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なぜこんなに鉄道に惹かれるのか?―日本映画に登場した各地の鉄道を辿る『あの映画に、この鉄道』刊行記念対談[後篇](川本三郎×山下敦弘 監督)

——映画の中に登場する鉄道について記した類のない新刊、川本三郎の書き下ろし『あの映画に、この鉄道』が10月2日に刊行された。この本の中には、鉄道好きと目される監督名が複数回登場する。村山新治監督、山田洋次監督、降旗康男監督など。その中で、最も若手である山下敦弘監督に登場いただき、この本をメインに川本さんと対談をしていただいた。鉄道を描くことの面白さ、そして評論家が読み解く映画の面白さに溢れる対談となった。(取材・構成=関口裕子)

【前篇はこちら】なぜこんなに鉄道に惹かれるのか?―日本映画に登場した各地の鉄道を辿る『あの映画に、この鉄道』刊行記念対談[前篇](川本三郎×山下敦弘 監督)
https://getnews.jp/archives/2096606[リンク]

山下監督の出身地、半田市の駅

山下: 僕は、愛知出身ですが、自動車の県なので鉄道がダメなんです。鉄道のメインは名鉄ですが、駅前にはなにもない。僕の最寄り駅の半田駅は、高校くらいまでは商店街や映画館がありましたが、映画館はつぶれ、商店街もみるみるなくなり。JRの駅前はさらに殺風景だったイメージがありますね。

川本: 名古屋、関西は、私鉄が発達しているので、JRは後れを取っているんですよね。名古屋は完全に名鉄の天下だし、近鉄も入り込んでいる。でも鉄道好きはどうしてもJR中心になっちゃうんですよ。私鉄ってなんとなく邪道な気がして(笑)。宮脇俊三さんが全線制覇したのも国鉄(JR)。今、宮脇さんの跡を継ごうという人は、私鉄全線を巡っていますね。大変な数です。私は全線制覇にはあまり興味がないんです。旅が忙しくなるから。そういえば、半田駅の周辺にはお醤油の会社がいくつもあるんですよね?

山下: 醤油工場もありますけど、お酢のミツカンが有名です。でも、皆、車で移動するので駅前は寂れていますね。学生も駅までは電車だけど、そこに親が車で迎えに来るので、駅前の喫茶店でだらだら話したりしないんだそうです。

川本: 半田市といえば、4、5年前、豊田から出ている名鉄三河線に乗って終点駅の碧南(へきなん)まで行ったんです。地図を見たら川を挟んだ向かいが半田市だったので、近いから歩こうと思ったら、なんと川だと思っていたのが海(笑)!

山下: 海ですよ! でも海底道路(衣浦トンネル)でつながっているんです。

川本: その海底道路にはエレベーターがなく、階段で地下5階くらいまで降りるんです。そして延々と海底道路を歩いて向こう側に着くと、また5階分、歩いて上がる。しかも地上に出ても工場街というか、倉庫街で、歩いていても全然楽しくない(笑)。

山下: そうそう。

川本: いつまでたっても半田の町中に辿り着かない。へとへとになってやっと夕方着いたら、今度は居酒屋がないんです(笑)。本当は新美南吉(『ごんぎつね』など)の記念館に行く予定だったのにそんな気力もないくらい、へばってしまった記憶があります(笑)。

変わりゆく鉄道 変わらない駅、その理由

そんな半田市に、日本最古の現役駅舎がある。1886年の開業当時から変わらない亀崎(かめざき)駅。JR半田駅の隣。半田駅と同じ武豊(たけとよ)線だ。降りたことはあるけれど覚えていない、という山下監督の話から、変わらない駅の話に。

川本: 小津安二郎の「東京物語」(53年)に出てくる東武伊勢崎線の堀切駅。いまは東武スカイツリーラインですか。山村聡の医院があるという設定で、駅舎も登場しますが、堀切駅は今とほとんど変わっていないんですよ。

山下: へぇ。

川本: 昭和28年の映画で、それから60年以上経っているのに変わっていない。周りになにもないので変わりようがないんです。

山下: そういった残され方もあるんですね。

川本: 大きな駅で言うとJRの神戸駅がそう。昭和の初めの建物です。神戸もご存知のように東隣りの三ノ宮の方が賑やかになったため、手がつかなかった。

山下: 僕、学生時代、先輩に誘われて、篠田正浩監督の「瀬戸内ムーンライト・セレナーデ」(97年)のエキストラに行ったんです。モブシーンの兵隊役で。それを撮ったのが神戸駅。乗降客がいない夜中にしか撮影できないので、始発まで撮影して、その辺の海岸で車中泊して、また夜、現場に戻ったのを覚えています。その時、初めてプロの撮影現場を見ました。でも篠田監督、すごく怒っていましたね。

川本: なぜですか?

山下: エキストラには大阪芸大のやつらが結構いたんですが、みんな映りたいので主演に近寄っていっちゃう(笑)。

川本: はははは。

山下: 「お前ら! バラけろ!」みたいな感じで。熊切(和嘉)さんも一緒だったんですが、僕らは坊主頭だったので結構いい場所に配置してもらえたんですが、髪の長かった熊切さんは傷痍軍人役で奥の方に配置されていました(笑)。

川本: 映っていましたか?

山下: 何人かは映っていましたけど、一回、劇場で見ただけなので。

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