます。それは人間の脳が、自分が注意を向けているものに対して反応するようにできているからです。

このように考えていくと、桜木の言う「へぇ」という反応はまるで他人ごとです。いわば、ドラマを見ているような感覚ではないでしょうか。もう1つの「そうそう」という反応についても、ある意味、自分の行動の根拠を本の中に求めているように見えなくもありません。要は、読みながら「自分が今、やっていることは本にも書いてあるし、間違っていない」という確認作業をしているわけです。

ビジネス書を効果的に読む方法とは?

この話で桜木が語っているのは、「誰もが成功を求めているように見えて、実際の本気度は何気ない言動の中に現れている」ということです。だったら、どのような反応をする人が「ビジネス書を血肉化できる人なのか?」と言うと、私の考えでは、ビジネス書を「えっ!」という驚きを持って読んでいる人です。

「えっ!」というのは、これまで思いもかけなかった答えに当たった時に無意識に発してしまう言葉です。別の表現をするのであれば、「その手があったか!」というニュアンスでしょうか。本の中に書かれている「自分にはこの考え方はなかった」と感じる部分に着目するのです。

株式会社セブン&アイHD元会長で現在、名誉顧問の鈴木敏文氏は、書籍の読み方についてこのように述べています。

「本に線を引くなら、異なる意見や自分にはなかった考え方のところに引くべきです。なぜそう考えるのか、根拠は何か、ひるがえって自分はなぜこう考えてきたのかと突きつめていくことで、自分の考えを補正し、発展させることができます」と。

常に「新しいことに挑戦し続ける人」が成長できる

鈴木氏は「『真のプロ』とは、過去の経験をその都度、否定的に問い直し、常に新しいことに挑戦することのできる人のことです」とも語っています。

人はもともと、「自分は正しい」と思いたいものです。けれどそこをあえて「これは本当に正しいことなのか?」と自らに疑問を突きつけられる人が、真の成功を手にできる人だと言えるのではないでしょうか。

俣野成敏(またの・なるとし)

30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト

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