お正月は家族みんなで大作映画を楽しもう! 『トランスフォーマー/最後の騎士王』
(文=佐々木友輔/『キネマ旬報 2017年12月上旬特別号』より転載)
限界を超えていくマイケル・ベイの野心には脱帽
前作「トランスフォーマー/ロストエイジ」は悲痛な物語だった。人類に迫害されるトランスフォーマーが創造主に人生の理不尽を訴える、21世紀ハリウッドの『ヨブ記』だった。「我々はテクノロジーではない!」オプティマス・プライムの叫びに、お気楽な娯楽監督と見做されがちなマイケル・ベイが抱く切実なテーマ――人間と非人間の共存――が垣間見えた。
では「最後の騎士王」はどうか。序盤こそ暗いムードを引きずるが、次第にいつもの快活さを取り戻し、終盤はファンの期待に応えるスペクタクルの乱れ打ちとなる。ベイが得意とする平衡感覚の揺さぶり――高層ビルや宇宙船の傾きにより安定した足場を失い、滑り降り、しがみつくアクション――は惑星レベルにまでスケールを拡大し、地球とサイバトロン星の大地が折り重なる壮大な舞台が用意された。今どこに立っているかさえ分からなくなるほどの強烈な知覚体験。シリーズを重ねても尽きせぬアイデアを具現化し、限界を超えていくベイの野心には脱帽せざるを得ない。
人間と非人間の共存というテーマを継続
ただし今回も、人間と非人間の共存というテーマは継続している。特に忘れがたい印象を残すのが、廃品置き場での束の間の休息だ。トランスフォーマーたちが小突き合ったり軽口を叩いたり、人間と添い寝したりするこのシーンは、派手な戦闘だけが彼らの日常ではないと訴える。彼らを単なる兵器と見做す人類への、ささやかな抵抗となっている。
真摯なテーマを残しつつも、前作の悲痛さが払拭されたのは、「最後の騎士王」が〈帰還〉の物語だからだろう。ベイは「トランスフォーマー」シリーズ全体を〈行きて帰りし物語〉として設計した。地球上の神話や伝説が異世界への扉となり、「ロストエイジ」では創造主の存在が明かされ、「最後の騎士王」ではついにオプティマスが創造主と対面する。同作は、英雄が彼岸で得た宝を携えて此岸に帰還し、人間世界とトランスフォーマー世界の間に調和をもたらす、復路の旅の章に相当するのである。
オプティマスとバンブルビーの対決を最後の試練として、離散した仲間は再び集い、新たな旅の一歩を踏み出す。敵対していた人間も、所属を示すワッペンを捨ててトランスフォーマーとの共闘を選ぶ。種を超えたヒーローチームの結成。円卓の騎士伝説の参照が示すように、「最後の騎士王」は〈帰還〉の物語であると共に〈集結〉の物語であり、この点で、同時代の他のシネマティック・ユニバースの展開とも同期している。
「トランスフォーマー/最後の騎士王」
●2017年・アメリカ・カラー
●監督/マイケル・ベイ
●脚本/マット・ハロウェイ、アート・マーカム、ケン・ノーラン
●出演/マーク・ウォールバーグ、ローラ・ハドック、ジョシュ・デュアメル、ジョン・タトゥーロ、スタンリー・トゥッチ、イザベラ・モナー、 アンソニー・ホプキンス
●[本篇DISC]155分、16:9(ビスタサイズ他)、音声/Blu-ray(1)英語(ドルビーアトモス)(2)日本語(5.1ch ドルビーデジタル)、DVD(1)英語(5.1ch ドルビーデジタル)(2)日本語(5.1ch ドルビーデジタル)、字幕/英語・日本語
[特典DISC]95分、内容/神話の世界、破壊の創造:パッカード社の廃工場、昇進、廃品置き場の発見、イギリスでの撮影、モーターズ&マジック:キャラクター誕生秘話、未知なる風景:サイバトロン星、超大作映画の舞台裏[商品ラインナップ]
Blu-ray+DVD+特典Blu-ray(3枚組)3990円+税
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(執筆者: キネ旬の中の人) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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