医院のサイト、医療広告ガイドラインに抵触していませんか?((続)とある最底辺歯科医の戯れ言集)
今回はspeeさんのブログ『(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集』からご寄稿いただきました。
医院のサイト、医療広告ガイドラインに抵触していませんか?((続)とある最底辺歯科医の戯れ言集)
医療広告ガイドラインができた
医療界においてもネット上の過度な術前術後の比較や他院との差別化、ステルスマーケティング等が蔓延している。
そこで厚労省は医療法における病院等の広告規制に本腰をいれることになり、今年(2018)の5/8に医療広告ガイドラインを発表した。
医療法における病院等の広告規制について |厚生労働省*1
*1:「医療法における病院等の広告規制について」 『厚生労働省』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
この中の以下のリンクがガイドライン本体である。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf
詳細はもう全部読んで貰うしかないが、一応概略だけ解説していく。
ちなみにうちのサイトもガイドライン引っかかっていたので修正中。
広告の定義
(1)と(2)両方を満たす場合広告に該当する
(1)患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
(2)医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
この誘因性や特定性を避けるような表現を用いている場合でも
ア 「これは広告ではありません。」、「これは、取材に基づく記事であり、患者を誘引するものではありません。」との記述があるが、病院名等が記載されている
イ 「医療法の広告規制のため、具体的な病院名は記載できません。」といった表示をしているが、住所、電話番号及びウェブサイトのアドレス等から病院等が特定可能である
ウ 治療法等を紹介する書籍、冊子及びウェブサイトの形態をとっているが、特定(複数の場合も含む。)の病院等の名称が記載されていたり、電話番号やウェブサイトのアドレスが記載されていることで、一般人が容易に当該病院等を特定できる
といった場合で誘因性が認められる場合は広告と見なされる。
暗示的または間接的な表現の取り扱い
ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
具体例
(1)アンチエイジングクリニック又は(単に)アンチエイジング
アンチエイジングは診療科名として認められておらず、また、公的医療保険の対象や医薬品医療機器等法上の承認を得た医薬品等による診療の内容ではなく、広告としては認められない。
(2)最高の医療の提供を約束!
「最高」は最上級の比較表現であり、認められない。
イ 写真、イラスト、絵文字によるもの
これやったら効果てきめん!!みたいなのはイラストなんかでも駄目。
ウ 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、体験談などを引用又は掲載することによるもの
具体例
(1)新聞が特集した治療法の記事を引用するもの
(2)雑誌や新聞で紹介された旨の記載
(3)専門家の談話を引用するもの
専門家の談話は、その内容が保障されたものと著しい誤認を患者等に与えるおそれがあるものであり、広告可能な事項ではない。また、医薬品医療機器等法上の未承認医薬品を使用した治療の内容も、広告可能な事項ではなく、広告は認められない。
エ 病院等のウェブサイトのURLやEメールアドレス等によるもの
URLをgankieruとかそういう連想できるものにしちゃだめですよー、というやつ。
広告禁止項目
(1) 広告が可能とされていない事項の広告
(2) 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
絶対安全!とかは当然駄目
1日ですべての治療が終了(実際は違う)とかも駄目
(3)他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
(4)誇大広告
活動実態のない学会や団体の認定医、認定施設も含まれる
インプラントセンターなどのセンター表記も誇大広告に抵触する可能性がある
(5)患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
患者個人が発信する場合はいいが、医院のサイトに載せたらアウト。
(6)治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
写真やイラストのみで説明が不十分だとアウト
(7)公序良俗に反する内容の広告
(8)その他
ア 費用を強調した広告
期間限定で〇〇%オフ! キャンペーン実施中!などはアウト!
物品贈呈を強調したりするのもアウト
イ 他法令又は他法令に関する広告ガイドラインで禁止される内容の広告
ここに医薬品医療機器等法がはいる
薬事未承認を処方、使用していることをサイトに書いたらアウト
他に健康増進法や景表法、不正競争防止法がはいる
制限付き広告可能事項
一杯あるんだが、これについて読んでいて気になった所をピックアップ
当該病院又は診療所において診療に従事する医療従事者の略歴
医師又は歯科医師等の医療従事者としての経歴を簡略に示すものとして、生年月日、出身校、学位、免許取得日、勤務した医療機関(診療科(広告が可能な診療科名に限る。)、期間を含む)等について、一連の履歴を総合的に記載したものを想定したものであること。
なお、研修については、研修の実施主体やその内容が様々であり、医療に関する適切な選択に資するものとそうではないものの線引きが困難であることから、広告可能な事項とはされておらず、広告が認められていない事項であることに留意すること。
受講した研修一杯勲章のように書いてる医院あるけどガイドライン抵触みたい。
医療従事者の専門性に関する認定を受けた旨
次に掲げる研修体制、試験制度その他の事項に関する基準に適合するものとして厚生労働大臣に届け出た団体が行う医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の専門性に関する認定を受けた旨を広告できるものであること。
専門性の資格は、各関係学術団体が認定するものであるので、例えば、「厚生労働省認定○○専門医」等は虚偽広告として扱い、単に「○○専門医」との標記も誤解を与えるものとして、誇大広告に該当するものとして指導等を行うこと。
これに関しては調べてみた
医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について|厚生労働省
医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等についてについて紹介しています。*2
*2:「医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について」2011年8月23日 『厚生労働省』
https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0627-1.html
これからすると歯科は
【歯科医師の専門性資格】
(団体名) (資格名)
○(社) 日本口腔外科学会 口腔外科専門医
○特定非営利活動法人 日本歯周病学会 歯周病専門医
○一般社団法人 日本歯科麻酔学会 歯科麻酔専門医
○一般社団法人 日本小児歯科学会 小児歯科専門医
○特定非営利活動法人 日本歯科放射線学会 歯科放射線専門医
この5つの専門医以外をサイトに表記することはガイドラインに抵触する可能性があると思われる。
また表記する際もガイドラインに忠実に従う必要がある。
広告違反の指導および措置(追記)
コメント欄に違反したら罰則的なものがあるのか、ないのか、という指摘があったので追記する事とした。
ガイドライン33ページからに記載されているものを要約すると・・・・
指導は都道府県が行うようだ。
告発や行政処分までいくとかなり重い。
まあ行政指導に行くだけでも結構面倒そうだけど・・・
指導および措置の段階
ア 行政指導
まずは違反しているのを見つけたら医院に説明を求める等の調査が行われる。
この段階で明らかに違反した広告の場合中止命令等が出される。
また、この広告を製作した医師以外の業種にも調査や指導が行われる。
任意の調査に応じない場合はイに進む。
イ 報告命令または立ち入り検査
ウ 中止命令または是正命令
行政指導に従わない、違反を繰り返す悪質な場合は期間を定めて広告を中止し、その内容を是正するように命じる。
エ 告発
(1)直接罰の適用される虚偽広告(法第6条の5第1項違反)を行った者が中止若しくは内容の是正の行政指導に応じない場合
(2)法第6条の8第1項による報告命令に対して、報告を怠り、若しくは虚偽の報告をした場合
(3) 同項による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
(4)同条第2項による中止命令若しくは是正命令に従わず、違反広告が是正されない場合には、刑事訴訟法(昭和23 年法律第131 号)第239 条第2項の規定により、司法警察員に対
して書面により告発を行うことを考慮すべきである。
なお、罰則については、(1)の虚偽広告、法第6条の6第4項に違反する場合(麻酔科の診療科名を広告する際に、併せて許可を受けた医師の氏名を併せて広告しなかった場合)又は(4)の中止命令若しくは是正命令に従わなかった場合には、6月以下の懲役又は30 万円以下の罰金(法第87 条第1号)、(2)の報告命令又は(3)の立入検査に対する違反の場合には、20 万円以下の罰金(法第89 条第2号)が適用される。
オ 行政処分
病院又は診療所が悪質な違反広告を行った場合には、エに示した告発のほか、行政処分として、必要に応じ法第28 条の規定に基づく管理者変更命令又は法第29 条第1項第4号に該当するとして、同項の規定による病院又は診療所の開設の許可の取り消し、又は開設者に対し、期間を定めて、その閉鎖を命ずることが可能である
現状調査してみた!
最高とか使っている歯科医院はあるのか?ないのか?
最高 歯科治療で検索してみると
451万件もヒットするんだよね。
相当なビッグキーワードだよ。
1位のサイトをみてみたら患者の体験記を医院のサイトに載せてるわけで早速ガイドライン抵触
最適 歯科 で検索すると
1390万件!!
まあこの内容が完全に抵触しているかは難しい所だが、最適、と言う言葉を使うこと自体がおそらくガイドライン抵触だろう。
以上からしてガイドラインにおそらく抵触する用語を用いた歯科医院のサイトはまだ腐るほどある。
雑誌に紹介されたとか書いちゃってる
まあちょっと調べたらわんさか出てくる・・・・
歯科医院がお金を払って掲載してもらう歯科医院の紹介本について自分の医院サイトで掲載された!と書いている所が結構ある。まさに自作自演。
お金を払って掲載してもらっている紹介本は広告扱いなはずなのでそれを自分の医院のサイトで紹介するのは抵触に当たるのではないだろうか。
経歴の記載
適当に検索して頂いてきました。
殆どがガイドラインに抵触する可能性がある内容。
1日講習会出てもらったサーティフィケートを認定医と書いてあるとすると誇大広告扱いになりそうだ。それなら私でも5個以上もってる。
2010年の厚生労働省認定指導医っていうのは何でしょうか?これは上に書いてますが虚偽広告に該当します。
自費のダンピング
歯科医院のブログにこういうの書いちゃうと今後はあきまへんで・・・。
↓検索したらすぐに引っかかってきたブログのスクショ。
未承認医薬品
未承認医薬品使ってるよーとサイトに載せることはガイドラインに抵触するようだ。
あれ?ドックベスト??薬事通りましたかね?
検索すると142000件ヒット。
2,3位ぐらいに否定的な事を書いているのがあるが後は使ってるでええええという歯科医院ばかり。
はーいアウト~
同じ理由で3Mixもアウトだろう。
ちなみにこの1位にランキングされているサイトのURLに注目
haisya-yoyaku.jp
そう、EPARK歯科だよ!
虫歯治療もどんどん進化!アメリカで開発されたドックスベストセメントとは | 歯のアンテナ*3
*3:「虫歯治療もどんどん進化!アメリカで開発されたドックスベストセメントとは」2016年12月20日 『歯のアンテナ』
http://haisha-yoyaku.jp/antenna/docs-best-cement
この記事に関しては特定の歯科医院への誘因性がないので一応抵触はしていない、という解釈でいいんだろうか。
EPARKといえば
景表法の所を読んでいて思った。
例えば、景表法第5条の規定により、商品又は役務の品質等について、一般消費者に対し、実際のもの又は事実に相違して競争事業者のものよりも著しく優良であると示す表示又は取引条件について実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示等(以下「不当表示」という。)が禁止されており、例えば、不当表示に当たるものをウェブサイトに掲載した場合には、当該規定等により規制され得ること。
EPARK歯科の口コミや採点はステマだらけで明らかに一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害していませんかね?
ネット上の口コミに関するエントリーはこちらを参照 *4
*4:「東洋経済に歯科のネット口コミに関する記事がでた」2018年07月06日 『(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集』
https://spee.hatenablog.com/entry/shikakuchikomi1807
相談窓口
色々なガイドライン抵触を見つけたりしたら以下の場所にご一報を。
医療機関ネットパトロール↓*5
*5:「医療機関のウェブサイトにうそや大げさな表示があったら、情報をお寄せください」 『医療機関ネットパトロール』
http://iryoukoukoku-patroll.com/
終わりに
自分の歯科医院のサイトもガイドラインに少し引っかかっていた。
厚生労働大臣届出のない学会の認定医、専門医は削除した。
表現がちょっと引っかかりそうな所があってそこを修正。
みなさんの歯科医院のサイトはどうだろうか?
え?業者任せ?
え?もう何年も放置?
業者はプランに合わせたことしかしてくれないし、この際一度内容をしっかり見直してガイドラインに抵触していないか確認したほうがよいだろう。
私も専門では無いのでよくわかっていないところがある。
今回書いたところで専門の方がみておかしい、と思う所があったら指摘をお願いしたい。
執筆: この記事はspeeさんのブログ『(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年8月6日時点のものです。
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