インターネットの予言的私小説!?『僕らのネクロマンシー』発売記念対談! 著書・スマートニュース 佐々木大輔×情報学研究者ドミニク・チェン
インターネットがなくてはならない現代。インターネットに関わる本ももちろん溢れるように存在している昨今ですが、本書『僕らのネクロマンシー』(NUMABOOKS)はインターネットを題材とした小説単行本です。
今年2月に一般発売されたばかりの本書。手掛けたのは、元LINE執行役員で現在はスマートニュースに勤務する佐々木大輔さん。佐々木さんの故郷である岩手県遠野市が舞台となっています。
去る4月7日、本書の発売を記念して、著書である佐々木さんと起業家・情報学研究者のドミニク・チェンさんによる対談イベントが、東京・下北沢の本屋「B&B」で開催されました。
インターネットの世界を歩んできた二人による今回の対談。佐々木さんは本書について「インターネットに関わる情報技術についての話。今後起こりうる未来と、現状のゴシップをこの本に詰め込みました」と紹介。それに対しドミニクさんは「読んでみて『分かる分かる』という感じが止まりませんでした」とまず感想を述べました。
ドミニクさんいわく「ITと降霊術が一緒になっていることがポイント」という本書。降霊術とは、亡者の霊を呼び寄せようとする魔術を指すのですが、ドミニクさんによれば、今この降霊術に注目している人は多いそう。その中でも「ITを熟知している人でないと書けない内容で、専門用語などが含まれているものの、物語なのですべてを理解しないでも読み進められる内容です」とドミニクさんは話します。
一方で、物語自体は、主人公が祖母の葬儀のために岩手県遠野市にある実家を訪れるところからはじまります。「最初はそのつもりではなかったのですが、書いていくうちに亡くなった祖母の話が多くなりました。祖母にきちんと挨拶できずに亡くなったことをずっと悔やんでいて、そういう意味で祖母に捧げる本でもあります」(佐々木さん)
こう話す佐々木さんは、16カ月の月日を掛けて本書を書き上げたそうです。「仕事の合間を縫って書いたのですが、当時は年間200回の会食があって、土日は家事と育児に専念するという生活でした。そのなか移動中や深夜になんとか時間を捻出して執筆に費やしました。そういう状態だったから逆に書けたのかもしれません。書き終わったら、新しいことにチャレンジしたいと思い会社を辞めました(笑)」(同)
さらに佐々木さんは、2018年に起きたことを言い当てた「予言本」にもなっていることを説明。「グーグルやフェイスブックで起こりそうだなという内容を書きました」と佐々木さん。ドミニクさんは会場に向けて「ビジネスマンこそ読むべき内容です」と話していました。
2時間にわたって行われた今回の対談イベント。最後にドミニクさんが「続編も期待したいです」と佐々木さんに期待を寄せて、イベントは終了しました。
インターネットの業界に携わっている人のみならず、土地の伝承、伝説、家族といった普遍的テーマが題材にもなっているので、小説好きな人にも読みやすい一冊となっています。
なお本書は350部限定発売となっており、この発行部数や販売方法、装丁デザインに至るまで、販売方法や装丁は、本書と舞台を同じくする柳田國男の『遠野物語』初版本へのオマージュを含んでいるそうです。表紙は遠野で撮影した樹氷の写真にアクリルが施されており、ひとつずつ手作業で貼り合わせているのだそう。希少価値を価格に反映する「時価」を採用しており、販売は専用サイトのみとなっています。気になる方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか?
■http://numabooks.com/awizardoftono.html
■関連記事
新しきサウンドトラック≒カテドラル、そしてむかしむかし、ミライミライへ。
かつて17歳だったきみに、そして今17歳のきみに 最果タヒ『星か獣になる季節』
ポストトゥルース時代の小説家のデビュー作 新しい純文学の形
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。