スチャダラパーBoseが10代の頃の憧れだったフィアット ウーノに試乗!
すべてが必要十分で、存在自体が完璧!
1990年のデビュー以来、日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパー。中古車マニアでもあるMC、Boseが『カーセンサーnet』を見て触手が動いたDEEPでUNDERGROUNDな中古車を実際にお店まで見に行く不定期連載! 今回はBoseさんが免許を取る前から憧れていた欧州コンパクトに試乗します!!
今回はエーゼット オート横浜にお邪魔した記事の続きです。
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「実は今回エーゼット オート横浜にお邪魔したのにはワケがあるんだ。カーセンサーでもめったに出てくることがない憧れの車がこのお店にあったんだよ! えっと……ほら、あれだ!」
Boseさんが指をさした先にあるのは、パッと見はごくごく普通のハッチバック。派手さのあるデザインでもないし、色も、言ってしまえば“地味”だ。それがこの車。
フィアット ウーノ。1983年から1995年まで製造されたフィアットの大衆向けハッチバック。車格的にはBoseさんの愛車であるゴルフIIより一回り小さい。店頭に置かれていたのは1990年式の後期型75SX ie。排気量は1.5Lになる。
「ウーノは免許を取る前からずっといいなと思っていたんだ。良さを一言で表すなら……完璧。これに尽きるよ。初代ゴルフ、初代パンダとともにジョルジェット・ジウジアーロの代表作であるウーノはとにかくデザインが最高! 本当に普通なのにものすごく洗練されているでしょう。サイズ感も必要十分でちょうどいいよね。人がきちんと乗れて荷物もしっかり積める。車はこれくらいのサイズが一番使いやすいと思うな」
ただ、ウーノ75SX ieの新車時価格は税抜きで214万円。とてもじゃないが当時のBoseさんが手を出せる車ではなかった。
「ヨーロッパでは大衆車としてかなりの台数が売れたはずだけど、日本ではおそらくほとんど売れなかったんだろうね。30歳を過ぎて昔憧れた車に乗りたいと思って探してカーセンサーを開いてもまず見つからない。たまに出てきてもターボ車なんだ。僕はどちらかというとNAの普通のグレードの車が好きだからターボは違うなと思って諦めていたの。そうしたらこのお店にNAがあるんだもん。ビックリしたよ」
圧倒的にタマ数がない中、こんな掘り出し物はまず出てこないよ
「ウーノはうちでもめったに入ってこない。車が全然ないのに探している人は結構いるから取り合いになってしまう」という岩原社長の言葉にBoseさんは大きくうなずく。
「仮に乗りたいと思っている人が全国に100人いるとしたら、競争率は100倍だからね。すごい争奪戦だよ。しかもこの物件はガンメタっていうのが最高! 絶妙な色だよね」とBoseさん。
社長いわく、ウーノが新車販売されていた頃は今以上にイタリア車=赤というイメージが強く、日本に入ってきたのは赤が圧倒的に多かったそう。「でもこういう色を選ぶ人はミーハーじゃないからしっかり予防整備をして大切に乗られているケースが多い」と笑う。
社長にすすめられ、室内もじっくり見せてもらうことに。
「この扉の開け方がオシャレだよね。ドアもガタがきていないし、マジで掘り出し物だよ。シートもめちゃめちゃかわいい! 座っただけで自分が乗っているイメージができるもんね。さすがに天井は日焼けしちゃっているけれど、ここは目をつぶるしかないね。窓はパワーウインドウなんだ。僕は電気系=壊れるリスクのある場所と思っているから手動のクルクル窓が好きなんだよね。手動に変えたりなんてできるのかな」
ワクワクしながら車内を見るBoseさんに「この時代のフィアットはヒーターがガンガンに効くんですよ。もちろんクーラーの調子もいい」とスタッフが教えてくれる。
そして社長が「こういう車は運転してみないと何もわからないから」と、試乗をすすめてくれた。
「いいんですか!! ありがとうございます!!! すごく楽しみ!!!!」
街中を普通に走っているだけなのに、めちゃ楽しい!
「うわ、この感覚だよ。今の車って軽自動車でも速いし、ちょっと排気量が大きい車だと楽しさを引き出す前に100km/hまで行っちゃうからね。車が良すぎて逆に良さがわからない。こういう車ってパワーがあるわけじゃないからMTで引っ張って走らせるじゃん。一般道を普通に3速くらいで走っていてもめちゃめちゃ楽しいんだよね。車重も軽いから(850kg)引っ張るのが楽しい!」
同乗してくれたお店のスタッフも「仕事帰り、ついつい遠回りしたくなる車」と乗り味を表現。
「こうやって人通りの多い街中を走っていても誰もこっちを振り向かないっていうのがいいよね。車に詳しい人でもなかなかウーノってことに気づかない。それくらい街に溶け込んじゃうんだよね。ウーノみたいな車は普通に乗って、知り合いから『なんか見たことない車だね』って言われるのが楽しくなる車じゃないかな」
この時代の車は山で木登りを楽しむのと同じ
試乗を終え満足げな表情でお店に戻るBoseさんを笑顔で社長が出迎える。
「最高に楽しい車ですね。走ったフィーリングは僕のゴルフと似ているかも。結局ここが落ち着くんだな。今の車はダイレクト感が薄れてしまった感じがして。ウーノは法定速度内で安全運転を心掛けていても楽しい!」
社長は「今の車が管理された遊園地でアドベンチャー気分を味わっているとすると、この時代の車は山で木登りをしている感じ」と話す。
「不幸な事故をなくし、地球のために低燃費化を進めるのはとてもいいことだし否定するつもりはまったくない。でもたまには冒険したくなるよね。でもこの感覚は若い人になかなか伝わらなくて、うちのお客さんはおじさんばかりだよ」と笑う。
text/高橋 満(BRIDGEMAN)
photo/篠原晃一
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