米イラン経済制裁再開:ネタニヤフ首相歓迎表明 2018.11.05(オリーブ山便り)

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米イラン経済制裁再開

今回は石堂ゆみさんのブログ『オリーブ山便り』からご寄稿いただきました。

米イラン経済制裁再開:ネタニヤフ首相歓迎表明 2018.11.05(オリーブ山便り)

11月5日、アメリカのイランへの経済制裁が全面的に再開される。この中には原油の取引も含まれており、イラン経済に決定的な打撃を与えるとみられる。しかし、アメリカがこの方針を発表して以来、イランから手を引く会社が続出しており、イラン経済への打撃はすでに始まっていた。

アメリカは、経済制裁を全面再開する際には、日本はじめ8カ国(中国、インド、韓国、トルコなど)にもイランとの取引を全面的に停止するよう要請していたが、4日、これを180日まで延期することを容認すると発表した。しかし、180日(6ヶ月)以降の猶予はないとしている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181104-00050053-yom-bus_all

関係国の制裁を半年延長するというのは、これから冬で最も石油を必要とする時なので、アメリカが配慮したのかもしれない・・・とは考えすぎかもしれないが、これから冬に突入する日本は特にイランの石油を必要としているところである。(輸入先としてはサウジ、UAEに続いてイランは3番目)

これについて、トランプ大統領は、イランの原油分についてはサウジアラビアがカバーするので問題ないと言っている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5389278,00.html

ネタニヤフ首相がアメリカの制裁再開を歓迎

世界では、イランへの経済制裁に懸念もある中、イスラエルのネタニヤフ首相は、制裁再開を全面的に歓迎するとするビデオメッセージを発表した。

https://www.timesofisrael.com/pm-praises-trump-for-iran-sanctions-renewal-were-already-seeing-results/

アメリカのイランへの経済制裁のねらいは、イラン市民による現イスラム政権の転覆である。しかし、イランでは、逆に反米感情が高まっており、4日には、アメリカ大使館前に数千人が集まって、「アメリカに死を」「イスラエルに死を」と群衆が叫ぶ様子が報じられた。この日は、1979年のアメリカ大使館占拠を記念する日でもあった。

https://www.timesofisrael.com/iranians-chant-death-to-israel-on-anniversary-of-us-embassy-takeover/

あぶなっかしいトランプ政権

1)中間選挙の結果次第で失脚もありうる

微妙なのは、これと同時期にアメリカで中間選挙があることである。6日の中間選挙で、トランプ大統領が勝利すれば、トランプ大統領の次期就任も確実な見通しとなり、イランへの態度も強化できるし、世界でのアメリカの態度は今より大きくなるだろう。

しかし、その逆であれば、トランプ大統領の議会での求心力が弱体化し、イラン政策についても混乱が始まるだろう。ならば、イランは、アメリカの制裁に同意しいないロシア、中国、EUなどとの取引を続けて、トランプ大統領の失脚までなんとか頑張れば良い。国々もイランとの取引を再開させるかもしれない。

*わかりやすいNHKの中間選挙解説: https://www3.nhk.or.jp/news/special/us_election_2018/

 
2)対イラン制裁のかなめとなるサウジアラビアの失脚もうすいながらもなきにしもあらず

中間占拠の結果以前に、サウジアラビアのカショギ「記者殺害に関するモハンマド・ビン・サルマン皇太子スキャンダルもアメリカには痛い要因だ。この件に関しては、まだカショギ記者の遺体がみつかっておらず、おそらくは、ばらばらに切断した上、酸性物質で遺体を溶解抹消した可能性が高いとされる。

サウジアラビアは、イエメンでイランと戦争中で、市民たちが飢餓に苦しむ中、批判が高まっている。おそらくはアメリカが丸め込むと思われるが、もし、サウジアラビアが失脚するようなことになれば、アメリカの対イラン政策は、大きな打撃を受ける。

 
3)中央アメリカ難民への対処次第で批判が高まる可能性

また、中央アメリカからアメリカの国境を目指して歩いている難民たちがいる。10月中旬、ホンデュラスからアメリカへの移住を目指して、百人ほどがメキシコとの国境を目指して歩き始めたのだが、途中のグアテマラなどからも人々が加わり、今では7000人以上に膨れ上がっている。

https://www.fnn.jp/posts/00379530HDK

トランプ大統領は、国境に警備隊を派遣し、これを徹底的に阻止する構えである。これは難民受け入れを阻止しようとするトランプ大統領に追い風になるとの見方もあるが、逆にもし難民に警備員が事故的にでも発砲するようなことになれば、トランプ大統領への批判は倍増するだろう。

このように様々なことがおこり、どちらにどうころぶのか、先行きが見えない中で、アメリカの中間選挙が行なわれているのである。

石のひとりごと:イスラエルを支持するのは曲者ばかり?終末の匂い

トランプ大統領は、これまでの国際社会の常識には逆らうことばかりをしている大統領である。その中でも最も大きな反逆がイスラエル支持であろう。トランプ大統領の登場以降、アメリカに従って、イスラエルを支持すると公に言う国々が現れてきてはいるが、どうも国際社会では曲者感の多い国々ばかりのようである。

9月にイスラエルを訪問したフィリピンのディトルテ大統領は、容赦せず麻薬関係者を次々に処刑していることで、国際社会からはひんしゅくをかっている。自分をヒトラーにもたとえて大ひんしゅくであった。イスラエルではこの大統領を受け入れるかどうかがすでに論議になっていた。

しかし、国連においては、フィリピンはイスラエルにフレンドリーな国の一つ。エルサレムへの大使館移動の可能性もうすいながらもある国である。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5339053,00.html

先週ブラジルで当選したヤイール・ボルソナロ大統領(63)は、大統領自身が福音派クリスチャンで、かなりの親イスラエル。ブラジルの大使館をエルサレムへ移動させることを公約に掲げている。来年1月の大統領就任式には、ネタニヤフ首相が参加するといった情報もある。

しかし、ボルソナロ大統領は、極右と目される人物でもある。

https://www.bbc.com/news/topics/cdr1vzk8ngvt/jair-bolsonaro&link_location=live-reporting-story

福音派クリスチャンといえば、福音派クリスチャンで神学者、国際政治関連で影響力のあるヨエル・ローゼンバーグ氏は、積極的にイスラエル支持を表明し、福音は代表団を率いてエジプトのシシ大統領に会った他、先週には、アブダビのザイード国王に会った後、サウジのモハンマド・ビン・サルマン皇太子にも面会した。

福音派の動きが、ここまで大きくなり表面化することは、トランプ大統領が出てくるまではありえなかったことだった。オバマ政権下でのアメリカは、ゲイや中絶を認めるといったポリコレ(ポリティカル・コレクト政治的な正しさ)の流れが主流であったため、福音派は宣教の自由を失いかけた。それがトランプ大統領の出現で、逆転したというのが今である。

イスラエルとしては、こうした味方たちが増えてくるのはありがたいことである。しかし、これに警戒感を持つ意見も少なくない。イスラエル支持を表明する国々や団体が、国際社会ではやはり、常識破りである場合が多いからである。

彼らへの評価がそのままイスラエルの評価になることと、最近のイスラエル支持表明の指導者たちは新参で、いつ失脚するかもわからないというあやうさもある。もし彼らの次に出てくる指導者が、同じ路線でない場合、反動でイスラエルの立場は、以前よりいっそう困難なものになるだろう。

アメリカでは今、福音派が勢いづいているが、中間選挙で共和党が破れ、トランプ大統領が弱体化することになれば、またポリコレが復活し、イスラエルとユダヤ人、福音派バッシングへと豹変する可能性もなきにしもあらずである。そうなれば、終末時代の聖書の神に従う者たちにとっての艱難時代の図式に近づいていくことになるのかもしれない。

もう一つ、注目される点は、アメリカの全面制裁に対し、イランは、ロシア、中国、ヨーロッパ(イスラム化進む)との取引で、なんとか何を逃れようとしている点。

前から指摘されていることではあるが、アメリカ、イスラエルという聖書価値観組と、それ以外組の対決という、終末論的図式にさらに近づいていくともみえなくもない。さらにもしアメリカでトランプ大統領が失脚し、ポリコレに制圧されてしまった場合、イスラエルは孤立する流れである。

国粋主義が世界中に蔓延し始めている中、トランプ大統領が失脚することはなさそうではあるが、何が起こるのかわからないというのが最近の国際情勢である。

イランは、アメリカの全面的な経済制裁にどう出てくるのか、イランと取引する8カ国はどう出てくるのか、世界市場はどう反応するのか、そして中間選挙でアメリカがどうなっていくのか、ニュースから目を離せない死1週間になりそうである。

執筆: この記事は石堂ゆみさんのブログ『オリーブ山便り』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2018年11月14日時点のものです。

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