情報“量”が決め手じゃなかった!「適切な」判断に、必要なモノとは?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第28回目です。
『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」
(『インベスターZ』第5巻credit.37より)
大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。
黒字の子会社を売却する理由
ある日、投資部の部室でみんなが麻雀をしていると、「情報サービス大手のロクルートが、子会社のメディアカントリーを売却」というニュースが流れます。ロクルートの株を買っていた先輩の渡辺は、「黒字の子会社を売却するということは、今期の収益が良くないのかもしれない。明日の朝一で持っている株を処分しよう」と言います。
ところが、それを聞いた財前は「明日、最安値をつけたところでロクルートの株を大量に買う」と言い出しました。財前は、現在のロクルートのトップが3カ月前に社長に就任した際、アップしたツイッターのつぶやきをみんなに見せます。そこには古代中国の軍事戦略家・孫子の言葉「彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず」と書かれていました。
「もともとロクルートとは人生のイベントに関連した事業で成長してきた企業。一方、子会社のメディアカントリーは、最近は娯楽メディア等にも手を広げている。新社長はそれを見て、以後は自社の強みに特化することを決断した。その決意表明がこのつぶやきだったのではないか」と言うのです。財前の推理に納得した先輩たちは、「渡辺の持っている株を売却して得た資金で再度、ロクルート株を底値で買い増せば、これまで以上に収益が上がる」と考えたのでした。
目的と背景を確認すれば、大きく“的を外す”ことがなくなる
私は拙著『プロフェッショナルサラリーマン』の中で、「上司からの指示があった場合は、その目的と背景を確認する」と書きました。一般に、会社が何か行動を起こそうという時には、必ず「なぜそれをやるに至ったのか?」という背景と、それを行うことによって得たいもの(目的)があるはずです。この2つをあらかじめ抑えておけば、自分の仕事が「会社がやろうとしていること」から大きく踏み外れることはない、という考え方です。
今回の話で言うと、ロクルートが子会社を売る目的が、万一「財務面で困っていたから」ということであれば、先輩たちの言う通り、一刻も早く株を売って損失を抑えにかかるべきでしょう。
しかし、財前は、同社が子会社を売却することにした目的とは「さらなる業績向上のためではないか」と社長のつぶやきから予測しました。その背景にあるのが「自社の強みに特化していく」という、新社長が打ち出した経営方針があった、というわけです。
大切なのは、相手の考えていることを“想像する”こと
例えば、自分に仕事を頼んできた上司の意図を知りたい、ということであれば、本人に聞くのが一番確実です。しかしこれがもっと「会社の今後の方向性は?」といったような大きな話になり、しかも聞く相手も自分から遠い存在の場合は、直接聞けることのほうが少ないでしょう。
そういう時に、相手の考えていることを知る方法の一つとして、「相手が発信している情報に目を通す」ということが挙げられます。相手が社長なのであれば、社内報を読むとか、書籍を出版していればそれを読むことによって、社長が何を考えているのか、ということがだいたいわかってくると思います。
私もサラリーマン時代は常に社内報などをチェックして、社長が何を考えているのか?ということを知ろうと努めてきました。しかし、社内報などに掲載されている社長の言葉は、表面的な言葉に終始しているのが普通です。
だからと言って、「どうせ本音は書いていないから読まない」のではなく、「この誌面で書けるのはここまでが限界だろうけど、本当はこんなことが言いたかったのではないか?」と想像する訓練をすることが大切です。それを続けていくことによって、だんだん相手が考えていることや、ものごとの裏側までが見えてくるようになるのではないでしょうか。
自分の推理が合っている必要などない
現実的には「社長が本当はどう考えているのか?」というのは、本人に聞かない限りわかりません。実際には、直接聞いてもわからないこともあるでしょう。これは「社長が何を考えているか?」という話にとどまる話ではありません。ビジネスの局面においては、一から十まで情報を不足なく与えられ、判断することのほうが少ないのです。大切なのは、少ない情報から察しようとする姿勢。自分の仮説が間違っている可能性もあるでしょうが、それはそれでいいのです。
これは、ビジネス書の読み方にも通じています。要は、作者の言っていることなど100%理解できなくても構いません。勝手な解釈でも、自分の役に立つことはたくさんあります。何よりも、自分の仕事にとってプラスになることが大事なのであって、「合っていなければいけない」ことなど何もないのです。
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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