秋田・なまはげ柴灯(せど)まつりでなまはげ文化に触れる
写真提供/男鹿なび
「泣く子はいねが~!」と家々を練り歩き、子どもたちを恐怖のどん底に突き落とす“なまはげ”。この民俗行事のことをご存じない方はいないでしょう。
本場・秋田県男鹿半島では大みそかに行われている「なまはげ」ですが、こちらは地域の方のための行事で、観光客の参加はなかなかハードルが高いのが現状。
代わりに「本場でなまはげを体験できる」イベントとして、毎年2月第2金曜~日曜に「なまはげ柴灯まつり」が開催されています。
この祭りをより楽しむための情報を求めて、男鹿半島へ向かいました!
なまはげゆかりの地「真山神社」へ
JR東京駅から秋田新幹線に乗り込み約4時間、まずはJR秋田駅へ。JR男鹿線に乗り換え、約1時間でJR男鹿駅に到着です。
男鹿駅で降りると、早くもあちこちになまはげが!
男鹿半島を回るには、レンタカーを借りるのが一般的。ただし、冬は道が凍結することが多く、雪道に慣れていないドライバーには危険が伴います。そんなとき力になってくれるのが、男鹿半島の観光スポットを回る相乗りタクシー「なまはげシャトル」。
こちらが「なまはげシャトル」。前日までの予約が必要です
男鹿駅から乗り込み、約20分で、なまはげのふるさとである真山地区へ。
まずはこの地区の氏神さまである真山神社にお参りします。
真山神社は男鹿の信仰世界の中心となる古社
「なまはげ柴灯まつり」は900年以上前から真山神社で行われている神事「柴灯祭(さいとうさい)」と、なまはげを組み合わせた観光行事として、1964年に始まりました。今では男鹿の人々にとって、大みそかのなまはげ行事と並んで大切な祭りとなっています。
「なまはげ柴灯まつり」の際には松明(たいまつ)を持ったなまはげたちが、この石段を下りてきます
神楽の奉納や、なまはげ行事の再現のほか、なまはげ踊りやなまはげ太鼓といった観光客向けのイベントも披露されます。その迫力はかなりのもので、近年は海外からの観光客からも人気を集めているとか。
(写真提供/男鹿なび)
15体のなまはげが山から下りてくるのが「なまはげ柴灯まつり」最大の見せ場(写真提供/男鹿なび)
お話を伺った宮司の武内信彦さんは、秋田県における日本海域文化の情報発信を行う「日本海域文化研究所」理事長でもあります。
真山神社の前にたたずむ武内信彦宮司
「なまはげを“子どもたちを懲らしめる鬼”と考えている方も多いですが、実は海と山の幸をもたらし、災害や病気などの災いを防いでくれる存在なんです。真山・本山という男鹿の象徴でもあるお山から下りてきて、人々に幸福をもたらしてくれる神さま。それがなまはげの本当の姿です」(武内さん)
男鹿の象徴である男鹿三山(真山、本山、毛無山)
「自然への感謝や祈りが本来のなまはげの姿でした。だからこそ男鹿の人たちはお膳を出してなまはげを歓待するんです。『なまはげ柴灯まつり』をきっかけとして『なまはげは鬼ではない、悪いものではない』ということを知っていただきたいですね」(武内さん)
なまはげのことならなんでもわかる「なまはげ館」へ!
次に向かったのは真山神社から徒歩約5分の「なまはげ館」。なまはげに関する資料館で、なかでも実際に使用されていた150ものなまはげ面が展示されたコーナーは圧巻。一番古い面はなんと約300年前のものだとか。
地域によって異なるなまはげ面。場内には、なまはげたちのうめき声が……
なまはげに変身できるコーナーも。外国人観光客の方にも大人気だとか
「なまはげというと赤と青の面をかぶり、包丁と桶を持っている姿を想像すると思うんですが、地区によってずいぶん違うんです。そうした集落による違いや、なまはげの本当の背景を知っていただくというのが、本館の一番の目的です」。そう話すのは「なまはげ館」支配人の山本さん。
「なまはげ柴灯まつり」の期間中は、通常17時の閉館を21時まで延長しているそうなので、祭りと併せて訪れてみては?
「男鹿真山伝承館」で、なまはげ体験!
「なまはげ館」に隣接する「男鹿真山伝承館」では1日に数回、なまはげ行事が忠実に再現される「なまはげ習俗学習講座」が行われているとか。さっそくお邪魔してみましょう!
(12月~3月は土日祝日および12月31日、4月~11月は毎日開催)
待ち受ける参加者の前に、2体のなまはげが登場!
スタッフの説明に続き、部屋に2体のなまはげが荒々しく入ってきます。家の主人は荒れ狂うなまはげをなだめ、お膳と酒でもてなすのですが、秋田弁によるやりとりは、なんともユニーク。
「息子は宿題もやらないで、ゲームばっかりやってるらしいな。息子はどこだ!」
「いやー、なまはげさん。まずまず一杯……」
そんなやりとりに、観客から笑いが起こります。
家主となまはげのユーモラスな問答も見どころ
伝統ある男鹿温泉郷で男鹿グルメを味わう
なまはげ行事を体験したあとは「なまはげシャトル」で約15分の男鹿温泉郷へ。「なまはげの湯」をうたう「元湯 雄山閣」に宿泊します。
男鹿温泉郷の入り口には、巨大ななまはげが!
なまはげから湯が噴き出す大浴場も大迫力でした!
カワハギやワタリガニといった男鹿の味覚をふんだんに使った石焼料理が自慢
男鹿の冬を代表するハタハタ! ブリコと呼ばれる卵もたっぷり
里山カフェで、なまはげの「中の人」へインタビュー
翌日は再び「なまはげシャトル」に乗り、真山地区の入り口にたたずむ「里山のカフェ ににぎ」へ。こちらは田んぼに囲まれた古民家を改築する形で2012年にオープンした、なんとも雰囲気のあるカフェです。
「鈴木金栄堂」の生チョコと「こおひい工房 珈音」の自家焙煎コーヒー。どちらも男鹿の隠れた一品
店主の猿田真さんは、真山地区のなまはげ行事の担い手でもあります。毎年大みそかになるとなまはげの面をかぶり、家々を回るほか、「なまはげ柴灯まつり」にも毎年参加しているそう。
「ににぎ」の猿田さん
「『なまはげ柴灯まつり』では雪の降るなか、松明を持って下山するなまはげの姿がとても幻想的なんですよ。柴灯火の周りは暖かいですが、それ以外はとても寒いので、温かい格好でいらしてください」(猿田さん)
横ではしゃいでいた息子さんに、猿田さんは「こら、なまはげさんに怒ってもらうぞ!」とひと言。すると、息子さんは突然神妙な顔つきに。なまはげが今も男鹿の生活の一部となっていることを実感させられるワンシーンでした。
帰りは男鹿駅から秋田駅経由で東京へ。男鹿線に揺られながら、今回の取材で伺った話を思い起こすと、なまはげは男鹿の生活とは切り離すことのできないものであることを実感しています。男鹿の冬の風物詩「なまはげ柴灯まつり」をきっかけとして、なまはげの本当の姿と男鹿の魅力に、ぜひ触れてみてください!
秋田・なまはげ柴灯(せど)まつりでなまはげ文化に触れるは旅するメディア びゅうたびで公開された投稿です。
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