[業界から指名の絶えないヘアメイクアーティスト] ブレア学園学院長・柳延人『得意じゃないことに一生懸命挑んだほうが、活路を見出せる』~MiAが行くvol.2~
MiAの部屋第1回へ>> 今回は人気タレント・ミュージシャンを数多く手がけている、ヘアメイクアーティストの柳延人(やなぎ・のぶと)さんをゲストにお迎えしてお送りいたします。なんと、MiA大満足の今回のメイクも柳さんによるもの!美容の世界での頑張り方や、どうやって有名になれたのかについてお伺いしました。記事の最後に、実際に撮影で使用された高級コスメのプレゼントもあるので必見です。
“返事は素早く”、”声は大きく”。美容の世界は想像していたよりも厳しかった
柳さん愛用コスメたち。今回、MiAさんのメイクにも使用しました――MiA: 柳さんは、どんなきっかけからヘアメイクアーティストを目指されたんですか?
柳: 中1のときに『猿の惑星』という映画を観て、CGの技術がなかった当時、すべて特殊メイクで人間が猿になっていることにすごく感動したんですよ。その後、アメリカのSFX(特殊撮影)作品を片っ端から観て、エンドロールで表記されるような特殊メイクの人になりたいと思ったのが始まりです。
MiA: ということは、そういう特殊メイクを学べるスクールに通われたのでしょうか?
柳: 当時、日本で特殊メイクを学べる学校はなかったので、周りの人に「だったら美容師になるしかないんじゃない?」「美容学校を出てその道で有名になった方もいるよ」といったアドバイスをもらいまして。まずは、高校卒業後に美容専門学校に入ったんです。
MiA: 美容専門学校に入学していかがでしたか?
柳: 一般常識から道徳心から、人としてイチから叩き直されるようなところもあって。“返事は素早く”、“声は大きく”とか、僕が想像していたよりも厳しかったんですよ。今から思えば、お客様や芸能人の方に向き合うのに必要なことだったんだなと思っています。
不器用で、細かい作業が苦手。自分の才能のなさにしょっちゅう落ち込んでいた
MiA: 華やかな世界に見えて、意外に体育会系なんですね。つらくはなかったですか?
柳: 高校時代、実はラグビー部に所属していたので、体育会系的な苦難にはわりと打ち勝てたんですよ。ただ、最初のころはファンデーションと下地の順番も、アイブロウとアイライナーの違いもわからなかったし、もともと不器用で、ヘアメイクにしては手が大きすぎる僕は、細かい作業が本当に苦手で。自分の才能のなさに落ち込むことなんて、しょっちゅうでした。
MiA: その壁は、どう乗り越えたのでしょうか。
柳: たとえばアイラインを引くとき、女性用に作られている細いアイライナーは手の大きい僕には持ちにくいので、ラバーグリップをつけたり。「どうやったら他の人と違う特徴のある自分が上達するのか」については、日々試行錯誤していました。
MiA: そういう工夫と努力を積み重ねて、今の柳さんが在るわけですね。メイクをする上で、特にこだわっているのはどういうところなのでしょうか?
柳: 前提として、肌につけるものは体に吸収されても悪くないものしか使わないということですね。そして、メイクをする方の肌質を見極めた上で仕上げます。特に、芸能人の方の場合は、撮影や取材が終わるまで崩れないようにするということも心がけています。
銀座のヘアサロンで、自分の特技となる“逆毛を立てる”技術を習得
MiA: 今日柳さんにメイクをしていただいて、感動しましたもん。ファンデーションのツヤっとした質感ってどうしてもベタっとしがちなのに、あくまでもサラっとしていて。
柳: MiAくんはもともとの肌質がいいですからね。今日は化粧水よりも保湿感が1. 5倍くらいに上がるヒアルロン酸原液をつけて、BBクリームを塗りました。
MiA: 厚塗りをしていないから、ベタっとしていないんですね。
柳: ファンデーションを塗ったことで、肌が重たく感じて、疲れてしまわないように、なるべく薄付き仕上げにしています。なおかつちゃんとカヴァーされているベースというのが大事なんです。
MiA: ちなみに、美容専門学校を卒業後は、すぐに美容師のお仕事を始めたんですか?
柳: 銀座にあるサロン(美容室)に就職しまして。オーナーが銀座のクラブや飲食店を経営していて、お客様の大半がヘアメイクの必要な女性だったので、逆毛を立てるのがすごくうまくなったんですよ(笑)。
MiA: その経験が、後々のアーティストのヘアメイクに生かされたわけですね。
柳: まさに、そこが原点です。
MiA: 仕事として美容師を始めて、大変なこともあったのでしょうか?
柳: 初任給がとても低かったんですよ。でも、親からの援助はなく、ひとり暮らしをしながらいつかアメリカで特殊メイクを学びたいと思っていたので、接客業と日雇いの建設作業をメインに、アルバイトもいろいろとしましたね。
目標があると、やっぱり簡単にへこたれない
MiA: ヘアメイクは手先を使う仕事ですから、建設作業は危ないように思いますけど……。
柳: そうなんですよ、だからヘアメイクを目指す人にはあまりおすすめしません(苦笑)。
MiA: でも、アメリカに行きたい、夢を叶えたいという強い気持ちがあったからがんばれたのでしょうか。
柳: それはあります。目標があると、やっぱり簡単にへこたれないですよね。そして、美容師は免許を取得してからどこかの美容室で3年間働かないと自分で美容室を開業することができないので、その美容室で3年間きっかり働いて。やめたあと、すぐにロサンゼルスに留学したんです。
MiA: 現地で、専門的な学校に通われたんですか?
柳: 特殊メイク用品を販売するお店でバイトをしたり、ハリウッドのユニバーサル・スタジオでお客さんにフェイスペイントをするバイトをしたりしながら、第一線で活躍する日系人の先生から特殊メイクを学ぶという日々でした。映画や舞台などいろいろな現場にも連れて行ってもらって。中でも、『ウィロー』という映画の特殊メイクの現場を見せていただいた経験はとても刺激的だったし、勇気をもらえるストーリーに感動したこともあって……。
MiA: なるほど、それで会社名を“ウィロー”にされたんですね。
柳: そうなんです。1年ほど留学して帰国してから、1年間だけフリーランスで活動して、25歳のときに(株)ウィローを立ち上げて。“柳”を英語にしても“willow”だし、運命を感じて名付けました。
MiA: 立ち上げた会社は、すぐ軌道に乗ったのでしょうか?
技術は持っているんだから絶対に大丈夫!決断力と行動力が大事。
柳さん愛用のコスメ・ポーチ・ブラシの一部柳: バブルの絶頂期でしたからね、立ち上げ直後からおもしろいように仕事がたくさんきたんですけど……30歳過ぎでバブルがはじけたあとは、ヘアメイク以外のバイトをした時期もあります。でも、「技術は持っているんだから絶対に大丈夫!」という自信は失くさなかったんですよ。そんなころに、アーティストの方たちとお仕事をたくさんさせていただくようになったんです。
MiA: そこで、逆毛の技術が生きてくるわけですね。
柳: 「柳さんが逆毛を立てるとライヴで激しい動きをしても崩れない」と多くの人に指名をいただけるようになって(笑)。いろいろなアーティストさんを担当させていただく中で、自分からは生まれないようなアイデアをもらったり、生き様に触れたりすることで、すごく刺激されるし、成長もさせてもらっているなと思います。
MiA: そんな柳さんは、現在「BLEA学園グループ」の学院長でもあるわけですが、どうして教育の道に進もうと思ったのでしょう。
柳: 15年くらい前に、母校である美容専門学校でアーティスト向けメイクの講義を依頼されたんですよ。それをきっかけに、ヘアメイクの道を志す若い人たちに自分なりのアドバイスをしてあげたいな、それには教育の場がいいかなと思い立ちまして。現在は、「BLEA学園グループ」の学院長でありつつ、ほかの学校で外部講師としてクリエイティヴメイクや特殊メイクを教えていたりもします。
MiA: 僕も思い立ったらすぐ行動する派ですけど、柳さんの決断力と行動力は本当にすごいですね。多くの経験をされている柳さんですが、若いうちにこれをしておいてよかったと思うことはありますか?
柳: できるようになるまで探求するということをしておいてよかったなと、すごく思いますね。そうやって体得したことは、絶対に忘れないですから。
MiA: 得意じゃないことって自分に向いていないのかなと諦めてしまいがちですけど……。
柳: むしろ、得意じゃないことに一生懸命挑んだほうが、活路を見出せたりもすると思うんですよね。
それでこそ、悩んだ分オリジナリティが生まれてくるだろうし。若い人たちには、失敗したっていいからどんどん決断して行動して、探求するということにトライしていってほしいなと思います。
MiA: 本日は貴重なお話ありがとうございました!行動することって本当に大切ですね!
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■Profile
柳延人(やなぎ・のぶと)
ヘアメイクアーティスト。広告やCM、エンタテイメントなど幅広い分野で活躍。また、育成にも積極的で、現在ファッション・ネイル・ヘアメイクの資格や、高等・大学の卒業資格が習得できるBLEA(ブレア)学園グループの学院長。株式会社ウィロー代表。
◆Beauty&CreativeBLOG「柳塾」:http://ameblo.jp/yanagijuku/
◆柳 延人Twitter:@nobutoyanagi
◆柳 延人facebook:http://www.facebook.com/nobuto.yanagi/
◆BLEA学園グループ:http://blea.jp/
◆株式会社ウィロー:http://willow.co.jp/
■Profile
MiA(ミア)
ギタリスト、音楽プロデューサ。15歳からヴィジュアル系バンドのギタリストとして活躍。2011年に加入したMEJIBRAY(メジブレイ)では美形ギタリストとして注目を集める。MEJIBRAYの活動が休止後はミュージシャン以外に実業家としての顔ももつ。
◆MiA Official Twitter:@MEJIBRAY_MiA
◆MiA Instagram:mejibraymia
企画・編集:ぽっくんワールド企画/小川 晶 取材・文:杉江優花 撮影:河井彩美 🎸その他の”MiAの部屋”記事はコチラ⚡ ▼その他のインタビューはコチラ▼ MiA(MEJIBRAY)インタビュー『若いときの時間はお金で買えない』【俺達の仕事論vol.22】端正なルックスにヘビーメタルを基としたハードなギタープレイと、美しさと実力を兼ね備えたMEJIBRAYのギタリストMiA。MiA流“未来につながるアルバイトの選び方”について聞きました。
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