キラキラでは落ち着かない、プライベートスペースはクラシカルに(後編) テーマのある暮らし[2]
築25年の邸宅で、ポーセラーツ・ポーセレンペイント、着物の着付けレッスンのサロン「ラ・フィユ鎌倉」を開いている赤見かおり子さん。パーティションを使わず、インテリアのテーマを変えることで、サロンスペースとプライベートスペースを分ける手腕が光っています。後編では、1年半前にリフォームを終えたプライベートスペースをご紹介します。【連載】テーマのある暮らし
この連載では、ひとつのテーマで住まいをつくりあげた方たちにインタビュー。自分らしい空間をつくることになったきっかけやそのライフスタイル、日々豊かに過ごすためのヒントをお伺いします。
家族のお客さまをもてなすクラシカルなメインダイニング
玄関から見て一番手前の部屋は、医師である夫のお客さまなどをもてなすメインダイニング。来客には年配男性も多いため、サロンのようなキラキラとしたインテリアでは落ち着かないのではないかと思い、クラシカルな雰囲気に仕上げたのだそう。
自分の希望よりも訪れる方の居心地を大切にする姿勢に、かおり子さんのお人柄が滲み出ています。壁にかけられたノイシュヴァンシュタイン城の絵は、かおり子さんのお父様が描かれたもの。部屋のインテリアに合わせて、かおり子さんが絵の具の色まで指定したのだそうです(写真撮影/内海明啓)
30年以上前から使っているキャビネットは、国産家具メーカー「カリモク」で購入したもの。引越し好き、リフォーム好きを自称するかおり子さんですが、何でも新しく買うわけではなく、愛着のあるものは何10年でも使い続けているそうです。お気に入りの作品は、キャビネットにディスプレイしながら収納。フリーハンドで絵を描く作品はポーセレンペイント、転写紙を切って貼る作品はポーセラーツと呼ばれます。ポーセレンペイントの方が難易度は高いのだそう(写真撮影/内海明啓)
メインダイニングのテーブルセッティングは、自作の食器を中心にクラシカルな雰囲気でまとめています。
「私にとって“上質なもの”とは、愛情を注げるもの、お金では買えないもの。食器だって、デパートに行けば何百万円もするようなものが並んでいますが、私は愛情を込めて自分でつくった食器でおもてなしをしたいんです」とかおり子さん。手描きの食器はアンティークとの相性が良いので、燭台はフランス、カトラリーはイギリスのアンティークをセレクト。アンティークをうまく使ったクラシカルなテーブルセッティングもかおり子さんの得意とするところです(写真撮影/内海明啓)
生活感を徹底的に排した驚きのキッチン
キッチンまわりは、モダンな雰囲気でまとめられています。ここに足を踏み入れた誰もが口にするのは、「生活感がない!」というひと言。どこをどう見ても、調味料ひとつ置いてありません。
「よく、本当に料理してるの?と聞かれるんですよ」そう言って笑いながら開けてくれたシンク下の扉の奥には、使い込んだフライパンがいくつも並んでいました。キッチンにある「ウエストハウスギャラリー」の椅子には、「キファソ」の生地が張られています。今回のリフォームの際にオーダーしたとのこと、モダンな雰囲気にぴったりです(写真撮影/内海明啓)
連日、全国から通う生徒さんのレッスンをこなす多忙なかおり子さんにとって、家の中を美しく保つのはさぞ大変だろうと思いましたが「“出したら戻す”ということを徹底しているだけなんです。そうすると、そもそも散らからないので、キープするだけでいいんですよ」とのこと。
すべてのモノの収納場所を決めておくことが、この状態をキープするカギなのだそう。
キッチンの隣には、白いグランドピアノがディスプレイされています。ここはもともと中庭でしたが、7年前にこのピアノを置くために増築したのだそう。
音大時代にピアノを学んだかおり子さん。白とライトグレー2台のグランドピアノが2階の防音室にあったのですが、防音室を着物部屋にリフォームしたためライトグレーの1台は処分。こちらをディスプレイ用として、1階に下ろしました。スモーキーなピンク色が甘すぎずスタイリッシュな雰囲気を醸し出すカーテンは、今回のリフォームの際に壁の色と合わせて選んだもの。パーティションのエレガントなラインは、リビングの螺旋階段とリンクしています(写真撮影/内海明啓)
リビングルームは、エレガントな螺旋階段がアクセント
一番奥に位置しているのは、家族がくつろぐリビングルーム。南東に面している上に2面採光なので、いつも光があふれています。今回のリフォームでは、壁のクロスを無地からダマスク柄に変えるなど、少し思い切ったそう。
多忙を極める夫、成人している2人の娘さん……と、すれ違いがちな生活になりそうですが、実は「みんな、ここでくつろぐことが大好き」なのだそう。常に感謝の言葉を忘れず、細やかな気づかいを欠かさないかおり子さんが、ご家族を包み込んでいる様子が伝わってきます。存在感のある白いソファは、10年以上使っているもの。「白だから汚れやすいけれど、うちは家族みんなが掃除好き。夫も娘たちも、休みの日には一生懸命拭いてくれるんですよ」とかおり子さん(写真撮影/内海明啓)
このリビングで誰もが目を奪われるのは、螺旋階段です。新築当初、手すりのラインは縦の直線のみで、色も白でした。今回のリフォームで、装飾が付いたデコラティブなラインのパーツを溶接し、ブラックに塗装しなおしたことで、見事にリビングのアクセントになっています。赤見邸は建物が2つに分かれているため、リビングの2階に上がるにはこの螺旋階段が不可欠なのだそう。2階はかおり子さんの“着物部屋”になっているため、かおり子さんは一日に何度もこの螺旋階段を往復するそうです(写真撮影/内海明啓)
白をベースにしながら年代を感じさせる家具を配したエレガントなスタイルは、レイチェル・アシュウェルが提唱した“シャビ−シック(味がありながらも優雅なさま)”を彷彿とさせますが、かおり子さんの好みは少し違う様子。
「シャビーだと言われることもあるのですが、個人的にはもっとキラキラしたものや、透明感のあるものを取り入れるスタイルが好きですね」
リフォームもショッピングも、感性と出会いを大切に
25年の間に数え切れないほどのリフォームを繰り返した赤見邸ですが、インテリアデザイナーに相談したのは、なんと直近のリフォームがはじめて。
それまでは、クロスやカーテンなどの素材選びから、工務店とのやりとりまで、すべてかおり子さんが1人で手がけてきたのだそうです。
「こんな素材見たことないよ、なんて言われながらも、こうしたい、ああしたいって伝えて。業者泣かせですよね(笑)。工務店の方とは、いまでは信頼関係で結ばれていますよ」壁と天井の境目の廻り縁も、すべてかおり子さんが自分で選んだもの。1本ではなく数本重ねて、よりエレガントに見えるように工夫するなど、工務店と話し合いながらリフォームを進めたそうです(写真撮影/内海明啓)
完成度の高いインテリアを手がけるかおり子さんですが、インテリアデザインやテーブルコーディネートの専門的な勉強をしたことはないのだそう。
「自分の住まいですから、自分の好きなようにやっていきたいと思うんです。だから、参考にするインテリア雑誌や、ブランドショップなどもとくに決めていません。なにかを選ぶときには、出会いと感性を大切にしています」ティーポットはカナダで、トレイはニュージーランドで購入した銀器。贔屓のブランドを決め込まず、旅先で出会ったものを思い出と一緒に持ち帰るのが、かおり子さんらしいショッピング(写真撮影/内海明啓)
サロンの生徒さんやプライベートでのお客さま、そしてご家族ひとりひとりのためにインテリアに手をかけるかおり子さん。お話を伺えば伺うほど、その温かな人柄に引き込まれます。
「私にとって“家”は幸せの象徴。生徒さんのためでもあり、自分の趣味でもあるリフォームはまだまだ続けていきます。ゴールはないんですよ(笑)」と語る笑顔からは、幸せなオーラがあふれていました。●取材協力
Instagram (kaoriko_no_salon)
きもの着付けアーティスト、ポーセレンアーティスト。大人のためのお稽古サロン「ラ・フィユ鎌倉」主宰。サロンでは-10歳に見せるきもの着付けレッスン、ポーセラーツ・ポーセレンペイントレッスンを開催中。
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