「結果」を出す人は、“相手を立てる力”がバツグンに高い!そのワケは?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第31回目です。
『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「天動説から地動説に変わったのは、地動説派が天動説派を粘り強く説得したからじゃない」
(『インベスターZ』第5巻credit.41より)
大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。
道塾学園投資部設立の経緯
ある日、「投資部の歴史は日本経済の歴史だ」と感じた財前は、部室にあるすべての投資記録を調べることを思いつきます。現存するもっとも古い記録は、1904年の日露戦争にまで遡ります。「これを書いた生徒が投資部・初代キャプテンの天才少年…」。読んでみると、不況にも関わらず、その投資成績は素晴らしいものでした。記録をたどっているうちに、うたた寝をしてしまう財前。するとなんと、明治時代の道塾学園にタイムスリップしてしまいます。
ちょうど、学園の創設者・藤田金七(かねしち)の番頭たちと数学の天才少年の間で投資会議が開かれているところでした。財前の姿は、明治時代の人には見えません。机の上にある議事資料に目をやると、そこには「財前龍五郎」という名が。財前は、この財前龍五郎という少年が自分の曽祖父であることを直感します。財前がタイムスリップしたのは、日露戦争終結の翌年。戦争に勝利した日本が好景気に沸いていた時でした。
藤田家の番頭たちは、この機に株を買い増すことを主張。一方、龍五郎は「賠償金が出ない戦勝景気は長く続かない。今のうちに売り抜けるべき」だと提案。結局、番頭たちによって押し切られ、会議の結論は「買い」で終わります。ところが、議事録係の本間は龍五郎と示し合わせて、記録を「売り」へと修正。龍五郎は本間に「結果さえ良ければ、彼らにはどっちでもいいこと。こんな無駄な会議よりも、学園に生徒だけの秘密の投資部を設立したい」と告げるのでした。
出来上がったヒエラルキーは容易には覆せない
本日ピックアップしたのは、龍五郎が天動説と地動説を事例として挙げている場面です。龍五郎が採っていたのは「下手に逆らわず、世代交代を待つ」作戦です。なぜ、待つことが作戦なのかというと、たいていの組織はヒエラルキー(ピラミッド型の階層組織)でできているからです。
これは会社などでもそうですが、残念ながらすでにできあがっているヒエラルキーの中で、少数の者が反対したところで、従来の慣習を覆すことは難しいのが実情です。なぜなら組織が階層化しているために、たとえ誰かが反旗を翻してどこかの役職に収まったとしても、その上の地位にはまた別の既存勢力の人が居座っているからです。つまり、異端は必ずどこかで弾かれます。
結局のところ、組織が新しい主張を受け入れるには、既存勢力が退場するまで待つか、彼らが口出しできそうにない、全く新しい世界を自らつくり出すしかありません。
相手を立てる際には「言葉を選ぶ」
1つ、事例を見てみましょう。Aさんは、ある自転車宅配サービスの会社で配達員をしていました。Aさんは配達時間を短縮しようと考え、ストップウォッチで信号の待ち時間を計り、ノンストップの配達ルートを見つけます。これによって作業時間を2時間削減でき、空いた時間で経営書を読んで過ごしました。
Aさんは同僚の最短ルートも調べてあげようとしたところ、何と会社から解雇されてしまいます。既存勢力に煙たがられたことが原因でした。そこで、Aさんは自ら宅配サービス業を起業。数年後、Aさんを追い出した会社は、Aさんが立ち上げた会社によって倒産に追い込まれてしまったのでした。このように、抜きん出た成果を出す人は、既存の階級組織になじめないことが多く、たいていは新たな活路を外の世界に求めることになります。
先ほどお話した、もうひとつの「既存勢力が入れ替わるまで待つ」という方法が、龍五郎が採っていた作戦です。この場合、必要なのは「相手の顔を立てつつ、実を取りにいく」ということです。その際、言葉は選んでおいたほうがいいでしょう。「そうします」とか「取り入れます」といった言葉は使わずに、「勉強になりました」と答えるようにします。
©三田紀房/コルク
大事なのは「得たい結果を手に入れる」こと
私もサラリーマン時代、社内ベンチャーで起業をしましたが、親会社は老舗メーカーでしたので、社内ではいろいろと言ってくる人がいました。それでもことなきを得たのは、私が彼らが自分の経験から物申せない流通業を新しく興したからです。
どちらにせよ、自らの責務をまっとうする一方で、やはり相手を立てるべきところは立てたほうが、ものごとがスムーズに運ぶのは間違いありません。
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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