自分の「運命」を他者に委ねてしまった人の末路とは?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

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自分の「運命」を他者に委ねてしまった人の末路とは?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第18回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

【本日の一言】

「分散投資は無知に対するリスクヘッジだ」

(『インベスターZ』第3巻credit.20より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

バフェット氏が安易な分散投資を諌める理由

道塾学園の創設者・藤田金七(かねしち)の玄孫(やしゃご)・美雪は、9歳の時から投資を始め、「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏を崇拝しています。友達と3人で女子投資部を設立した美雪は、投資初心者の部員を前に、熱心にバフェット氏の話を語って聞かせました。

一般に、投資の世界では「分散投資が基本」だと言われています。「万一、失敗した際に、資金を一挙に失うことのないように」というリスクヘッジの意味からです。

ところが、バフェット氏にしてみれば、多くの人が行っている分散投資とは、「きちんと投資先を選ばない、安易な逃避手段にすぎない」のだと言います。自分の選択に自信があれば、わざわざ分散する必要などない、というのです。

美雪は、氏のこの言葉を引用した後、部員に「投資をする際には、自分の判断に確固たる自信を持てるようになるまで、徹底的に企業をリサーチすることが大切」だと力説するのでした。

「自分の運命を他人に委ねてはいけない」

「リスクとは自分が何をやっているのかわからない時に起きる」というのが、バフェット氏の格言です。最近になって、氏はアップルやIBMの株を買っていますが、ITバブル真っ盛りの1990年代には、全くといっていいほどIT企業の株には手を出さず、そんな氏のことを「すでに過去の人だ」と言う者まで現れる始末でした。しかしその後、ITバブルが弾けて、氏の正しさが証明されたことは、ご存じの通りです。

実は、かつてはバフェット氏も、普通の人と同じように、「あの人が良いと言ったから投資する」、といった行動をとっていたことがあります。それはまだ、氏が大学生だったころのことです。

ある時、氏はある会社の株を買い、そこの株主総会に出席します。その時に、たまたま知り合った投資家から「どうしてこの会社の株を買ったのですか?」と聞かれたため、「私が“投資の師”と仰ぐ人が買っていたからです」と答えると、相手から一言、「ワンストライク」という返事が返ってきました。この一言で、バフェット氏は、自分でよく考えもせずに、他人の判断を当てにして投資をすることの愚を悟った、と言います。

現在、氏は「投資をしようとしている企業について、論文を1本書けないようでは、その企業の株を買うべきではない」と話しています。つまり投資をしたければ、「それくらい企業に惚れ込むべきだ」ということです。

多くの人が勘違いしている「分散投資」

実のところ、バフェット氏も分散投資は行っています。けれど氏が行っている分散投資とは、上記で氏が戒めている「きちんと投資先を選ばずに行う、安易なリスク分散のための分散投資」とは意味合いが異なります。

もともと、バフェット氏の資産は数兆円に及ぶため、投資先を分散しないことには、投資先の資本比率のバランスを崩すことになってしまいます。氏の場合は、最初から分散投資を意図したものではなく、あくまでも「ここ」と決めた集中投資が複数箇所に及んでいる、と考えるべきでしょう。

それに対して、多くの投資家が行っている分散投資は、本当の“リスク分散”になっているとは言えません。例えばお菓子会社に投資をしようと思った際に、「リスクを分散するために、資金をそれぞれA社、B社、C社に分けて投資しよう」というのでは意味がありません。同じ業界の会社の株は、たいてい似たような動きをすることが多いからです。

いずれにせよ「リスクヘッジは必要」

私が現在、運営しているマネースクールでも、分散投資をオススメしています。

ただし、私たちが分散をすべきだとお伝えしているのは、(1)通貨の分散、(2)置き場所の分散、(3)時期の分散、(4)リスク度の分散の4つの要素についてです。これらは投資先そのもののリスクというよりは、環境や状況の変化などによって引き起こされるリスクを極力、避けるために行います。

今回の「本日の一言」とは、あくまでも「自分の頭で判断できない投資先にいたずらに分散させても安全性が上がるというわけではない」という戒めです。よって、バフェット氏もけっしてリスクを分散すること自体を否定しているワケではありませんので、その点にはご注意をいただければと思います。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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