「好きなことを突き詰めると何らかの形で仕事につながる」自ら走るスポーツジャーナリスト・橋本謙司

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橋本謙司さん 橋本謙司さん

自分のやりたいことを仕事にしたい。誰もが持つそんな思いを実現している社会人は、何を考え、何を経験し、目標を叶えてきたんだろう。インタビューを通して「バイトで学んだことがその後のキャリアにどう役立ったか」「人生の岐路に立ったとき、どんなモノサシで自分の道を決めたのか」を聞いてきました。

今回紹介するのは、スポーツジャーナリスト・橋本謙司さん(33歳)。自転車やランニングを中心にライティングや撮影を手掛けていますが、世界選手権への出場経験もある強豪市民アスリートとしての顔も持っています。なぜ彼は「走るジャーナリスト」であり続けているのでしょうか。

 

走って、撮って、文字にする。現役アスリートだからできること

橋本謙司さん

――いまのお仕事について教えてください。

スポーツジャーナリストとして、ライティング、編集、撮影などを手掛けています。スポーツ自転車やランニングが中心で、国内外のレースのレポート、新モデルの自転車の評論やトレーニング法の解説など、市民アスリート向けのメディアで仕事をすることが多いですね。

――ご自身も輝かしい成績を残している強豪市民アスリートです。

いえいえ(笑)。小さいころから走ることが好きで、中高と陸上部で中長距離をやっていたんですが、高校1年生のときに故障でやむなく退部。それ以来、「高校生市民ランナー」として自分のペースでランニングを楽しむようになりました。自転車を始めたのも大学時代のサークル仲間の誘いでロードバイクを購入したのがきっかけで、マイペースでやってきました。日々の努力の積み重ねが表彰台や記録更新という結果になって現れるのが楽しくて、今日まで続けています。

――ライティングや撮影、編集を一手に手掛けているのはなぜですか?

読者の目線を大切にするためです。たとえば雑誌なら、編集者・ライター・カメラマンが分業をして効率よくページをつくることが多いです。でも私の場合は、自分が見聞きしたことをそのまま読者に伝えたいという思いがあるので、あえて自分一人でやっています。レースの取材では自分で出場することが多いですし、自転車の評論やトレーニングに関しても必ず自分で乗って、実践したことをもとに執筆しています。読み手は市民アスリートですから、忙しい仕事の合間を縫ってトレーニングして競技力を高めているわけです。私が同じ立場でいることは、読み手にとっての安心材料になります。

 

その後を決定づけた、スポーツ番組制作のバイト

橋本謙司さん

――いまの仕事を選んだきっかけが、学生時代のバイトにあるようですね。

そうなんです。大学2年の時、箱根駅伝のテレビ中継の制作に関わることになりました。所属していたランニング同好会の先輩から引き継いだバイトだったんですが、小さいときから「箱根フリーク」だった私には願ってもない仕事でした。

秋の予選会で選手に取材をしたり、出場校・選手の記録などの情報を事前にまとめ、当日の中継に生かすというものです。番組のディレクターやアナウンサーとやりとりをしながら、中継の手助けをしていました。とくに中継直前の大晦日に行ったリハーサルは緊張しました。1区から10区までの展開をある程度予測しながら当日の中継車の動きを決める作業なのですが、レース展開の予想は私に一任されていたので重責に押しつぶされそうでしたね。

でもそれは、陸上経験をもとに取材を続けてきた私にしかできない仕事ですからすごくやりがいがありました。ちなみにその年は予想と全く違う大学が優勝を飾ってしまったのですが(笑)。その後も大学を卒業するまで、箱根だけでなくさまざまなスポーツ中継に関わりました。これがきっかけとなって、メディアの道を志すようになりました。

――その後、スポーツ雑誌の編集者を経て、フリーランスになられたのはなぜですか。

雑誌をつくっていたころから、自転車で走ったりランニングをして取材し、それをもとにページづくりを行う機会が多かったんです。スポーツ番組制作のバイトの時と同じように、自分の身体を動かして表現することに充実感がありました。やがて、フリーランスとして自己表現の幅をもっと広げたいという思いが芽生えていました。その気持ちを大切に、わりと不安感なくフリーランスになりました。実際は、1カ月まったく休みが取れないほど忙しくなりました(笑)。スケジュール管理など、自分をきちんとマネージメントしていくことがこれからの課題ですね。

 

市民スポーツを「文化」にするために

橋本謙司さん

――橋本さんの「表現」の先にあるものはなんですか。

市民スポーツの良さを伝え続けたいという気持ちが強いですね。それは、非日常を気軽に体感できること。自転車やランニングに取り組むことで、職場や家庭という日常からちょっと離れる。1日のわずかな時間でも、それが生活を充実させてくれます。そして、大会に向けてコツコツ練習して努力を重ね、自己ベスト更新という結果が出れば、大きな達成感を得られます。努力が報われるという経験は、仕事にも通じる部分がありますし、自分の成長につながります。そのことを発信し続けていきたいと思っています。

――マラソンやロードバイクを始める人が増えているそうですね。

たとえばマラソン完走人口はこの10年で増え続けています。自転車も、自治体がまちおこしでサイクリングロードを整備する動きが全国に広がるなど追い風が吹いています。これら市民スポーツが文化として日本に根付いていくかは、これからが勝負です。走るジャーナリストとして、その一翼を担っていきたいと思っています。

 

スポーツの力を伝える発信源めざして

橋本謙司さん

――新しいことにもチャレンジしているそうですね。

そうですね。とくに撮影の仕事ではスチール撮影が主だったのですが、動画にも挑戦しています。ランニングのテレビ番組で出演者と大会で伴走しながら動画を撮ったり、国内最大の自転車レース「ジャパンカップ」のカメラマンとしてレースのライブ配信をお手伝いさせて頂いたりしています。ゆくゆくは自前のWebコンテンツを立ち上げて、市民スポーツ情報の発信源をつくりたいと考えています。撮影技術や文章力、そして競技力もまだまだ磨いて成長を続けていきたいと思っています。

――やりたいことを仕事にするには、何が必要ですか。

私はたまたま好きなことを見つけられたので、ありがたいと思って取り組んでいます。もちろんうまくいかないことや悩むこともありますが、「好きなことだから」と思い返せば頑張れます。やはり、好きなことを突き詰めていけばどこかで広がりが出てくる。すぐに結果が出なくても、常に興味・関心を持ち続けていれば、何らかの形で仕事につながっていくはずです。

 

好きなことを突き詰めて、未来を拓く

 

高校生の時から市民アスリートとして好きなスポーツを自分のスタイルで楽しんできた橋本さん。その過程で出会ったスポーツ番組制作のバイトを通じ、メディアの世界に活路を見出しました。好きなことを突き詰めるぶれない姿勢で、自らの体験を表現する「走るジャーナリスト」としての道を拓き続けています。

  ■プロフィール

橋本謙司(はしもと けんじ)

1983年 千葉県生まれ。自転車雑誌「FUNRiDE」ランニング雑誌「ランナーズ」編集者を経てフリーに。数々の国内アマチュア自転車レースを制し、2016年には「UCIグランフォンド世界選手権」出場。フルマラソンでは2008年ヨロンマラソン優勝。ベストタイムは2時間36分。

 

(取材・執筆:佐藤史親)

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