もはや嫌がらせ…残念な「営業メール」に足りないのは“●●●目線”
成果の出にくい営業メールの主語は「I目線」
「お客様やクライアントに営業メールを送っても、なかなか成約や購入につながりません」「問い合わせや相談すらありません」と頭を抱えている人が少なくありません。成果が出ない営業メールに見受けられるのは、相手(お客様)にとって魅力的なメリットが示されていない、という共通点です。
・弊社が総力を挙げて開発した商品です。
・弊社が自信をもっておすすめするサービスです。
・気鋭デザイナーによる渾身のデザインです。
・他社に負けないクオリティを実現しました。
・信頼と安心のサービスです。
・弊社のロングセラー商品がさらに進化しました。
これらは、すべて主語が「I目線(自社目線)」の文章です。つまり、暗に「わたしたちの商品・サービスはすごいんです!」と自慢しているのです。
もちろん、「I目線」の文章を書いてはいけない、ということではありません。何事も言語化しなければ伝わりません。自社商品(サービス)のアピールも、営業メールを構成するパーツのひとつであることは確かです。
しかし、営業メールの文章に盛り込む内容のほとんどが「I目線」だとしたら、残念ながら、成約や購入にはつながりにくいはずです。それどころか「売り込みメールがうるさい」と相手に距離を置かれてしまうかもしれません。人は「欲しいものや必要なもの」を買いたいのであって、「すすめられたもの」や「押し付けられたもの」を買いたいわけではありません。
「YOU目線」のベネフィットで成約・購入率を高める
営業メールで成果を出すために必要なのは「ベネフィット」です。ベネフィットとは、お客様(消費者、ユーザー、クライアントなど)が、その商品・サービスから得られる「恩恵」や「利益」のことです。もっとざっくり言えば、その商品・サービスから得られる「何かいいこと」「とってもいいこと」です。ベネフィットを語ることき、その主語はおのずと「YOU目線(お客様目線)」になります。
営業メールでは、商品の自慢やアピールのみならず、どれだけ魅力的なベネフィットを提示できるかが勝負です。
【営業メール】
さて、本日は、弊社が満を持してリリースする
最新ソフト「毛筆Graphic」をお使いいただきたく、
ご連絡いたしました。
精鋭のクリエーターが試行錯誤を重ねて開発したツールです。
そのクオリティは保証します。
ご検討のほどよろしくお願いいたします。
「満を持してリリースする」「精鋭のクリエーターが試行錯誤を重ね」「クオリティは保証」などと自信をのぞかせる言葉が並ぶ一方、「YOU目線」のベネフィットがまったく盛り込まれていません。これでは、購入意欲はおろか、商品への興味もわきません。
【修正文】
さて、本日は、貴社クリエイティブチームの生産性を高める
最新ソフト「毛筆Graphic」をご案内したく、ご連絡いたしました。
精鋭のクリエーターが試行錯誤を重ねて開発した本ツールは、
以下3つのメリットを貴社にご提供します。
【①表現力アップ】
実際の筆描きとなんら変わらない繊細なタッチを実現します。
また、毛質(弾力性や硬さ、長さなど)の組み合わせは100種類以上。
あらゆる筆文字デザインに対応します。
【②強力なビジネス展開力】
今年のトレンドでもある「和風販促物」と抜群の相性を誇ります。
カタログからリーフレット、名刺、POP、各種パッケージまで、
さまざまな筆文字デザインを貴社クライアントにご提案いただけます。
【③スピードアップ】
従来ソフトとの比較で、平均2.5倍の作業スピード向上を実現します。
価格面では競合品より割高ながら、
現時点で「毛筆Graphic」の再現力を超えるソフトは皆無と自負しております。
誠に勝手ながら、商品資料を添付しております。
お目通しいただければ幸いです。
なお、ご興味があるようでしたら、すぐにサンプルを手配いたします。
<以下省略>
原文と比べたとき、その差は一目瞭然ではないでしょうか。「YOU目線」ベネフィットを盛り込み、この商品がどれだけ相手の役に立つかを示しています。最後に添えた「サンプルを手配いたします」も、「YOU目線」のオファーです(その裏側で表現されているのはメーカーの自信です)。修正文のほうが、興味をもたれやすいのはもちろん、購入確率も圧倒的に高いはずです。
営業メールを書く前に、相手のニーズを把握しておこう
セールスする側がどれだけ自社の「優れた商品(サービス)」に自信をもっていても、メールの受け手が「自分(自社)にとってメリットがある」と感じなければ、残念ながら購入・成約にはつながりません。
もちろん、「YOU目線」のベネフィットを盛り込むためには、相手のニーズを事前にリサーチしておく必要があります。
・お金を払ってでも欲しいと思っていること(もの)は何か?
・どんな悩みや課題を解決したいと思っているか?
・どんな不安や不満を解消したいと思っているか?
・どんなこと(もの)に興味・関心をもっているのか?
相手のニーズを把握するためには、ふだんから相手と会話(雑談)をしたり、相談に乗ったり、メールや電話でやり取りしたりながら、少しずつ答え集めをしていく必要があります。そのメールに何を書けば、相手は身を乗り出して読んでくれるでしょうか?想像や勘に頼るのではなく、確実にその“ココロ”をつかんでおく必要があります。
相手のニーズを把握して、大喜びさせるメールを書こう
営業メールは、あなたが思いを寄せる相手に贈る「プレゼント」と同じです。相手が興味のないものを贈っても、喜んでもらえませんが、相手が欲しくてたまらいものを贈ってあげれば、きっと目を輝かせて大喜びしてくれるでしょう。
もっとも、久しぶりに届いた連絡が「営業メール」だとしたら、相手が身構えるのもムリはありません。対面であれメールであれ、大事なのは信頼関係です。営業メールを送る前段として、ふだんから積極的にコミュニケーションを図って相手との信頼関係を構築しておけば、営業メールの効果はより高まります。「信頼関係の構築→YOU目線の営業メール」が最強と心得ておきましょう。
著者:山口拓朗
『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』著者。
伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)他がある。
山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/
関連記事リンク(外部サイト)
“生産性向上”のために…パソコンの「フォルダ」整理整頓術
悪い情報の伝え方で株を「上げる人」と「下げる人」の違い
今年こそ、「残念なTOEIC対策」から卒業しよう
ビジネスパーソンのための、キャリアとビジネスのニュース・コラムサイト。 キャリア構築やスキルアップに役立つコンテンツを配信中!ビジネスパーソンの成長を応援します。
ウェブサイト: http://next.rikunabi.com/journal/
TwitterID: rikunabinext
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。