ペット“可”ではなく“共生”。犬も猫も一緒に暮らすシェアハウスの魅力とは

ペット“可”ではなく“共生”。犬も猫も一緒に暮らすシェアハウスの魅力とは

近年、ユニークなコンセプトのシェアハウスが続々と登場していますが、ペットと一緒に暮らすことができるシェアハウスはまだまだ珍しいかもしれません。今回は、ペット共生シェアハウスを運営するHOUSE-ZOO株式会社代表取締役の田中宗樹さんに、ペット共生ハウスの魅力や運営について伺いました。

ペット共生シェアハウスの原点は、動物と一緒に暮らした故郷の生活

そもそも、田中さんがペット共生のシェアハウスをつくろうと決めたのは、自身の出身地である宮崎での思い出がきっかけだったそうです。

「上京するまでは、庭で犬やニワトリを飼うなど動物と一緒に暮らすのが当たり前の生活でした。でも、東京の集合住宅では、ペットを飼える物件はそれほど多くありません。しかし、人間と動物は昔から共存・共生してきたわけだから、動物と一緒に暮らせる生活をつくりたいと思うのは当たり前のことだと思うんです。動物と共生する住環境づくりに特化していきたいという考えで今の会社を始めました」HOUSE-ZOOのシェアハウスではペットも家族の一員。特に共用スペースでは、ペットの誤飲や誤食を防ぐためにルールも設けている(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

HOUSE-ZOOのシェアハウスではペットも家族の一員。特に共用スペースでは、ペットの誤飲や誤食を防ぐためにルールも設けている(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

ちなみに、賃貸物件などでよく見かける「ペット可」という言葉はHOUSE-ZOOの物件にはありません。ペット可物件は動物が住んでも構わないというだけで、同じ建物のなかには動物が苦手な人が住んでいることも。

一方、HOUSE-ZOOでは、ペット可の代わりに「ペット共生」という言葉を使っています。ペットを飼うことを許可するという意味ではなく、はじめから「ペットと暮らすための住環境」をつくっているからです。ペットがいるのが当然の住環境なので、動物が苦手な人はまず入居しません。同じ建物で生活する住人たちがその環境に不満をもつことが少なくなるのです。

ペット同士の相性は人と同じ。入居者同士が助け合いながら飼育

HOUSE-ZOOが運営するペット共生シェアハウスでは1人で3頭まで飼うことができるので、運営物件全体では入居者よりもペットのほうが多いそう。シェアハウスによって飼える動物は異なりますが、犬や猫だけでなく、フェレットやカメ、インコ、ウサギなどといった小動物もいます。

「当社のペット共生シェアハウスの特徴は、ペットを飼っていなくてもペットが好き、ペットをこれから飼いたいという人でも入居でき、動物との生活が楽しめる点。飼っていないけど動物のいる環境で暮らしたいという人もいます。いずれはペットを飼いたいと考えている人も多いですね。まわりの入居者が飼い方を教えてくれるので、ほかの入居者の様子を見て飼いたいと思うようになった人も少なくないんです」犬も猫も仲良く共生させるために、入居する際には時間をかけて環境になじませる工夫も(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

犬も猫も仲良く共生させるために、入居する際には時間をかけて環境になじませる工夫も(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

また、HOUSE-ZOOが運営するシェアハウスのなかには、犬専用・猫専用のほか、犬と猫が一緒に暮らす物件もあります。仲良くなりづらいと言われる犬と猫が共生するために、運営上注意している点はあるのでしょうか。

「犬と猫が特別相性が悪いとは思わないです。人と一緒で、同じ犬同士・猫同士であっても相性のいい子も悪い子もいます。だから、犬と猫を別々に生活させるなど、そこまで気をつかうことはありません。

ただ、猫だけは入居した最初の1カ月間ぐらいは部屋から出さないで、ということはお伝えしています。猫の場合は、いきなりほかの犬や猫と顔を合わせると警戒してしまう習性があるんです。たとえ猫専用シェアハウスであっても、あえて顔も合わせず、姿を見せず、まずは気配だけを感じさせるようにしています。それだけでも、もともといる子たちは新しい子が来たって分かるんですよね。その『気配』が新しく来た子にとって当たり前の生活になったら仲良くなれる。その点は飼い主さんにも焦らないように注意しています」入居者が集まってパーティーを開くことも。ペットも他の入居者と一緒にくつろいでいる(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

入居者が集まってパーティーを開くことも。ペットもほかの入居者と一緒にくつろいでいる(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

一人暮らしでペットを飼うとなると、当然ながらすべて一人で世話をしなければなりません。でも、ペット共生のシェアハウスなら、入居者同士が自然と助け合う関係ができるのだそうです。

「入居して間もないうちは、慣れなくて吠えたり鳴いたりするペットもいます。でも、ペット共生シェアハウスで暮らす入居者たちは、そういう子たちに対して『うるさい』と注意するのではなく『ずいぶんと鳴いてるけど大丈夫?』『なんかあったんじゃないの?』と心配するんですよね」

入居者みんなで助け合いながらお互いのペットを大切にする生活は、ペット自身だけでなく飼い主にとってもうれしいに違いありません。

過剰な設備は不要。ただし、清掃や片付けは徹底的に

ペットと共生するシェアハウスとなると、どうしても気になるのは建物の設備や衛生面のこと。設備や環境づくりでこだわっている点はあるのでしょうか。

「当社のシェアハウスは普通の空き家をリノベーションしている物件がほとんど。散歩から帰ってきたときに捨てやすいところにゴミ箱を置いたり、ペットバスを設置したり、できるだけニオイを防ぐための換気を検討したりはしますが、それ以上の特別な設備はありません。できるだけ滑りにくく、粗相をしたときに片付けやすい建材を採用していますが、フロアや壁もペット用のものではないんです。ペットと共生する住環境としてはこれで十分。これ以上の設備は過剰だと考えています」ペット用の体を洗うお風呂(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

ペット用の体を洗うお風呂(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

また、シェアハウス内のお掃除も気になるところです。同社が運営するシェアハウスでは、ロボット型掃除機で毎日掃除するほか、10日に1日のペースでHOUSE-ZOOのスタッフや同社に採用された近所の人が清掃を行うそう。「ペットと共生する環境づくりのために、掃除や片付けにはとても気を配っている」と田中さんは言います。共用スペースの様子。ペットの誤飲や誤食を防ぐために片付けのルールは徹底している(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

共用スペースの様子。ペットの誤飲や誤食を防ぐために片付けのルールは徹底している(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

「一番怖いのはペットの誤飲や誤食です。そのため、入居者の皆さんには、共用スペースに物を出さない・出したら片付けるということを徹底的にお伝えしています。共用スペースでは、ペットから目を離さないようにするということもルールにしています。ただ注意するのではなく、ルールを破ったことでペットたちが苦しい思いをするかもしれないということを伝えると理解してもらえますね」

地方からペットと一緒に上京する人にぜひ利用してほしい

ペット共生シェアハウスは、都会でなかなかペットと一緒に住む家を見つけることができないという人だけでなく、地方からペットと一緒に上京する人にもぜひ利用してほしいと田中さんは言います。一人暮らし用のペット可物件ではなかなか見られない、ペットが駆け回れるスペースも(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

一人暮らし用のペット可物件ではなかなか見られない、ペットが駆け回れるスペースも(画像提供/HOUSE-ZOO株式会社)

「シェアハウスなら家具も家電もそろっていますし、居心地がいいと言ってくれる人もたくさんいます。もちろん、いろんな入居者がいるのですぐに打ち解けるのは難しいかもしれませんが、ペットを飼っているという共通点があると仲良くなりやすいんです」

ペット共生シェアハウスは、ペットを飼う入居者同士が交流するだけでなく、入居者みんなでみんなのペットを育てていくという新しい住まいのかたち。ペットと一緒に暮らしたいと考えている人にとっては、新しい選択肢のひとつになるのではないでしょうか。●取材協力

HOUSE-ZOO株式会社
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