クラシックコンサート【BLUOOM LIVE at TOKYO FM HALL featuring 小林愛実、辻彩奈 】の挑戦(7/25 修正)
クラシック音楽の演奏会は堅苦しくて息苦しそう…。そんなイメージゆえに最初の一歩を踏み出せないでいる方も少なくないのではなかろうか。そんなためらいから及び腰になったまま、せっかくの興味も薄れて機会を逃してしまう「クラシックファン予備軍」の背中を押すキッカケを作るために、何が出来るのか。
TOKYO FMと日本有数のクラシック音楽事務所、KAJIMOTOが立ち上げた今回のコンサート【BLUOOM(ブリューム)】と名付けられた「ライブ」は、その一つの回答である。
まず面白いのは、プログラムが全くわからないことだ。クラシックに限らず、ポップスでもロックでもニューアルバム発売後のツアーならば、その構成曲目は、ニューアルバムからの楽曲をメインに、過去のヒットやスタンダードナンバーを織り交ぜて演奏されることが多い。ただクラシックの演奏会では、演奏予定曲目は、あらかじめチケット発売前に演奏順に全て告知されることが多い。それが、クラシックと他ジャンルとの違いだ。
クラシックでもプログラムは当日発表、というケースも稀にあるが、今回は、当日も演奏曲目プログラムもプログラムノートもない。なにが出て来るかは、本当にステージの上で演奏が始まってからしかわからない。
加えて、クラシックにしては珍しく、客席がステージをぐるりと取り囲む、いわゆるアリーナ型の配置となっている。全席自由なので、聴き手がそのどこに陣取るも自由、という次第で、全方位にフリースタイルなライブ、それがBLUOOMだ。
ステージには、「ブルー(Blue)」と「ブルーム(Bloom)」という2つの英単語を掛け合わせた、「いま萌え出でる若き才能」とでも訳すべき造語にちなみ、それぞれ青一色の衣装を身に纏ったヴァイオリンの辻彩奈、ピアノの小林愛実という2人の若手ホープが登場、ブルーのカクテル光線に包まれて演奏を披露した。
辻は、いきなりエルンストの難曲『魔王』の主題による大カプリースからはじめ、ビーバー『ロザリオのソナタ』のパッサカリアからバッハのシャコンヌで締めた。一方の小林は、ベートーヴェンの『月光』第1楽章、ショパンのノクターン第20番、英雄ポロネーズ、リストの『愛の夢』第3番と、泣く子も黙る名曲をズラリと並べた直球勝負。その後、2人のデュオによるサラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』と、アンコールとしてクライスラー『中国の太鼓』を聴けたのがいちばんの収獲だろう。
プログラム非開示は挑戦的な試みだし、奏者と聴衆との異次元の近さは、それだけで大きな武器になる。加えて若手アーティストを積極的に登場させるのだから、いわば登竜門として機能する可能性もある。今後、それら利点の使い方を更にアップデートし、機会の稀少性そのものを活かしきることができれば、【BLUOOM】は、未聞の才能を表舞台に引き上げる、一種の「聖地」になりうる可能性を秘めている、そう感じさせた一夜だった。
◎公演情報
【BLUOOM LIVE at TOKYO FM HALL featuring 小林愛実、辻彩奈】
2018年7月24日(火)
START19:00
TOKYO FM ホール
出演:小林愛実(ピアノ)、辻彩奈(ヴァイオリン)
※記事初出時に誤りがございました。訂正してお詫びいたします。
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