コンビニから学べ! 仕事に効く「動」と「静」の革命とは?ーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第19回目です。
『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
【本日の一言】
「企業が起こす革命には二つの種類がある。それは動と静だ」
(『インベスターZ』第3巻credit.21より)
大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。
コンビニは「さまざまな工夫であふれている」
ある日、財前が学校の帰りにコンビニに立ち寄ると、ばったり投資部の先輩・安ケ平(やすがひら)に出会います。安ケ平は財前に、「コンビニで行われているさまざまな工夫は、見るといろいろ勉強になる」のだと言います。
「例えば、おにぎりの海苔がパリパリしている包装を開発したのもコンビニだし、“挽きたて100円コーヒー”は、コーヒーショップに通う層とは別の需要を呼び起こし、コンビニの成功事例として有名。現在のコンビニは銀行業にも参入していて、セブン銀行を始めとして、24時間365日、現金の引き出しを可能にした役割は大きい」と説明します。
安ケ平は、「こうした変化は、新商品を発売する時のような派手さはない。けれど、深く静かに世の中を変えていく。世間をあっと言わせる画期的な商品を世に送り出すことを“動の革命”と言うのであれば、こうした静かな変化を“静の革命”と言う」のだと語るのでした。
コンビニの不断の努力は「顧客の来店理由を増やすため」
最近の、コンビニのちょっと変わった工夫で言うと、例えば「アイスが入ったショーケースの扉をなくした」ことが挙げられます。代わりに、エアーカーテンで冷気が逃げないようにしたワケですが、温度管理が大切なアイスのショーケースに、なぜわざわざ扉のないタイプを導入したのでしょうか?
事例として、ある人が本当は別の用事でコンビニに入ってきたのに、たまたま目に入ったアイスを見て、「食べたい」と思ったとしましょう。けれど購入するためには、「ショーケースの扉を開けて、アイスを取り出す」という動作を行わなければいけません。この小さな動作が障害となって、顧客は「やっぱりやめておこう」と思い直すことがあります。
「ついで買い」や「衝動買い」といった「プラス1品買い」を促すためには、極力、購入に至るまでのプロセスを妨げない導線を引くことが大切です。徹底して心理的・物理的な障壁を取り除き、最初の一歩を踏み出してもらうための静なる企業努力です。
一度、ご購入いただき、商品の良さをわかってもらえれば、それが再来店につながります。こうした努力の最終ゴールは、顧客に「お店にくる習慣を身につけてもらう」ことです。
「動の革命」は即効性が高いが、意外に商品寿命は短い
今回、取り上げた「動と静の革命」についてですが、コンビニは「静の革命」を実践している代表的存在だと言えます。それに対して、「動の革命」を行っているのは、主にメーカーが多いでしょう。
一般に、動の革命のほうが、静の革命に比べてユーザーの注目度は高くなります。新製品などを発売すれば、テレビや雑誌などで取り上げられたり、瞬く間に世間に広まったりと、話題性やニュース性には事欠きません。
ただし動の革命の場合は、マンガの中でも指摘されている通り、ヒットも桁違いである代わりに、技術が普及するのも早く、今は商品寿命がどんどん短くなっています。ですから、革新的な技術もあっという間に他社に追いつかれてしまい、激しい価格競争にさらされる可能性があります。
例えば2007年に発売されたアップル社のiPhoneは、スマートフォンの先駆けとして、携帯業界に革命をもたらしました。しかし現在のスマートフォン市場では、低価格帯モデルが台頭しており、2014年には、すでに世界シェアで低価格帯モデルの出荷台数が高価格帯モデルを上回る結果となっています(総務省、平成27年版情報通信白書より)。
派手さはなくても、小さな改善も会社には欠かせない
今回のお話を、私たち自身の仕事に取り入れるのであれば、「もっと“静の革命”にも目を向けよう」ということでしょう。人はともすると、「お金をかける提案」や「人目を引く派手な提案」、つまり動の革命にばかりに目を向けがちです。
実際、会社にとっては、例えば「商品の置き場所を変えてみる」とか「オペレーションを見直してみる」といったような、地味で小さな提案も非常に重要です。実のところ、経営者はこうした小さな改善ほど大事にするものです。また経営者ほど、こうした改善の積み重ねが結果として返ってくることを知る者はいません。
以後はぜひ、動の革命と静の革命の両方を考えるようにしてみてください。この2つが揃ってこそ、初めて会社に真の変革をもたらすことができるのです。
あなたの仕事において、静の革命とは何ですか?
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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