女性がキャリアを前進させるための「小さな一歩の踏み出し方」とは?【女性活躍支援イベントレポート】

女性がキャリアを前進させるための「小さな一歩の踏み出し方」とは?【女性活躍支援イベントレポート】

リクルートキャリアの女性活躍支援プロジェクトチーム「RCAジョカツ部」が開催する「キャリージョ・エンカレッジ・プログラム」。過日、第3回目となるイベント『私を前に進めるための、小さな一歩の踏み出し方』が開催されました。

イベントの構成は、第一部が株式会社ChangeWAVEの佐々木裕子さんによる基調講演。第二部が、リーディングカンパニー3社の女性社員によるパネルディスカッション。そして第三部が、佐々木さん、パネラーとして登壇した女性社員と参加者によるキャリア座談会。

今回はその中から、第一部の佐々木さんの講演内容をリポートします。

佐々木裕子さん

株式会社ChangeWAVE代表

東京大学法学部卒業後、日本銀行、マッキンゼーアンドカンパニーを経て、2009年にChangeWAVE設立。「目に見える人の変化」を通じて企業変革を仕掛ける「企業変革パートナー」として、企業リーダー育成、ダイバーシティ推進、組織変革を手掛ける。著書に『21世紀を生き抜く3+1の力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

固定概念、自己制止…さまざまな「リミッター」がキャリアを縛っている

“企業の変革屋”として、企業リーダー育成、組織変革などを手掛ける佐々木さん。「現在は以前よりも楽に、自由に、やりたいことができるようになった」と語る佐々木さんですが、現在のキャリアに至るまでには紆余曲折があったそうです。この日はご自身の経験を踏まえ、「小さな一歩の踏み出し方」を語ってくださいました。

「会社、組織は人でできています。だから、会社や組織が変わるときは、まず誰か1人がガラリと変わり、そこから大きなうねりが起こって周りに波及し、組織全体がすごい勢いで変わっていきます。そして、人が変わるときは、じっくり時間をかけて変わるのではなく、ある瞬間に“カックン”と変わる。その初めのスイッチを押す手伝いがしたくて、この仕事をしています」

佐々木さんは仕事を通じて年間1000人もの人に会うそうですが、「企業の中堅社員の方に足りていない、活かせていない力が4つある」とのこと。

1.考える力

問題や課題を評論家的に語れるが、その本質を射抜くまでには至らない。

2.共創する力

そもそもネットワークが狭く、多様な考え方・経験値へのアンテナ/許容度が低い。人に助けてもらうことも上手ではない。

3.自己進化する力

どちらかというと「守り」に入る。本気で挑戦・行動はなかなかできない。

4.自分の目指すものを持つ力

そもそも日々の仕事に追われ、本当に何をしたいのか向き合うことからから無意識に逃げている。

「このような状況に陥ってしまっているのは、たくさんのリミッターが我々を取り巻いているから」と佐々木さん。例えば、世の中や会社が変わらなければ何も変わらないと思う「思考停止リミッター」、仕事と家庭の両立なんて土台無理だと思う「固定概念リミッター」、そして、私ができることなんてしょせん限られていると思う「自己制止リミッター」などが挙げられます。

佐々木さんも、実はこれらのリミッターに縛られていた時期があったそうです。現在、自由に働けているのは、次の3つを知ったことが大きかったと分析します。

<佐々木さんの「My Life Lessons」> 「己の恐れ」を知る 「己の無知」を知る 「己の情熱」を知る

どういうきっかけで、それぞれを知ったのか。それにより何が得られ、何が変わったのか、詳しく説明いただきました。

「己の恐れ」を知る:恐れの本質とうまく付き合えるようになり、一歩踏み出す力が湧く

「恐れ」は誰もが必ず持っているもの。「変革屋として、必ず触れなければいけないのがこの“恐れ”。人は怖いから、変われない。何が怖いのか、なぜ怖いのかをつかむのは、変化するうえでとても大切なこと」と佐々木さんは言います。

コンサルティング会社のマネージャーを務めていた35歳の時、あるクライアントの副社長と、自社のシニアディレクターと3人で会食する機会があったとのこと。「ここはいいところを見せないと」と知ったようなことをいろいろ話したけれど、副社長になかなか刺さらず、会話も盛り上がらない…という経験をして「自分には、クライアントに認められるような実力もキャラクターもない」と落ち込んだのだとか。

しかしその後、ある研修で外国人のメンターに「トラウマになったこと、課題に感じていること」を聞かれてこの会食の話をしたところ、大笑いされたのだそう。

「『その副社長から見れば、君が賢いかどうかなんてどうでもいい。この人は自社の悩みや課題を解決するために頑張ってくれそうかどうか、しかないんだよ。この人、自分のこと賢く見せたいんだなと気づいた瞬間、この人にまた会いたいとは思わないでしょ?』と言われて、すごく納得したんです。当時は、相手に信頼されるには、いかに賢い人だと感じせるかが大切だと思っていました。つまり、『賢いと思わせないと、自分に価値はないと判断されてしまうのではないか』という恐れがあった。それに気づけたことは、自分の中で大きな事件でした」

「変革屋」の仕事をするようになって、「スキルや経験は壁にならないが、恐れが壁になることはとても多い」と感じるのだそう。「どんなにバリバリ仕事をこなしている人でも、必ず恐れを持っている。信頼を失いたくない、嫌われたくない、ばかだと思われなくない、孤独になりたくない…など。その恐れを自分で認識し、消すことはできなくてもうまく付き合うことが必要」と佐々木さんは言います。

「皆さんも、ご自身の恐れが何なのか掘り下げてみるといいと思います。一歩踏み出したいのに、なかなか踏み出せないのは、『踏み出すことで何か怖いことが起こる』と思っているから。何が怖いと思っているのか。立ち止まって想像してみると、自分の恐れの本性が見えてきます

「己の無知」を知る:「自分は知らないだけではないか?」という意識を持つと物事の見方が変わる

佐々木さんの地元の中学校では、「中学生はヘルメットをかぶる」が校則だったそうです。自転車に乗っていないときでも、通学時だけでなく休みの日も、とにかくかぶるのが当たり前だったのだとか。当時小学生だった佐々木さんにとってはその光景が当たり前であり、「1ミリもおかしいと思わなかった」そうです。

外から見れば明らかに変なことでも、中にいるとわからない。「自分の領域の中では当たり前でも、別の視点から見るとおかしい」というようなことは、世の中にたくさんある…と言います。

「私はコンサルタント時代、『このクライアントの経営のことは、誰よりも絶対理解している』と思い込んでいました。しかし、退職して独立し、ある企業の変革をお手伝いした時、全然理解していなかったと思い知らされました。企業がコンサルタントに提供する情報はごく一部。理解してもらわないと進まない情報しか渡しません。そんな簡単な事実に、立場が変わってみて初めて気づきました」

「『もしかしたら、自分はわかっていないのではないか』というセンサーを持っておくことは、物事を見間違えないための大事なポイント」と佐々木さん。

「『この人、いけ好かない』と思った人が、実はすごくいい人だった……という経験、お持ちではないでしょうか? 本当はいい人なのに、自分自身がそれに気づかなかっただけ。悩み事や課題にぶつかったときも、『自分は知らないだけではないか』という視点を持つと、物事の見方が変わってきます。皆さんにもぜひ普段から、この意識を持つようにしてほしいですね」

「己の情熱」を知る:自身の情熱のありかを知れば、怖いものは無くなる

「自分の情熱」を探すのは どんなスキルを磨くよりも難しい、とのこと。佐々木さん自身も、「変革屋をやりたい、という情熱に行きつくまでには七転八倒があった」と言います。

35歳の時、それまで365日戦闘モードで走り続けてきたことで疲弊し、「これからどうすればいいか」と悩み、マッキンゼー退職を決意した佐々木さん。そんなとき、ある人から「あなたの人生のビジョンは何?」と聞かれて、答えられずショックを受けたのだとか。そこで退職後、自分自身を見つめ直し、やってみたいと思ったことをリストアップして行動に移してみたのだそう。

「映画が好きで、いつか映画を作りたいと思っていたので、プロデューサーならできるかなとスクールに話を聞きに行ってみたり、映画会社に履歴書を送ってみたり。政治の世界にも興味があったので、ある党の選挙対策本部に履歴書を送ったこともありました。いずれも実現しませんでしたが、行動してみると、自分の情熱がどれほどのものかがわかります。何かヒントが得られるのではないかと思い、いろいろな立場の人にアポを取って話を聞いたりもしましたが、もちろん参考にはなったものの『人の話から自分のビジョンが湧き出ることはない』ということがわかりました」

佐々木さんが「変革屋」に行きついたのは、イメージした絵を描いてもらうことで自分のビジョンを考える「ビジョンアートプログラム」に参加したことがきっかけ。プログラムの過程で、コンサルティングを手掛けていた会社で「人が変わった瞬間』を見た時のことを思い出し、「人がガラリとかわり、成長していく、そして組織もどんどん変化していく…その姿を見ながら仕事をしていたときが自分自身、一番自由で力強く働けていた」と気づいたのだそう。

自分の情熱のありかを知ったことで、すごく楽になった…と佐々木さん。

「人が変われる瞬間を手伝い、変化が起こせるならば、人の評価なんてどうでもいい。偉いとか、すごいなんて思われなくてもいい。そう思ったら、怖いものがなくなりました」

リミッターを外す「愛あるおせっかい」を大切にしよう

己の恐れを知り、己の無知を知り、己の情熱を知れば、自分自身を縛っていたリミッターが外れ、仕事がどんどん面白くなりキャリアも開ける。これが日本人1億2000万人に少しずつでも波及していけば、日本はスゴイ国になるのではないか…と語る佐々木さん。ただし、「この3つは、自分ひとりではできないこと」と言います。

「なぜ自分ひとりではできないか。それは、いずれも自分のことだからです。『そのヘルメット、おかしくない?』と誰かに言ってもらうまで気づけないように、恐れも、無知も、情熱も、いろいろな人と関わり、話を聞く中で気づけるものです。だからこそ、自分のリミッターを外してくれる“おせっかい”の存在は大事にしたほうがいい。自分に苦言を呈してくれる人、『それはちょっと違うんじゃない?』と意見してくれる人は貴重だし、私もそういう人たちに救われました。そして、皆さん自身も、ぜひ周りにおせっかいを焼いて、リミッターを外す役を担ってほしいと思っています」

最後に、東京大学教育大学院教授の故・三宅なほみ先生の言葉を紹介してくれました。

――21世紀に大事なことは、誰かからノウハウや技術を教えてもらう、ということではない。人が誰しも生まれながら持っているのに、オトナになる過程で錆びついてしまった本来の力を、思い切り解放することである。

「なぜ人が急に“カックン”と変われるかというと、元々力を持っているからなんですね。でも、リミッターが付いたり、錆びついてしまったりして、元来の力が発揮できないでいる。それを開放することが、21世紀を生き抜く力になるんです。私自身、リミッターはまだまだあるのでしょうが、変革屋として人のリミッターを外すためのスイッチを押しつつ、私も周りに押してもらいながら、力を発揮していきたいと思います」

佐々木さんのお話から、自分らしい一歩を踏み出すためのヒントや、キャリアについて別視点から考えるきっかけが得られた方は多いのではないでしょうか? 女性がイキイキ働き、活躍するためのこのイベントは、今後も不定期開催予定。イベント情報等はこちらをご覧ください。

リクルートキャリア「ジョカツ部」 https://www.facebook.com/rcajokatsu/

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康

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