ハリウッドで活躍する特殊メイクアーティスト・片桐裕司初監督作品! 『ゲヘナ〜死の生ける場所〜』インタビュー[ホラー通信]

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第90回アカデミー賞で4冠に輝いた『シェイプ・オブ・ウォーター』で半魚人を演じたダグ・ジョーンズ氏が出演、『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』など数々の作品で特殊造形を務めた片桐裕司氏が初監督を務めた映画『ゲヘナ〜死の生ける場所〜』が現在公開中です。

本作は、サイパン島を舞台に、太古から続く”死よりも恐ろしい「生」の呪い”に翻弄される5人の男女を描いたホラー。特殊造形を専門とする片桐監督らしい、不気味で恐ろしい”老人”は予告編公開時から大きな話題を読んでいます。クラウドファンディングで資金調達し、念願であった長編映画を作り上げた片桐監督。苦労した点など制作秘話をお伺いします。

――本作大変楽しく拝見しました! 片桐さんはたくさんの映画の特殊造形に関わっていらっしゃるわけですが、「映画を撮りたい」という想いは昔からあったのでしょうか?

片桐:小さな頃から映画が大好きで、特殊メイクの仕事も映画に携わりたいと思って選びました。「映画を作りたい」と思った一つのきっかけは、アメリカで永住権が取れることになって、大使館での面接のため日本に一時帰国している時にばったり会った中学時代の友人が大学の映画サークルで映画を作っていて。「しまった!自分は特殊メイクよりも映画を作りたかったんだ!」と思いました(笑)。その後、 仕事をしながら映画のアイデアをメモしたりしている中で、ラップトップ一台で映像を編集している人を見た時に「今はコンピューターでこんなことができるんだ!」とテクノロジーに衝撃を受け、具体的な映画作りの可能性を考え始めました。 『ゲヘナ』もいつか映画にしたいなと思っていたアイデアのうちの一つです。

――監督のもとで特殊造形を作ってきたこれまでの映画と、自分自身が映画を作る本作。やはり勝手は全然違いましたか?

片桐:全然違いましたね。自分が監督するので「ここは映らない」とか全部分かるので造形の部分だけは楽になるんです。(笑) 仕事で造形をお願いされる場合は実際に使わない部分、見えない部分までも全て作らないといけません。監督業はやることはたくさんあって大変でしたが、造形に限った部分ではちょっと手を抜けると発見でしたね。
でももちろん監督しながらなので、めちゃくちゃキツかったですが。

――初監督作品にホラーを選んだのは、片桐さんがホラーがお好きだからですか?

片桐:ホラーはもちろん好きなのですが、”ホラー命”というわけではありません。映画が好きで、映画を作りたいという想いで動いているので、特定のジャンルだけが好きというわけではなくて。本作がホラーなのは、戦略的な部分が大きいです。クラウドファンディングで資金集めをするので、僕のこれまでの経歴を見て「ロマンティックコメディを作りたいです!」と言っても1ドルも集まらないと思いますし(笑)。

▲生で見ると迫力がすごいんです。が、映画だとさらに怖いです……!

――なるほど、『X-ファイル』や『パシフィック・リム』や、片桐さんのこれまでのお仕事を拝見すると、やはりホラー系、サスペンス系を期待される方が多いと。クラウドファンディングに挑戦するにあたって、不安などはありましたか?

片桐:やるからには、もちろん自信があって挑戦しているのですが、一度失敗しているんです。クラウドファンディング用に自分でプレゼン映像を作って、まとめて、ページに説明文を書いて、と全部自分でやっていて。これはやってみて分かったのですが、それ以外にも細かくやることがいっぱいあるんですよね。例えば、支援に興味がある方からの問い合わせとか。問い合わせをもらってやりとりしていくうちに、1万ドル(110万円)を出してくださった方もいらっしゃいましたし、このやりとりもものすごく大切なんですよね。これは2回目で分かったのですが。

――1度の失敗があって、2回目に活かすことが出来たと。

片桐:映画の内容に自信はありましたし、1回目の注目度は非常に高かったので、失敗してもめげませんでした。 2回目はクラウドファンディングに精通している方にサポートしていただいて、さらに注目を集める手法や特典の設定、テキストの書き方なんかを教わって大変助かりました。

――ダグ・ジョーンズさんの出演も、クラウドファンディング開始時から決定していたのですか?

片桐:はい。彼とはもともと交流がありましたので、この企画を立ち上げる際に連絡をして。老人のメイクやパペットの制作風景などをクラウドファンディングのページに掲載して注目を集めました。老人役は本作において最も重要でしたから、ダグさんが演じてくださって作品に説得力が増して非常にありがたかったです。

――ダグさんの老人、素晴らしく怖くて最高でした……! 本作の制作時に、一番苦労した点は何ですか?

片桐:ロケーション探しですね。最初はロサンゼルスで全部撮ろうと思っていたんです。僕が住んでいる地元なので色々勝手も分かるから便利だろうと。そこで、海沿いのリゾートホテルを借りようと思っていたのですが、ロケーション代が1日2万ドル(220万円)と言われ、かなりの高額で困ってしまって。他にもロサンゼルスのダウンタウンにはホラーなシチュエーションにぴったりなセットがあるスタジオもあるのですが、1日6,000ドル(66万円)かかったり、結局予算の大きなハリウッド映画しか借りられない様な状況であったわけです。自分が実際に動いてみて、ロサンゼルスで映画が作られなくなっている理由がよく分かりました。

――それはそれは…高すぎますね。

片桐:それでサイパンにロケハンに行ってみたら、撮影にちょうど良い最高のリゾートホテルがあって、一部クルーを日本から呼ぶのに飛行機で4時間と近いし、ロケ地のホテルの撮影代も1日200ドル(22000円)と言われて。1日2万ドルから200ドルって、驚きました(笑)。

――洞窟もすごく雰囲気があって。人形や老人などホラーファンにとってたまらない要素がいくつか出てきますが、洞窟も最高でした! 片桐さんはセミナーなども積極的にやられていますが、日本でも特殊造形のレベルが上がっていってほしいという想いからなのでしょうか。

片桐:特殊造形というよりも、アーティスト全般ですね。2次元3次元にかかわらず、日本にも腕が良い人ってたくさんいるのですが、なぜか立場が低いんですよね。アメリカだとアーティストってすごく尊敬される仕事だし、いいアーティストは経済的にも恵まれている。日本でアーティスト達と話すと、なぜか「自分なんて」と卑屈になっている人が多いんですよね。自分はアメリカで仕事をしていますが、日本人の責任感の強さは特技の一つだと思うので、 海外に進出してもやっていける可能性は大きいかもしれませんね。

今、日本では若い人たちに堂々と「好きなことをやっていいんだよ」と言える大人が少ないと思います。そのために夢を諦めてしまう若い人たちが多いと感じていて、それはすごく不幸だと思うんですよね。好きな事をやりたいと思ったら、どう考え、どう動けばいいのか。そういった精神面を教えることが出来たらな、という気持ちでセミナーを行っています。

――『ゲヘナ〜死が生ける場所〜』を観て、こういう映画を作ってみたい!と思う若者も現れそうですしね。今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!

▲片桐監督制作のパペット。立っている人間の首が突然真後ろにズドンと落ちる様にヒモがついているのです!

『ゲヘナ〜死と生ける場所〜』ストーリー
運命は時に死よりも恐ろしい――――
リゾートホテル建設の為、サイパン島を訪れた土地開発会社の社員ポリーナとタイラー。現地のコーディネーターのアランとペペ、カメラマンのデイブと共に候補地であるジャングルに視察に入り、そこで謎の呪術師に守られた地下に続く階段を見つける。ポリーナたち一行が中に入ると、中で数体のミイラ化した死体があった。そこは米軍も把握していなかった旧日本軍の秘密基地だったのだ。
さらに奥へ進んでいくと突然ゾンビのような不気味な老人に襲いかかられ、驚いたアランは老人を突き飛ばして殺してしまう。その瞬間、謎の爆発が起こり一行は地面に叩きつけられて気絶する。目をさますと転がっていたミイラと不気味な老人はいなくなっており、入り口の扉もふさがってしまった。閉じ込められた5人は太古から続く呪いに翻弄され、誰も予想し得なかった恐ろしい結末に導かれていく。この場所に秘められた謎と不気味な老人の正体とは……。

【動画】『ゲヘナ~死の生ける場所~』日本版予告編
https://www.youtube.com/watch?v=zIEoudt0aI4 [リンク]

渋谷ユーロライブにて公開中!
監督:片桐裕司
キャスト:エバ・スワン、ジャスティン・ゴードン、サイモン・フィリプス、ショーン・スプロウリング、マシュー・エドワード・ヘグストロム、ダグ・ジョーンズ、ランス・ヘンリクセン
配給:ファイブツールデザイン
公式サイト:http://gehennafilm.jp/ [リンク]

(C)Hunter Killer Studio

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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