環境は改善されないが新しい才能は増え続ける? アニメーター本音座談会
『ネット絵学2018』より
「アニメ産業」の市場規模は2兆円を超えるとも言われるビッグビジネスに成長した(一般社団法人 日本動画協会「アニメ産業レポート2017」より)。
しかし一方では、現場スタッフにかかるストレスは大きく、長時間労働や低賃金といった過酷な労働環境がたびたび指摘されている。
ここでは、アニメの制作現場から気鋭の若手クリエイター3名をゲストに、アニメーターとして食べていく方法やオンデマンド配信による現場への影響、海外への外注事情など、現在の環境を巡る状況と未来について赤裸々な話を聞いた。
※本稿は『ネット絵学2018』掲載の座談会の再編集版となる
取材・文章:虎硬 扉絵:so品 Web版の編集:新見直
アニメーター座談会の参加者
小嶋慶祐
原画、作画監督、絵コンテ、演出
1991年生まれ。新潟出身。18歳で上京し、GAINAX勤務を経て、現在は2016年設立のスタジオ・REVOROOT(レヴォルト)所属。高校生の時にニコニコ動画に投稿した『エアーマンが倒せない』アニメでも有名。幅広い実務経験を持つ。
参加作品:『絶対可憐チルドレン』『ゆゆ式』『ワンパンマン』『ACCA13区監察課』など
Twitter:@kkeisuke220
荒井和人
原画、絵コンテ、演出
1991年生まれ。東京都出身。ハンドルネームは「バリキオス」。東京工業大学卒。TRIGGER勤務を経て、フリーランスのアニメーター、演出家として活動中。
参加作品:『戦姫絶唱シンフォギアGX』『モブサイコ100』『Re:CREATORS』『フリクリ-プログレ-』など
Twitter:@Barikios
中園真登
演出
1988年生まれ。東京都出身。東京造形大学卒。貞本義行のアシスタントを経て、中途でMADHOUSEへ制作進行として入社。その後、演出へと転身し現在はフリーランスで活躍する。
参加作品:『ハナヤマタ』『リトルウィッチアカデミア』『ダーリン・イン・ザ・フランキス』など
Twitter:@zonozonu
そもそもアニメってどうやってできるの?
──皆さん今日(土曜日)も仕事なんですよね?
一同:はい。
小嶋 最近、睡眠が迷子になってます。まぁ大丈夫です。なんとかなります(笑)。
──修羅場が日常なのですね。皆さん仲よさそうですけど、3人で一緒に仕事をすることはありますか?
小嶋 そういえば、ないですね。
──イラスト界隈ではそうでもないんですが、アニメ業界って大体みんな仲良いというか繋がっているようなイメージがあって。
小嶋 狭いんですよね業界全体が。専門学校ないしは大学からそれぞれの会社に行ったら同期が誰かしらいる。あと、Twitterなどでの繋がりも最近は多いですね。
──アニメ業界は、イラスト業界と近そうでかなり遠いと思ってます。技術やワークフローも全く異なる印象です。そもそも皆さんはアニメの「演出」という仕事をしてますが、具体的にどういうことをやっているのですか?
中園 大きく分けて2つあります。脚本からコンテを描くコンテマンと、絵と尺の整合性を合わせる処理演(「処理演出」のこと)。どちらも大切な仕事です。バリキオスさんは両方やられてますが、最近はそれぞれ別の担当者が行うケースが多いです。
荒井 口パクが音に合っているか、ポーズがちゃんと前のカットを引き継いでいるか、レイヤー構造は正しいか……アニメは大人数で制作するのでどうしてもそういった矛盾が起きがちで、処理演はその辺の調整役ですね。
中園 大まかな映像の流れやキャラクターの動きなどはコンテで決めますが、処理演では絵コンテの内容がちゃんとカットに反映されているかを確認します。
処理演はコンテを元に監督から「このシーンはこう見せたい」などのオーダーを受けます。これを演出打ち合わせ「演打ち(えんうち)」と呼びます。演打ちのあとにはアニメーターさんにレイアウトを描いてもらうため、アニメーターさんと作画打ち合わせ「作打ち(さくうち)」を行います。
アニメーターで食べていく秘訣は“○○○”
──アニメーターは給料月数万円、基本的に食っていけないという話を世間でされていますが実情はどうでしょうか?
中園 それはその通りです。ただ、キャリアアップしていけば食べれるようにはなると思います。
荒井 小嶋さんは暮らしていけるだけのお金が稼げるなと思ったのってどれくらいのときですか?
小嶋 この世界に入って3年目くらいで、アニメ『織田信奈の野望』ではじめて作画監督を担当したのですが、その後に、(特定作品に)ローテーションで作画監督のお仕事をいただくことができて。
定期的な収入が発生し、そこでようやく生きていくためには十分な額になりましたね。
中園 僕は、今は独立してますが入社した時は実家でした。それにスタートが制作進行で月あたり固定の給料を支払われていて、お金的なハンデはあまり感じませんでした。
荒井 動画マン時代は月6万でしたが、僕も東京で実家暮らしなので生活できてました。
原画マンになると、基本出来高ではあるのですが、作品や会社によって拘束料というものが発生するんですね。「他の仕事はしないでこの作品を優先してください。その代わり毎月お金を払います」という契約です。
他の仕事は一切させない完全拘束なら月10〜30万円、他作品との掛け持ちをある程度許す半拘束なら5~15万円くらいでしょうか。
──原画って完全な出来高かと思ってました! たしかに固定給が出れば生活しやすくなりますよね。
荒井 アニメで安定して食べられるようになるには、拘束料をもらえるかどうかが重要です。原画になりたての頃に半拘束をもらえたおかげで、一気に安定しました。
──原画マンになれば必ず拘束料がいただけるものなんでしょうか?
荒井 いや、能力給なので、原画マンとしての力を認められなければなりませんね。使えないとなったら契約打ち切りです。
──拘束料というのはワンクールごとの契約?
小嶋 そうですね。例えばワンクール(12話を3ヶ月で放送)のアニメをつくるのに、制作は1年ほどかかるので、最初から関わっていくのであれば1年は毎月支払われます。
──拘束料というのは最近の慣習なんでしょうか?
小嶋 詳しくは分からないのですが昔からあるとは思います。僕が入った頃にはもう既に存在していました。
中園 半拘束に関しては増えているかもしれません。人材の取り合いが苛烈になってきてますからね。
荒井 半拘束が日常化したために複数の会社の半拘束をかけもちしている方もいますね。3社も4社もかけもちしてて「拘束という言葉の意味はいったい…?」なんてことがあったりします。
小嶋 半拘束に関しては僕はもらったことがないのですが少し懐疑的です。できれば完全拘束でフルコミットするほうがお互いに健全かなあと。まあ複数の案件をちゃんと回せるくらい優秀なら言うことはないのですが。
荒井 ただ、アニメーターにとって、単純に一番稼げる形態は半拘束プラス出来高報酬だと思います。完全拘束だと他の仕事をとれませんからね。
中園 会社によって出る拘束料も変わってくるので、やはり多く支払われるところに人材は集中します。
冷遇されがちな動画マンこそ給料をあげるべき
荒井 動画マンは拘束料をもらえないケースが多くて、一番収入が少ないはずなのに一番金額が保証されていないという現状があります。これは批判されて然るべきだと思いますね。
小嶋 「動画マンはバイト禁止」とか言われてるところがほとんどですから。
──バイト禁止!? 社員でもないのに?
荒井 1日の大半を数枚描くだけで終わってしまうので、実際バイトなんかしている暇がないですから。
小嶋 そもそも暮らしていけない給料しかもらえていないので、仕事として成立していません。その上で「バイト禁止」とか「仕事としての責任感を持て」というのは酷な話ではありますね。
荒井 それでいて動画マンの描く絵が最終的な画面に出るわけで……業界が「歪だ」と言われる所以はそこにありますね。
中園 むしろ一番お金をかけなければならないところは動画で、そこから次は原画というように改善されていかなければどんどん先細りになっていってしまうという危機感はあります。
小嶋 最近は動画マンに拘束料を払う会社も増えてきてて、高待遇なところもありますね。
アニメ業界、潤ってますか?
──NetflixやAmazon primeビデオなど、作品のオンデマンド配信が進んでます。外資が沢山お金を出していることもあり、アニメ業界は潤ってきているという話を聞きますが、現場はどうですか?
中園 結論からいうと、少なくとも現場のレベルでは飛躍的に収入が増えるということはないです。原画の単価は少し、10〜20%程度上がりますが。
──微妙! メディアがやたら煽ってるからてっきり10倍くらい増えるものだと思ってました。
中園 大元の予算が大きいと言っても、「浮いたお金をアニメーターに」ではなく、予算は編集や音響に回さなきゃいけない。海外出資のアニメの制作費において、かなりの割合を占めているのが編集や音響なので。
小嶋 オンデマンド配信の場合は吹き替えもあるので、むしろその分の編集や音響の費用はTVアニメよりも高くなります。
──編集というのはどの部分にあたるんでしょうか?
中園 編集は外部の会社に依頼する、仕上げの工程です。それぞれのカットを「撮影」して動画化、それをつなぎ合わせてテレビなら21分前後にまとめるのが編集の仕事です。
編集は決まった尺に気持ちよい映像の流れをつくる役割上、工程全体からみると重要度は上がります。
そのためか、編集は作業単価ではなくて時間でお金が発生します。つまり作業が長引くほど金額が膨大になります※。かつ、編集の会社は基本アニメ業界の外側なので、アニメ業界内の価格基準と比較すると金額の水準が高いです。
※近年では、編集も時間給ではなく固定で請け負う企業も増えている
中園 社内に編集室を持っている会社もありますが、少ないですよね。
荒井 編集作業は外注が基本なので、どうしてもコストのしわ寄せが制作現場にいってしまいます。
──アニメーター側から労働交渉や賃上げなどの声が上がらないというのはなぜでしょう?
荒井 みんなフリーなので働く場所も違い、団結しにくい。あとはめんどくさい労働改革だとか交渉だとかに興味がないのだと思います。そんな(改革や交渉に積極的な)人間はアニメーターなんかやらないです。
小嶋 とにかく忙しいのでみんな疲れてて、そこに体力を使ってられないというのもありますね。だから交渉せずに諦めて辞めていく人が多いと思いますよ。
若手は増え、技術的格差は広がりつつある
──皆さんはキャリア的に若手から中堅になりつつありますよね。最近の新人が辞めていくとかで危機感を覚えることはありますか?
荒井 むしろ逆で、新しい才能がどんどん来ていると思います。
──意外です。なぜそうなっているんでしょうか?
荒井 僕は『うごメモ』※の影響だと思っていますね。
※2008年に配信された、タッチペンで手がけメモが描ける任天堂開発のニンテンドーDSiウェア。パラパラ漫画やアニメを制作することも可能。後継として『うごくメモ帳 3D』がリリースされている
──うごメモですか?
小嶋 DSのうごメモのサンプルを描いている人が京都アニメーション出身の人でメチャメチャ上手いんですよ。
──知りませんでした。その影響で、若い人たちがアニメの現場に増えているかもしれないと。
荒井 デジタル機器が普及して制作のハードルが下がったのもあります。子供の頃からペンタブで絵を描いている方も増えているし、アニメに興味を持つ年齢層も段々と低くなってきている。
絵は描き始めが早いほど上手くなるので、最近の新人は本当に上手だと思いますよ。
小嶋 デジタル機器の恩恵は大きいと思う一方で、結局モチベーションが伴わないと技術は上がらないとは思います。
アニメの専門学校に行く機会があったのですが、みんなスマートフォンを持っていても、作画のときに使おうという人はほぼいませんでしたからね。
──スマホをどう使うのですか?
小嶋 写真をとってデッサンの参考にしたり、ムービーから動きを起こしたり。アプリケーションも色々と活用できると思います。
──今は映像編集もアプリからできますからね。
小嶋 ツールは増えているのにやらない人は全くやらないので、勉強する人との差はどんどん開いていると思います。それはアニメーションだけではなくてイラストや造形でもそうですね。昔もスマホはありませんでしたが、ガラケーの低解像度からでも絵を描いてましたね。
荒井 なるほど。ツールが進化しようが手に入りやすくなろうが、やる人はやるしやらない人はやらないってことですね。
小嶋 僕は会社でアニメーターの新人育成も担当しているのですが、あらためて思うことは「興味がある人じゃないとこの業界は無理!」ってことですね。
事務処理は教えればできると思いますが、作画などの技能系は研修のみでフォローしきることは厳しいです。モチベーションを上げられるような努力はしてますが、悩ましいですね。
「早くて安い」海外アニメーターを重宝する理由
──アニメのスタッフロールを見ると韓国や中国の方の名前が沢山あります。海外への発注は増えているんですか?
荒井 昔はわかりませんが、今の動画に関してはほとんど海外ですね。国内アニメに関しては動画の9割は海外の方が描いていると聞きました。
──9割もですか。
小嶋 向こう(海外のスタジオ)って、必ず時間内にあがってくるんですよ。どういう仕組みで動いているのかは僕もよく分かってません。
中園 中国の場合は、分業化を徹底して回しているようですね。日本みたいに動画→原画→作画監督のようなキャリアをつくっているのではなく、その職種に特化してプロフェッショナルを育てて担当者ごとに専門領域を決めているとか。日本でも似たようなことはやってますが、もっと細分化されてそうです。
小嶋 スケジュールにもよりますが、社内に動画マンがいるのに早く上がるから海外に発注しているせいで、日本の動画マンの仕事がなくなるケースもあります。
どのアニメにどれくらい関わる? アニメーターのキャリアアップ
──テレビCMや動画広告、ミュージックビデオなどTVアニメ以外のアニメも増えてきましたよね。尺が短いので仕事としては魅力的じゃないですか?
中園 確かに単価はデカいですね。業務の内容が軽いということもあって、稼ぐためにはそっちに行くという人も増えています。
──TVアニメを特にやりたいみたいなこだわりは、皆さんはありますか?
小嶋 僕はないですね。その作品で何ができるかという部分が僕のモチベーションなので、配信場所が変わるからと言って、あまり意識はしていないですね。
荒井 TVアニメだと確かに放映されますし、注目もされますからテンションは上がりますね。逆に金額が大きい仕事を提案されても名前が表に出ないなら断るようにしています。
小嶋 僕はメインスタッフとしてしか作品に参加したくないです。たまーにOPだけ手伝うとかはあるかもですけど。作品の根幹のスタッフとの直接的なやりとりが一番刺激的ですし、熱量や一体感があります。
単発でTVアニメの原画のお仕事をしても良くも悪くも労働力の一部というか、学べることが少ないです。
荒井 僕はこの仕事をはじめて、アニメーターって思っていたよりもメディアへの露出って少ないんだなと思いましたね。
小嶋 業界内での認知度を上げるなら一本の作品に集中してコミットするよりも、複数の作品を並列でこなした方が沢山クレジットされるし、関係値も増やせますが、(特定作品で)ローテーションでの作画監督や演出になってくると人との縁は強くなりますからチャンスも増えます。
自分担当の話数をつくれると、会社やメインスタッフ側から宣伝してもらえたり、そういう積み重ねで知名度が伸びてくる感じですね。
アニメは修羅の世界?
荒井 TVアニメってスケジュール感覚がおかしいんですよ。絵を描いたら2週間後くらいに放映されるので。悪い面も多いと思うんですけど、自分の絵がすぐにフィードバックされるので描き手としては楽しいですよね。
あとは現場が滅茶苦茶になってることが多いので、普段やらないことを実験的にやってしまおうというのもありますね。そういった遊ぶ余裕が逆にあるかな。
小嶋 僕それできないんだよな〜(笑)。
中園 僕もできない(笑)。
──友人がアニメ背景のコンセプトアート※を担当しているのですが、オンエアの数日前に「数時間で描いて」みたいな発注が来たと。そのコンセプトアートをもとに背景マンが描いて、撮影、編集……時間単位というか分刻みのスケジュールですよね。
友人がその時間つかまらなかったらどうするのかと(笑)。これは極端な例ですか? 業界あるあるですか?
※アニメーションなどで使用するデザイン・アイデア・雰囲気などを最終製品として仕上げる前に視覚化して伝えることを主目的としたイラストレーションの形態
荒井 あるあるですね。
小嶋 ある。
中園 よくないところですよ。
──アニメって1年くらい時間をかけてつくるわけじゃないですか、その準備を1ヶ月早めるだけで解決する問題ではないんですか?
小嶋 結果から「あの時ああすれば」とかは言えると思うのですが、いかんせん人数が多いので予定通りに進むことはほぼありません。
中園 制作期間を増やしたとして、前準備の段階で時間を喰ってしまうというパターンもある。
例えば脚本家の方って仕事をかけもちしている場合が多いんですね。しっかりと(早めに脚本を)あげてくれる人ならいいんですが、遅れているから打ち合わせに入れずにズレることもあります。
──無間地獄。
小嶋 アニメ業界ってシステムが出来上がってしまっているので、悪しき風習も淘汰されずに残ってしまっているんですよね。
中園 「なんとかなるでしょ」みたいなのはありますね。オンデマンド配信だったり外資が絡んだりしても、業界のシステムが刷新されない限りは同じことになると思いますね。
荒井 アナログのセル画時代はその「なんとかなる」ラインが明らかで、諦めるところはスッパリと落とせました。しかしデジタル化のおかげで余裕がでてきたというか、悪い意味で無理が利く時代になっているのですよね。
小嶋 デジタル化とネットが普及して、昔では考えられないくらいのタイトなスケジュールを強行できるようになったので、逆に現場は逼迫しているかもしれません。
逆にセル画時代は「こんなアニメ誰も見ないだろう」という案件も発生していたと思います。ビデオなどの映像メディアも普及していない時代だったので、テレビで1回放映したら終わりですからね。まさか当時の人もデジタルリマスター版で復刻されるとは思っていなかったと思いますよ(笑)。
──デジタルリマスター版をつくる場合、アニメーターに新しく仕事が発生することが多いのでしょうか?
中園 ケースバイケースですね。新規カットや描き直しが入ってくるとなるとアニメーターの仕事になりますが、アップコンバートするというだけになったらキングレコードやアニプレックスなどの出資会社が手配してやるということが多いみたいですね。
アニメの未来の希望と絶望
小嶋 新しい試みという意味では、Netflixで『DEVILMAN crybaby』を制作した湯浅政明監督のサイエンスSARUなんかは、普通のアニメ業界とはシステムが違っているので興味がありますね。
中園 サイエンスSARUは動画をFLASHでやるという取り組みをしていて、人件費と時間を割かずトゥイーン※で補完することで動画マンの工程をスキップして、作業を内製しているということで注目されていますね。
※between(中間)に由来する言葉で、2つのイラストが変化しながら繋がるアニメーションのこと
小嶋 FLASH会社に外注をしていることもあるんですが、旧体制の日本のシステムになるべく頼らないようにしているように感じますね。
荒井 SARUは毎年、高い頻度でハイクオリティな作品をつくってます。アニメ業界の未来に希望を感じさせる存在ですね。
荒井 アニメをつくるには、膨大なコストがかかるわけですよ。だから、1つの会社で制作を完結させることはどうしてもできません。
いくら新しい会社が新しい体制で進めようとしても、旧体制の会社と連携をした瞬間にその体制に取り込まれてしまうという沼があるんですね。
小嶋 あと、3Dアニメをやっているところは、全部新システムでかつ社内で回せるのでなんとかなっているようには思います。
中園 昔からある会社で有名なところだと、京都アニメーションは全員社員で構成されてますね。音響以外はすべて内製。
動画にしても日本国内の動画マンの人数では足りないはずなんですが、提携している大阪の会社と韓国の会社で完結できているので外注していたとしても実質自社みたいなものなのですよね。
なので突発的に外注するということもありませんし、つくり方もローテーションが決まっていて、この演出さんとこのコンテさんならこのチームという風に組まれているので安定したクオリティを発揮できるのだそうです。
小嶋 チーム、いいですね。僕の現場もチーム感が欲しいです。
──アニメ制作におけるチームのメリットというのはなんでしょう?
小嶋 コミュニケーションのとりやすさです。勤務地も稼働時間もバラバラで、会ったこともない方と仕事することもある現状でそれを叶えることはかなり困難です。
演出や作画監督の意図って絵や簡単な指示だけでは伝わらないんですよね。顔を合わせたり、お互いが欲しいものを理解しあったり、そういった息の合うチームをつくることが作品においては一番重要なんです。
中園 お互いが欲しいものを理解できればリテイクも減るし効率も上がりますね。
──ゆるくて自由な勤務形態を求めてアニメ業界に来る方も多そうですが、ちゃんと組織化した方が幸福度が上がるというのも皮肉な話かもしれません。
荒井 そういった現状なので、名を挙げた監督たちが自分の身内で囲って会社を立ち上げようとするんですよね。
小嶋 実際、僕の会社(REVOROOT※)はそうですね。
※REVOROOT(レヴォルト)は、フジテレビで深夜アニメ枠「ノイタミナ」を手がけた山本幸治氏が独立し、2014年に設立した株式会社ツインエンジンのグループ会社として立ち上がったアニメスタジオ
実は4月からレヴォルト⁽https://t.co/1aaGD3eM99)という新しい会社に所属させてもらってます。新しい会社という利点が生かせられるよう頑張りたいと思っております。 pic.twitter.com/n0Sbca7uIP— 小嶋慶祐 (@kkeisuke220) 2017年4月9日
荒井 そうやって小さい会社が乱立すると、業界全体で見るとバラけてしまうんですよね。もはや大改革を起こして、業界みんながひとつの会社になってアニメのジャンルで部署ごとに分けてしまえばいいとまで思えますね(笑)。
──株式会社 亜弐目、ファンタジー部、日常系部、BL部……みたいな(笑)。
荒井 そうそう(笑)。
なお、本座談会の全文が掲載されている『ネット絵学2018』は、8月12日(日)の「コミックマーケット94」れ37aブース、8月19日(日)の「コミティア125」こ16bブースでも頒布される。
本文中のイメージ画像はすべてフリー写真素材サイト「ぱくたそ」より
引用元
環境は改善されないが新しい才能は増え続ける? アニメーター本音座談会
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