入社3年目で過半数が「今の仕事を続けていけるか“不安”を感じている」――初期キャリアと女性管理職志向の関係を調査(前編)

入社3年目で過半数が「今の仕事を続けていけるか“不安”を感じている」――初期キャリアと女性管理職志向の関係を調査(前編)

女性が長く活躍できる職場の条件として、「出産時の制度」が注目されがちです。実際に「出産時の制度」が決め手となり、今の職場を選んだという方もいるのではないでしょうか?

しかし、こうした制度の有無は知りながら入社したとしても、実際には新入社員から3年目くらいまでの若手社員の期間(初期キャリア時)に、「この会社には長くいられないな」と感じてしまう人がどうやら多いようです。「出産時の制度」だけでなく、若手社員のときの、職場環境や、仕事の任され方にその要因があるようです。

そこで今回、『男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査』※を実施された独立行政法人国立女性教育会館 研究員島直子さんに、ジョカツ部リーダー中野裕子(プロフィールはこちら)が詳しくお話をうかがってきました。

プロフィール

独立行政法人国立女性教育会館 研究員 島 直子(しま なおこ)さん

上智大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程修了。博士(社会学)。早稲田大学、お茶の水女子大学等で非常勤講師を務め、2011年〜2014年5月、首都大学東京ダイバーシティ推進室特任研究員。2014年より国立女性教育会館研究国際室研究員。

※『男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査』概要

男女共同参画社会の実現に向けた基盤整備のための調査研究として、初期キャリア形成期の女性および男性のキャリア意識を高める要因について、明らかにすることを目的とした調査。従来、女性のキャリア形成をめぐっては、主に「結婚・出産後の就業継続の難しさ」に焦点がおかれてきました。しかし近年、「初期キャリア期」の重要性が注目されています。そこで平成27年に民間企業の正規職についた男女を5年間追跡する「パネル調査」が実施されました。

入社3年目までのキャリア初期で仕事が面白いと思えれば、仕事よりライフイベントをやりくりする意識に

島直子さん(以下島):女性の労働の研究というと、結婚や出産を迎えたときに「どうすればやめないか」という研究が目立ちます。ところが、産んだときにはもう「会社を辞めること」を決めている女性も多いようです。

働く女性はいつ、なぜ「出産のときが来たらこの会社を辞めよう」と決めるのか?「管理職になることをあきらめる」のか?何があれば女性社員は会社にい続けて成長できるのか?これらのことを明らかにすることで、女性活躍の早期対策ができるのではないかと思います。

入社3年目の女性社員は「仕事への自信はついてくる」が「仕事の将来性が不安」になる

:キャリアの初期段階で「仕事が面白い」と思えるようになっていれば、結婚出産を迎えたとしても「なんとか仕事を続けたい」という気持ちになるんです。仕事を続けることを前提に、ライフイベント側をやりくりしようと発想が逆になると思います。

しかしながら、現状はそうなっていません。

平成27年に入社した新入社員を追跡する「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」では、入社1年目、2年目、3年目と「担当業務を遂行するための知識・技能が」「ある」と答えた人、つまり仕事に自信がある人が、女性は1年目25.6%から3年目48.7%へ、男性も1年目24.2%から3年目50.6%へと増えています。(図1)

それにもかかわらず、「将来のキャリアにつながる仕事をしている」と答えた人(「あてはまる」と「どちらかというとあてはまる」の合計)は、女性が1年目84.2%から3年目61.4%、男性も1年目87.6%から3年目71.6%で、いずれも落ちています。(図2)

中野裕子(以下中野):特に、女性の落ち幅がすごいですね。「仕事はできるようになってきたけど、これが将来につながるのかな」と不安に思っている様子が見てとれますね。

:そうですね。将来のキャリアにつながる仕事をしているかについては女性の落ち幅が大きいのですが、「自分の能力で今の仕事を続けていけるか不安」と感じている人は、実は男女ともに大きく変わらず、いずれも過半数の人が不安だと感じているようです。

どのような人が「仕事に将来性を感じている」のか

:入社3年目の調査では、仕事に将来性を感じている人の方が「教育・訓練の機会が充実している」「相談できる同僚・仲間がいる」「上司が自分の育成に熱心」「自分からアイデアや企画を提案している」割合が高くなっています。(図3)

:職場環境が、将来性を感じられる仕事かどうかに影響していることがわかりました。

3年で職場に対する評価は下がり、仕事を続けることが不安な人は減らない

:職場環境が将来性を感じられる仕事かどうかに影響しているにも関わらず、職場の評価は下がる傾向にあります。(図4)

中野:1年目は新人研修などがあって、教育も手厚いですものね。

:そうですね。3年目にもなれば、ある程度自分で考えてやりなさいということだと思いますが、3年で職場環境への評価が下がるんです。

仕事のことが全くわからなかった1年目と、仕事がある程度できるようになった3年目で、「今の仕事を続けていけるか不安」な人の割合がほぼ変わらないこともわかりました。

中野:ここまでのお話をまとめると、

・入社1年目から3年目の人たちは、入社してから年々担当業務の仕事はできるようになっていると感じている

・だけど、自分の能力で今の仕事を続けていけるのだろうかという不安は、男女ともに減らない

・過半数くらいは、3年目になっても、不安がつづいている

ということですね。

:はい。「職場環境への評価が下がる」ことで「今の仕事が将来につながると思えなくなる」ことも見えてきました。新入社員を対象とした調査なので、どんどんモチベーションを高めて活躍してほしいのに、「今の仕事を続けていく不安」が小さくならないのが現状です。

職場や働く人本人が対策できることはあるのか

:環境要因が整っていれば「この仕事に将来性がある」と感じる傾向にあるので、職場目線では、3年目になっても「教育・訓練の機会」をもつこと、「相談できる環境」をつくること、「上司が育成に熱心であること」などを特に意識して対策していくことができると思います。

中野:働く人本人も、環境に対して受け身にならず、「自分はもっと成長したい、将来のことを話し合いたい、育ててもらいたい」と自分の気持ちを伝えることも大切ですね。

 

後編では、

働く女性はいつ、どのタイミングで管理職志向を失うのか?初期キャリアと女性管理職志向の関係後編

をテーマにお届けして参ります。

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INTERVIEW:中野裕子 EDIT&WRITING:飯沼暢子

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