一流か否かは全員が右を向く中で“たった一人”左を向けるかで決まるーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

一流か否かは全員が右を向く中で“たった一人”左を向けるかで決まるーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第13回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「(みんなとは)反対側に向かう時に必要なもの。それは勇気だ」(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第2巻 キャリア17より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を排出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが・・・。

成功する人とは、「常に少数派」

桜木の事務所で、久しぶりに元教え子の矢島と水野に再会した井野。桜木の話を聞いた2人は、井野の上司・海老沢に興味を持ちます。「そんなに優秀な人なのか?」という問いに、「とんでもない」と答える井野。「海老沢は社内では変人扱いされ、“日本支配計画”を語るようなおかしな人だ」と話すと、矢島も思わず「まともな大人とは思えない」と口走ります。

ところが、それを聞いた桜木から「矢島、オレをがっかりさせるな」という言葉が漏れます。「“まとも”などという言葉を口にする者に、大きな仕事はできない」と言うのです。

「大きな成功を得たければ、“まとも”を目指さないこと。世間の人とは逆の発想をするようでなければならない」と諭す桜木。「社会は通常、極端から極端へと振れるもの。そして、成功は常に多勢の中にはない。全員が右を向く中で、一人、左を向いた者が勝者となる」と言うのでした。

「他人と同じ道を行く」ことが、本当に正しいのか?

一般に、人は「見えないもの」「保障されていないもの」に関しては恐れを抱き、他人がすでに通ったことのある道を「安全だ」と思うものです。

こんな話があります。パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、わずか9歳にして、長く厳しい奉公生活を始めたそうです。ある時、氏の兄弟子が不正を働き、それが主人に見つかってしまったことがありました。兄弟子は小利口者だったため、主人も「小事だから」と兄弟子を許そうとします。すると、松下氏が代わって暇乞いを申し出ました。

当時、16歳だったという氏は、「悪いことをした者を許すような店にはいられない」と主人に告げます。それを聞いた主人は引っ込みがつかなくなり、結局、兄弟子は首になりました。他の店に移った兄弟子は、ほとぼりが冷めると、また不正を働くようになります。一方、不正を許さなかった氏の店は、従業員の間に規律が生まれ、かえって繁盛するようになったということです。

普通であれば、仲の良かった兄弟子をかばったり、見て見ぬ振りをするのが一般的な人の取る行動でしょう。子供ながらに、主人に異を唱えることは、勇気が必要だったに違いありません。当時を振り返って、氏は「たとえ気が小さい者であっても、『自分の行いは正しい』と思えれば、そこには勇気が生まれる」と著書の中で述べています。

違う世界へ行けば、ルールも変わる

多勢につくことが当てにならない一因として、「場所が変われば評価も変わる」ということが挙げられます。身近な例で言うと、一般職の人が管理職になれば、当然、評価基準も変わりますから、一般職の時と同じ仕事をしているわけにはいきません。同じように仕事に取り組んでいても評価が上がらない人は、過去の仕事が評価されたことで期待が動いているにも関わらず、以前の仕事を引きずっていることが原因かもしれません。

私が会社員だった頃に、アウトレット事業を社内起業した時も同様でした。今まで一緒に働いてきた人から、「上手くいかなければ首になるような事業に、正社員の立場を捨てて臨むなんてトンデモナイ」と、真顔で引き止められました。仮にあの時、起業を思いとどまっていれば、おそらく私は一生、自分が今フォーカスしている得意分野で花を咲かせることなく、会社員人生のまま定年に向かっていたかもしれません。

人がこれまでとは違う環境に飛び出そうと思ったら、必ず必要となるのが勇気です。それは、新しいところへ行けば、今までとは違ったルールと評価が待っているからです。

他人とは違う決断を下せるようになるにはどうすればいいか?

今回、選んだ「本日の一言」の言葉の中には、『エンゼルバンク』の著者・三田紀房先生からの「みんなが『それでいい』と言うことが、本当に自分にとってもいいことなのか?」という問いかけが込められている気がしてなりません。

「最後は勇気」というと、根性論のように聞こえるかもしれませんが、そうではなくて「どれだけ新しく生まれ変わろうとする自分のことを信じられるか?」ということに他なりません。

ビジネスや投資に限った話ではなく、「失敗よりも機会損失のほうが大きい」と考えている人のほうが圧倒的な結果を出すということは歴史が物語っています。いざという時に勇気を持てる根拠になるのが、日ごろの努力。努力が新しい自分を創るのですね。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は39万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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