大きく飛躍するチャンスを「つかめる人」と「つかめない人」の違いとは?ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

大きく飛躍するチャンスを「つかめる人」と「つかめない人」の違いとは?ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第19回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

©三田紀房/コルク

 

【本日の一言】

「どうして私にベンチャーの社長秘書を勧めたのか?」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第3巻 キャリア17より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが・・・。

“相手の意表をつく”提案をする

転職代理人・井野が担当することになった北川は、大手商社に勤める一般職の32歳。井野は北川の希望通り、大手の求人をピックアップして面談に臨みますが、「これでは他社と大差ない」と突き返されてしまいます。

その時、上司・海老沢から言われた言葉を思い出した井野。「だったらベンチャー企業の社長秘書などはいかがでしょうか?」と提案します。それを聞いた北川は、怒って帰ってしまいますが、この思いがけない提案は、深く心に残ります。

「井野がなぜこの提案をしたのか?」が気になる北川は、電話で問い正します。けれど「会って話そう」とだけ言うと、電話を切る井野。実のところ、なぜ海老沢がベンチャー企業の社長秘書を推したのか、井野自身にもわかりません。プロとしてのメンツをかけて、自分で答えを見つけるべく、井野は元・同僚の弁護士、桜木を訪ねるのでした。

ものごとを片側から見ている限り、チャンスに気づくのは難しい

そもそも、北川のイライラの原因とは「正当に評価されて、もっとそれにふさわしい仕事がしたい」という気持ちを押し殺していたことにあります。ところが彼女は「大企業なら安定していて、世間での受けもいい」という大企業のメリットだけに捉われていました。

その一方で、「私が得体のしれないベンチャーに行くなんてバカバカしい」というベンチャーに対する偏見と、自分自身のプライドが邪魔をした結果、北川は「自分が本当に求めているものは何なのか?」ということを見失っていました。

このように、ものごとを片側からしか見ることができないでいる限り、自分が大きく飛躍するチャンスをつかむのは、容易なことではありません。それは、自分がたいして価値を置いていない評価軸に自分から寄っていく行為です。

「自分の特性はどこにあるのか?」

元来、人にはいろいろなタイプがあります。 例えば、何もないところから仕組みをつくり出すのが得意な人もいれば、それを維持・継続・改善することを得意とする人もいます。

前回、本気で評価されたかったら、自分の価値を見極めて「戦う戦場」を変えろ!ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネスの中で、私の事例をお話しました。大企業の中では並の評価しかされていなかった私ですが、社内ベンチャーを起業したところ、水を得た魚のようにイキイキと活動できるようになりました。

このように、大事なのは自分の特性をよく知り、「いかにして自分の本領を発揮するか?」と考えることです。言葉を換えるなら、「あなたが他でもない自分の特性を活かして評価されたい相手は誰なのか?」です。

行動する前に、まずは相場を知る

それでは「今、偏った見方しかできないでいる人が、広い視野を持てるようになるにはどうしたらいいのか?」というと、まずは自分が「ありえない」と思っている選択肢にも目を向けてみることではないでしょうか。

そのためには、自分が良いと確信していることのデメリットをあえて探してみることです。物事は表裏一体である前提に立つのです。

仮に、あなたが「今の仕事に満足していない」ということであれば、転職活動をすること自体は、悪いことではないと思います。しかし、転職活動をすることと、実際に転職することとは、また別の話です。

実は、私も30歳の時に早期退職の対象者として募集要項を受け取った際には、実際に転職活動をしてみた口です。それによって、私は転職市場での、自分の本当の“相場”を知ることとなりました。「今の会社以上に、自分を高く買ってくれる会社はない」という現実を、です。

その事実を突きつけられた私は、「今いる場所に残る」決断をし、自分の価値を高めることに徹する決意をしました。

そんな中、会社が社内ベンチャー制度を公募していることを知りました。それまでの私にとって、社内ベンチャーなど“ありえない選択肢”でしたが、あえてその選択肢を選択したことによって、新しい道が開けたのです。

それまでとは違う選択をすれば、違う結果が待っている

本来、人は常に自分にとって最良と思われる選択をしているものです。しかしそれが本当にベストな選択だったのかどうかは、しばらく経ってみなければわかりません。実際には、後になって「実は良くなかった」ことが判明する場合も、多々あります。

ここで大事なのは、「やっぱりあっちにしておくべきだった」と思うことではありません。それよりも、「良いと思って選んだのに、この違和感はいったいどこからくるのか?」と考えてみることです。

普通に考えれば、今までと同じ選択をしていても、同じ結果にしかなりません。ですから、本当に現状を変えたいのであれば、「どうしたら今までとは違う選択肢を取れるか?」と意識することが大切なのです。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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