会社員時代から“月間100万PV”を達成!ブログメディア「gori.me」はどのようにしてできたのか
個人が運営するWebメディアとしては異例の500万PVを超えた「gori.me」。Apple関連の情報であれば、まずココをチェックすればOKと言われるほどの大人気メディアだ。
1日に更新される記事数は、平均7〜9本。訪れるたびに新着記事が更新されている。
なぜ驚異的なPVを叩き出すことができたのか、普段どのような生活を送っているのか、運営者の“g.O.R.iさん”こと草刈和人さんに、“書く”ことの原点となった幼少期から現在に至るまで、余すところなく語っていただいた。草刈和人さん/ブログメディア「gori.me」運営
1987年生まれ。6〜12歳までアメリカで過ごす。帰国後、渋谷教育学園渋谷高等学校を経て、慶應義塾大学環境情報学部に進学。卒業後、ケータイサイト開発会社に就職。2009年から会社員生活と並行して個人ブログメディア「gori.me」をはじめ、2014年に独立。Apple関連情報の情報発信を続け、2016年に500万PVを達成。
持ち前の適応力を発揮! ジェスチャーと熱意で英語環境に慣れる
今でこそ人気のブログメディアを運営し、文章を書いて生計を立てているg.O.R.iさん。しかし、文章を書くことに得意意識もなく、たくさん本を読んできたわけでもなく、ごく普通の子どもだったという。
「僕の“書く”ことの原点は、親から勧められた日記をつけることです。今日は何をして遊んだとか、日常のことを書いていただけですが、日記によって書く習慣を身につけることができました」
その後、親の仕事の都合で6歳からアメリカに移住。持ち前の適応能力であっという間に溶け込み、1ヶ月もする頃には不自由なくコミュニケーションが取れるようになっていた。
「“パン”は英語で“Bread”ですが、もちろん僕はわからなくて“Paaaaan!!!!”ってジェスチャーと熱意で伝えたら、ちゃんとパンをもらえた。それは今でも鮮明に覚えているシーンの1つです」
帰国後は母親の勧めで英会話学校に通い、高校は帰国生の受け入れを積極的に行なっている渋谷教育学園渋谷高等学校に進学。
「英語力があるからこそ、今でも海外の文章を難なく読めるし、微妙なニュアンスの違いも理解できます。英語力をキープできたのは母親のおかげ。とても感謝しています」
「ケータイは未来だ!」ワクワク感を抱き、SFCへ進学
日本でポケベルが流行っていたころ、まだアメリカにいたg.O.R.iさん。当時アメリカではPalmタブレットという携帯情報端末が流行しており、非常に魅力を感じていた。
帰国後はPHS全盛期から、ケータイに主役が交代するタイミング。赤外線が付いたり、TVのリモコン代わりになったり、PCメールを受信できたりと、まさに破竹の勢いで機能が増えていった時代だった。
「ケータイを見て、“コレは未来だ!”とワクワクしたんです。それからは毎月のように携帯電話各社のパンフレットを持ち帰り、画像の解像度やカメラの性能などスペックを比較していました。当時有名だったケータイ系メディアを毎日欠かさず読んでいましたね」
ケータイへの情熱を持ち続けたまま学生時代を過ごし、iPhoneはもちろん3Gから購入した。
「gori.me」はApple関連のことをメインにしたブログメディアだが、原点はケータイだという。ケータイからiPhoneに、そこからさらに裾野を広げ、Apple、Androidとどんどん興味の対象が広がり、今に至る。
「やっぱりワクワク感に惹かれたんです。こんなに小さい端末なのに、いろんなことができる。それくらいテンションがアガるのがケータイでした」
大学は慶應義塾大学 環境情報学部(SFC)に進学。大学でもケータイへの情熱は冷めず、PHSの特許を持っている小檜山賢二さんの研究室に所属した。しかし、3年生のときに教授が勇退され、小川克彦さんの研究室へと引き継がれた。
この2つ目の研究室で叩き込まれた「ストーリーをしっかり伝える」ということは、今の仕事の中で最も重要な要素の1つになっている。
「ケータイはベースにありますが、あまり関係ない課題ばかりだったこともあり、ストーリー性と言われても意味がわからず文句ばかり言っていました。でも、“継続することの重要性”や、僕の仕事のスタイルやアウトプットの仕方において、すごく重要なことをたくさん教えていただいたので、今では小川先生にとても感謝しています」
新卒カードは絶対使え!――人に恵まれた会社員時代
就職活動では、もちろん携帯電話会社に応募。しかし内定には至らず、食品メーカーや化粧品会社など幅広く受けたというg.O.R.iさん。
新卒で入社したシーエー・モバイルとの出会いは、ゼミの先輩が前年に入社し「すごくいい会社だ」と言っていたのがキッカケだった。メーカー系を受けつつ、やはりケータイ関連の企業も多く受けていたg.O.R.iさんは、内定者向け懇親会の雰囲気が合っていると感じ、シーエー・モバイルへの入社を決めた。新卒同期は20数人。「クセモノ揃い」とg.O.R.iさんは笑うが、今でも非常に仲が良いという。
「よく“大学卒業後、すぐ独立したい”という相談を受けるんですが、いつも言っているのは“新卒カード”が使えるのは一生に一度ということ。気は進まないかもしれないけれど、そこでの出会いが何か将来につながるかもしれませんから」
実際、g.O.R.iさんは同期が立ち上げた会社に取材に行ったり、記事広告を受けたりしている。
会社ではいくつかの部署を経験しているg.O.R.iさんだが、女性向けサービスを担当するよう言われたときは、なぜ自分が担当なのかとまどったという。
そのチームのメンバーは女性ばかり。家庭のあるメンバーもいるので早く帰してあげたい。
そう思ったg.O.R.iさんは、彼女たちの仕事を代わりに引き受けるようになり、その結果メンバーは早く帰れるし、仕事も早く進むことになり、評価されるようになった。
「この部署で初めて“プロ意識”が芽生えた」というg.O.R.iさん。チームのメンバーや、当時から慕っていた2つ上の先輩、上司などとは今でも連絡を取り合っている。
女性ではないから、女性寄りの企画を出すのは難しい。でも、その女性向けメディアを支えることはできるのだと気づくことで、仕事がどんどん楽しくなっていった。
「会社ではすごく人に恵まれました。チームのことが大好きで、“やりがい”ってこういうことだなと思いましたね。どんなに嫌な仕事でも、チームのためと思えば頑張れたんです」
会社員ブロガーは最強! 睡眠時間を削っても、1日5〜6記事を更新
入社半年後に、現在のドメイン「gori.me」を取得したg.O.R.iさん。それ以前は、はてなダイアリーで日記ブログを書いていた。
「大学時代、松村太郎さんが非常勤講師で来てくださったことがありました。彼は“tarosite.net”というドメインを持って文章を書いていて、憧れていたんです。何かのブログサービスの下ではなく、インターネット上に自分の住所(=ドメイン)があるってカッコいい!と思って、今のドメインを取得しました」
仕事も忙しかったが、会社員時代にも1日5〜6本は記事を更新していたg.O.R.iさん。朝6時に起き、9時頃まで執筆。10時に出社し、外でランチを食べない日は昼休みにも1〜2記事執筆し。21時過ぎに帰宅して2〜4本書き、翌朝の記事のストックも書いて、さらにランニングに出かけていたというから驚きだ。
当時はApple関連の記事だけでなく、ランチなどグルメ情報も掲載していた。渋谷で働いていたため、ランチなどオススメの店を聞かれる機会が増えたg.O.R.iさん。毎回調べて回答するのが面倒だったため、「書いたほうが早いな」と会社周辺のランチに同僚と出かけまくり、それを記事化していった。
「“渋谷 ランチ”と“渋谷 桜ヶ丘 ランチ”という検索ワードで上位を狙いにいきました。僕がブログを書いていることはみんな知っていたので、自分以外のメニューの写真を撮らせてくれて、すごくありがたかったですね」
Webの情報を読む人の約8割は会社員と仮定すると、会社員の視点に立った記事を書くことは非常に重要になる。
たとえば、通勤中にオススメのヘッドホンについて記事を書く際、フリーランスの人はわざわざ通勤ラッシュ時に出かけて検証することになるが、会社員であれば日々の通勤時間で確認できる。
「会社員の目線を自然に持つことができて、しかも社会保険料を半分払ってもらえて保障もしっかりしている。会社員はブログをやる上ですごく強いんです」
毎日0〜1時には就寝――独立しても規則正しい生活を
会社員でブログをやるのは最強と思いつつ、2014年に独立。キッカケは、所属していた部署が親会社に吸収されることだった。
そのまま在籍して新規事業をやるのも良かったが、父親には「独立するならリスクの少ない30歳までに」と言われ、多大な影響を受けた研究室の教授は「3年間は仕事を続けるように」と言っていたことを思い出した。
当時ちょうど27歳だったため、まずアクセス数と収益の目標を設定し、半年間その目標を1度でも下回ったら、まだ力不足ということで独立は思いとどまろうと決めた。
結果、無事クリアできたため、1回チャレンジしてみようと思い独立を果たしたが、辞める直前にはすでに100万PVを超えていた。
「時事性のあるネタを取り上げていたので、それだけ瞬発力のあるネタを取り扱っているのに読まれないということは、素質がないということ。いくら続けても読まれません。だから意地でも100万PVはキープしようと思いました」
フリーランスになったばかりの頃は1日中ブログを書いていたという。辞めた直後こそ不安な気持ちになることもあったが、会社員時代にも土日にブログを書き続けていた日もあったため、土日と同じように過ごそうと決めた。
海外の情報を取り上げることが多いため、情報を追い続けると夜更かししてしまう。朝にも新しい情報が入るかもしれない。つい不規則な生活になりがちだが、最近は寝る時間・起きる時間を一定にし、睡眠時間も6〜7時間は確保している。
就寝は毎日0:00〜1:00。朝は6:30〜7:00にアラームをセット。朝から仕事をして昼食をとり、午後も少しだけ仕事をした後はジムに行ったり、娘と遊んだり、夕食をとったりと、少しゆったりと時間を過ごしているという。
「寝る時間と起きる時間が決まったのは大きいですね。結婚してから妻に生活を整えるように言われ、食生活にも気をつけるようになりました。もともとバランス良く食べることを心がけていましたが、妻が栄養バランスを考えて食事を作ってくれるので、とても感謝しています」
ワークライフバランスを変えつつ、情熱をもって「gori.me」を継続していく
「gori.me」で取り上げるのは、自分が書きたいと思うこと、かつ日本語でも読みたいと思うこと。Appleに関連するものを軸にするのは開設当初から変わっていないが、Appleに関係なくても、自分が興味のあるものであればグルメ記事や旅行の備忘録も取り上げる。
gori.meはニュース系の内容も含むが、ニュースメディアはあまり主観を出してはいけないという風潮がある。海外の報道番組では、キャスターがニュースに対する感想を述べることが普通だが、日本ではコメンテーターが多少コメントする程度だ。
g.O.R.iさんは海外の報道番組のほうが人間味があって好きだと思っていた。自分に興味関心をもっている人たちが来るといブログ的な側面を持ちつつ、ニュースを扱うメディアとしてうまくバランスを取るようにしている。いわば、ブログメディアは“ブログとメディアのいいとこ取り”だという。
本当に書くこと自体が好きで、書くことによって対象に興味がわくこともある。仮想通貨はまさにその例だ。自分はあまり興味がなかったものの、ニュースを書けば興味がわいてくるはずだと書き始めた。
単にニュースを読むだけでは「ふーん」で終わることも、噛み砕いて他人に伝えようと思うと、時間はかかるものの、自らも知識を得ることができる。書けば書くほど知識が身につき、ざっくり読むより自信を持ってその話題について話せるのだとg.O.R.iさんは言う。
「ブログメディア運営者」という肩書きを付けてはいるが、あまりこだわりはない。「プロブロガー」は自分の体験や経験を、自己主張を強めに出しながら書くイメージがある。しかしg.O.R.iさんのやっていることはそれだけではないため、「ブログメディア運営者」と名乗っている。
昨年子どもが産まれ、ワークとライフのバランスが変わりつつあるとg.O.R.iさんはいう。
「これから娘が大きくなってきたら、学校行事にも参加したいし、突然体調を崩すこともあるはず。妻の妊娠がわかったときから、今後5年くらいで働き方を変えなければならないと考えていました」
子どもが大きくなってから後悔しても、時間は取り戻せない。小さい頃に触れ合う時間が大事だと先輩たちから聞いているので、書斎ではなくリビングで仕事をする時間も意識的に増やしているという。
ニュースを追い続けるというスタンスは変えないが、今後は時事ネタ以外にも長く読まれるような質の高いコンテンツを定期的に更新していくつもりだ。
「やっぱり文章を書くことはすごく楽しいし、編集や写真撮影などいろんなスキルが身につき、いろんな人と交流できる。ブログが大好きなので、どんな形であろうとずっと続けていくつもりです」
最近はレビュー記事や動画にも力を入れているg.O.R.iさん。今後も着実に記事を積み重ね、さらなる飛躍を目指す。
文:筒井智子 写真:小澤亮
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