残業しないチームのリーダーは「コミュニケーション」にこだわる
『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)の著者である石川和男さん。石川さんは、建設会社総務部長・大学講師・専門学校講師・セミナー講師・税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパービジネスパーソンです。そんな石川さんに「残業しないチームと残業だらけチームの特徴」についてお聞きしました。
プロフィール
石川和男(いしかわ・かずお)
建設会社総務部長、大学、専門学校講師、セミナー講師、税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマン。大学卒業後、建設会社に入社。管理職就任時には、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ダメ上司。一念発起し、ビジネス書を年100冊読み、月1回セミナーを受講。良いコンテンツを取り入れ実践することで、リーダー論を確立し、同時に残業ゼロも実現。建設会社ではプレイングマネージャー、専門学校では年下の上司の下で働き、税理士業務では多くの経営者と仕事をし、セミナーでは「時間管理」や「リーダーシップ力」の講師をすることで、仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。最新刊の『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)ほか、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)など、勉強法、時間術などのビジネス書を6冊出版している。
部下の話に耳を傾ける「理想の上司」なんだけど……
とあるチームのリーダーであるAさんは、傾聴を重視していました。話をしっかり聞いてくれるAさんに、部下も信頼を寄せています。
普段からしっかり部下から話が聞けているので、一人ひとりの仕事の進捗状況やコンディションなどをきちんと把握することができています。多くのリーダーにとっての悩みである「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の欠如」は、Aさんの場合全くありません。
そんなAさんですが、1つ悩みがありました。
ミスなどが発生した際に、チームとして迅速な対応ができないことです。
なぜそんなことが起こっているのでしょうか?普段から密なコミュニケーションをとっているAさんでしたが…、実は「コミュニケーションの取り方」に少し改善が必要な部分があったのです。
普段から不満や愚痴なども含めて部下の話を聞いていたAさん。ミスなど迅速な対応を求められる場面でも、ついつい結論を先に聞くことができずにいました。
「できれば結論を先に話して即座に解決策を検討したい」というのが本音です。しかしこれまでのコミュニケーションのスタイルがあります。なかなか「先に結論から話してほしい」と、Aさんは言い出しにくいのです。
実際にAさんの部下とのやり取りはこんな感じです。
部下:「B社さんには参りましたよ。いつもイライラしていて感じが悪いし、先方に責任があるのに、文句ばかり言ってくるんですよ」
Aさん:「おお!それは大変だな……」
部下:「本当ですよ。今回だって急に怒鳴り出すし……」
Aさん:「とんだ災難だな~」
部下:「本当ですよ。C社みたいに大口顧客でも丁寧な会社もあるのに、大違いですよ」
Aさん:「……(ところで、何が言いたいのだろう? 俺も忙しいんだけど)」
人がいい…人が良すぎるAさん。しかしこれでは状況改善は進みません。
みなさんはどうでしょうか?
Aさんのような状況まで行かずとも、近いことはあるのではないでしょうか?
私もコンサルティングなどで様々なチームを見てきましたが、残業が多いチームのリーダーにはAさんのようなタイプの方が多い気がします。もちろん、部下の話に耳を傾けることが悪いというわけではありません。「コミュニケーションの取り方」には工夫が必要である、ということです。
“残業の多いチーム”か“少ないチーム”かは、リーダーの「コミュニケーションの取り方」で決まることも
実際、リーダーAさんは、皆からいい人だと思われていました。しかし、いつも夜遅くまで残業をしていました。昼間に部下の話をずっと聞いていて、いつの間にか時間が経過してしまい、自分の仕事をする時間がなくなってしまうのだそう。
Aさんが「どんなことでも部下の話を丁寧に聞く」というスタイルをとっていることも背景にあるかもしれません。チーム内の雰囲気はよい状態が保たれているのですが、「結論から話す」というコミュニケーションスタイルはチーム内になかなか確立されていきませんでした。
結果、生産性がなかなか上がらず、チーム全体が「残業の多いチーム」となってしまいました。
一概には言えませんが、リーダーの普段からのコミュニケーションスタイルによって、チームの生産性が左右されることがあります。残業が少ないチームのリーダーは、このことをしっかり理解していることが多いように感じます。
普段のコミュニケーションにこだわり、「結論を先に話す」「論点を整理して簡潔に話す」ということを部下に求めているのです。リーダー自身も、傾聴を重視しながらも結論の見えない話し方に対してはフィードバックをして、適切なコミュニケーションができるチームを構築していこうとしているのです。
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