生産性10倍に?!「シングルタスク」に切り替える方法
近年、複数のタスクを同時にこなす「マルチタスク」ではなく、一つのことに集中する「シングルタスク」に注目が集まっています。
「複数のタスクをこなしていかないととても仕事が終わらない!」という人もいるかもしれません。会議に出席しながらメールに返信したり、電話に応対しながら資料を作成したり…歩きながら必要な情報をスマホで検索する人も多いのではないでしょうか?
その現状に異を唱え、シングルタスクの有用性について語られているのが、書籍『SINGLE TASK 一点集中術 「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』。ハーバード、スタンフォード、MITなどの近年の膨大な研究成果を背景に、いま最も合理的に能率と生産性を高めると考えられる「一点集中」の方法を提示し、全米で話題となった本の日本語版です。
著者は、「マルチタスクとは、さまざまなタスクに対応して『常に気が散っている』状態であり、実際には役に立っていない。一つの作業に集中するシングルタスクは『結局、何もできなかった』という日をなくすものであり、マルチタスクをやめた瞬間、生産性は10倍になる」と説いています。
本書の中では、シングルタスクが効果的である理由、マルチタスクを止めシングルタスクに切り替える方法、シングルタスクを継続・定着させる方法などが紹介されていますが、今回は、シングルタスクに切り替える方法をいくつか抜粋し、ご紹介します。
余計な邪念に邪魔させない!「脳の環境」を整える方法
改めて言うと、「シングルタスク」とは、「一度に一つの作業に集中して生産性を最大化する」こと。
ハーバード大学の研究によると、「あたふたとせわしなく働いている社員たちは1日に500回も注意を向けるタスクを変えるが、能率の高い社員たちは注意を向けるタスクを変える回数が少ない」という結果が出ている。つまり、タスクからタスクへ注意を向ける矛先を切り替えるたびに生産性が下がるのだとか。
非効率なマルチタスクを止め、シングルタスクを推進するには、まず「脳が力を発揮できる最高の環境を作ることが大切」と著者は言う。そのための方法をいくつか紹介したい。
●「シンプルに考える」ための時間を毎日5分以上確保する
シングルタスクを行うには、「今の状況において、自分にとって最も大切なこと」を決める時間が重要。例えば散歩をしたり、机に向かって瞑想したりするなどして頭の中を整理しながら「一人でじっくり考え事をする時間」を決めるといい。最も大切なことが決まったら、それを責任持ってやり遂げればいい。
●煩雑な情報の中で1つにフォーカスするために「パーキングロット」を使う
パーキングロットとは駐車場のこと。もし、進行中の作業とは関係のないことが頭に浮かんだら、その考えをひとまず脇(=パーキングロット)に置き、後で時間ができたら対処する習慣を身につけよう。
例えば、会議中に議題とはあまり関係のない話題が上がった時、あとで話し合うためにポイントをボードの隅に記録しておくことがあるだろう。このように、頭に浮かんだことをノートなどにメモしておけば、脳に負担をかけずに記憶を管理することができる。
●デジタル機器をアナログ機器に変える
多くの現代人は、デバイスの利用をうまく自制できずにいる。スマホのメモ機能を見ようとしたのに新たなメールに気づいたり、調べ物をしようとしていたのにSNSを見てしまったり…そのままネットサーフィンに発展…というケースは少なくないはずだ。
アナログ機器に変えられるものは変える(著者はプレゼン中に使っていたスマホのタイマー機能を止め、昔ながらのストップウォッチに替えたとのこと)、電話やメール受信などどうしても必要なものは気が散らないようにミュートにするなどの工夫を。ミーティング中などはスマホをしまっておく、画面を下に向けて置くなども有効。閲覧したウェブサイトは用が済んだら閉じることも推奨している。
タスクをまとめ集中的に処理するための、行動管理方法
前述の「脳が力を発揮できる最高の環境を作る」以外に、著者は「全行動を1つずつにして、タスクをまとめ集中的に処理する」ことも勧めている。その方法も、いくつか抜粋し、紹介しよう。
●類似タスクをグループ分けし、まとめて同じ時間に処理する
「ある平均的な3日間」を抽出し、自分の作業を紙などに書き出してみよう。その中に、似たようなタスクがいくつかあるはず。それを類似タスクごとにグループ分けし、1日の同じ時間帯にまとめて片付ける予定を組もう。そうすれば、似たタイプのタスクに何度も時間を奪われて志向の流れを遮断されるのを防ぐことができる。
なお著者は、メール送信は「出社時」「昼休み前」「退社前」の20分×3回に制限することを勧めている。1日中、メールやメッセージに気が散っている人は多いはず。メール対応もまとめることで、やるべきことに集中することができる。
●積み上がった仕事は「1×10×1」システムで一気に解決する
それでも仕事が山盛りになってしまった場合には、まず「1つにつき1分間ほどで片づけられるタスク」に着手しよう。例えば、すぐに対応できるメールへの返信、会議依頼の承認など。次に、「10分以内で片づけられるタスク」を特定しよう。折り返しの電話などがそれにあたるだろう。
最後に残ったものは、「片づけるのにおそらく1時間以上かかるタスク」となる。こうしたタスクは、作業に取り組む時間を今後2、3日のスケジュールのどこかに予定として組み込むといい。
なお、これらの分類作業は、朝、ほかの雑事が降りかかって来ないうちにやってしまうことが肝心だ。
●1日2回、「空白タイム」をスケジュールに強制的に入れる
平日のスケジューリングの際には、毎日2回、アポや打ち合わせを入れない30分ほどの時間を設けよう。その時間に類似タスクをまとめて行ったり、予期せぬ出来事に対応したりすることができる。空白タイムを毎日設けるには強い意志が必要となるが、多忙を極める経営者でもこのシステムを活用している人は多い。「空白タイムには現実にアポが入っている」と考えるといいだろう。
シングルタスクを継続・定着させるため「オフ」もシングルタスカーに!
今回紹介したのはごく一部であり、シングルタスクの進め方のポイントは本書の中でさまざま紹介されています。また、これらの習慣を継続・定着させる方法も詳しく掲載されていますので、日々大量の仕事に翻弄され、マルチタスクに限界を感じている方は、手に取ってみてはいかがでしょうか?
なお、本書ではシングルタスクを継続するために、そして健康や対人関係を改善するために、「オフの時間もシングルタスク」を推奨しています。
「食事の間は食べることに意識を集中させれば満足度が高くなる」、「家族や友人と一緒にいるときにスマホを見ていると、目の前の相手に『あなたのことなどどうでもいいと思っている』というメッセージを送っているのと同じ」など、はっとさせられることが多いはず。
会社にいるときだけでなく、休日もなぜかせわしない、いろいろやりたいのに達成感なく休日が終わってしまう…という方にもお勧めの一冊です。
▲参考書籍:『SINGLE TASK 一点集中術 「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』/デボラ・ザック:著、栗木さつき:訳/ダイヤモンド社
EDIT&WRITING:伊藤理子
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