「好きを仕事に」を副業で!買い物をサポートする「ファッションアテンダント」という働き方
「普段は百貨店で販売員をしているので、私の休みのタイミングに合わせていただくか、早番でしたら19時~21時までおつきあいできます」
「仕事が18時に終わるので梅田、難波、心斎橋であれば19時から2時間コースでおつきあいできます。 土日祝日休みなので1週間前くらいまでにオーダーいただければ調整できます」
「fashion attendant (ファッションアテンダント) 」というサービスがあります。
これは、洋服や靴、鞄、眼鏡などのアクセサリーの買い物につきあってくれる「ファッションが得意な人」をWeb上で気軽に探せるサービス。
利用希望者がサイトを訪問し、登録しているファッションアテンダントさんたちの細かいプロフィールやサービス提供できる時間帯・エリアなどの情報を見て、自分のニーズやフィーリングに合う人を指名。日程を相談し、一緒に買い物に行く、というものです。
登録しているアテンダントは現在200数十名。約3分の1がフリーランスや自営業で、約3分の2は会社に勤務している人だそうです。本業は、ファッション業界だけでなく、IT企業や人材企業など多彩。幅広い人が「ファッションが好きで、何らかの形で関わっていたい」と、アテンダントに登録しているのです。
いま女性に人気のサービス「ファッションアテンダント」とは?
サービスを運営する横路一樹さんは、ブランド古着屋の店舗経営やスタイリスト事務所の経営、Webマガジン編集長など、ファッション分野で10代後半から幅広く活動し、自身も映画のスタイリスト経験もある方。約3年前にこのサービスを立ち上げました。
横路さん「クライアントさんの5割は20~30代の女性。ニーズは多様で、『おしゃれな人に自分に似合う服を選んでほしい』『着こなしを教えてほしい』というのはもちろん、『一人での買い物はさびしい。好みや価値観が合う人とファッションの話をしながら買い物をもっと楽しみたい』という人も。また最近では、男性女性ともに、『婚活に向けて、異性に好印象を与えるファッションを見立ててほしい』というご依頼も増えています。プロのスタイリストに依頼するのはハードルが高いけれど、価値観の合う友達や憧れのお兄さんお姉さんに相談する感覚で、自分にはない視点でアドバイスをもらえる…というサービスを目指しました」
横路さんには、ユーザーが喜ぶサービスを提供するというだけでなく、アテンダントさんたちに対して「買い物経験とセンスという、目に見えない部分の価値をお金にしてあげたい」という想いもあります。
横路さん「ファッションの専門知識を学んでアパレル業界に入った方、接客が好きで百貨店やショップで販売経験を積んできた人、リスクを抱えブランドを立ち上げている方などが、十分な収入を得られていないという実情があります。そもそも業界の給与水準が低いですから。それでもファッションが好きでこだわりを持って取り組んでいる人たちに、副業的に、空き時間を使ったプラスアルファの収入を得られる手段を提供したいと思ったんです。実際、もともとアパレル会社で販売員をしていて、30代を目前にして体力面・キャリア構築面・収入面で限界を感じて他業界に転職したけれど、やっぱり好きなファッションに少しでも関わっていたい、培ってきた経験や知識を活かしたい…と登録する人が多いんです」
ファッションアテンダントサービスの料金は、登録者全員一律で、1時間コース:7500円、2時間コース:1万円、3時間コース:1万5000円。
横路さん「女性の場合は『体験』、最近でいわれる『コト消費』にお金をかけることに抵抗がありません。お花や料理などの習い事をするなど、その時間を楽しみながら自分を磨くことに自己投資するので、この金額でも受け入れられていますね」
IT企業に勤務しながら、副業でファッションのアドバイスを行う
アテンダント登録者のうち多くを占めるのは、会社員やフリーランスとしてファッション関連の仕事をしている人、あるいはもともとアパレル業界にいて、今は異業界で仕事をしている人。
しかし中には、保育士さん、外資系キャリアウーマン、編集者など、ファッションとはかけ離れた業種を本業としている人もいます。
山田さくらさん(30歳)は、慶應義塾大学を卒業後、大手外資系ITコンサルティング会社に入社。4年間弱、ITコンサルタント・ビジネスコンサルタントとして勤務した後、ビジネス系SNSサービスを展開する外資系企業に転職しました。転職先企業は副業が禁止されていない会社。そのタイミングで横路さんと出会い、アテンダントの仕事への誘いを受け、登録しました。
さくらさん「母がファッション好きで、幼いころから私は着せ替え人形状態(笑)。インポートものなど他の子とは違う服を着て、小学生ながら帽子を20個くらい持っていました。私自身もファッションが好きで、中学時代は流行を追いましたが、高校時代には人と違うファッションを好むようになりましたね。学生時代にはファッション誌やヘアメイク誌、CMなどでモデルのバイトもしました」
さくらさんを指名するユーザーは、同じIT業界の人やベンチャー企業の経営者だといいます。
さくらさん「ファッションのアドバイスって、ただおしゃれなものを着せればいいというものではなく、まずバックグラウンドを理解することが大切。その上で『この人はどんなことを考えているのだろう』と、対話を通じてその人の想いを探ります。何かしら共感できるものがあってこそ、お互いに楽しい時間を過ごせると思うんです。その点、IT業界の人や経営者の方々は、バックグランドが近いことで安心感を抱き、私を指名してくださるんだと思います。私としても、普段、お仕事で関わるIT業界の方々とはファッションの話なんてしないんですが、ファッションアテンダントという立場で普段とは違う視点で会話ができて、『こんなふうに思っているんだ』という発見がいろいろあって面白いですね。本業では得られない刺激があります」
さくらさんが現在勤務する会社は、自社の仕事以外の活動を推奨しているといいます。ボランティア活動をするための「ボランティア休暇」も設けられているとか。
さくらさん「会社以外の世界で、いろいろな人と交わることで、思考の幅も広がる…という考え方。実際、他の社員もセミナー講師を務めたり、NPOを支援したりと、社外で活動しています。私は『やりたい!』と思ったことは先送りにせず、すぐに実行に移すタイプ。その一つがファッションアテンダントなんです。他には、タヒチアンダンスも習っていて、せっかくやるなら極めたい。ショーダンサーとしても表に立てるレベルを目指します(笑)。生徒さんも募集中です!」
派遣社員として働きつつファッションアテンダントの副業を経て、独立起業を目指す
一方、会社にフルタイム勤務しながら、ファッションアテンダントの雑貨・インテリア分野で副業をスタートし、それを足掛かりに独立起業を目指す女性もいます。
(※2018年1月17日からは、インテリア、店舗内装、リノベーション、DIYをサポートする「インテリアDIYアテンダント」のサービスも本格スタート)
小倉由子さん(44歳)は、2児の母。大学でインテリアデザインを学び、マンションデベロッパーで造作家具の提案販売をしていましたが、25歳で結婚し、まもなく出産。5年間専業主婦として過ごしました。上の子が5歳、下の子が3歳のときに再就職を決意しましたが、インテリアの仕事は土日が中心のため断念。子育てと両立するため「派遣社員として銀行に勤務」という道を選びました。
しかし、長男が高校進学と同時に寮に入り、同時に夫が単身赴任に。中2の娘と2人きりになり、今までの家族中心の生活から突然に「自分の時間」が訪れ、「本当にやりたい仕事がしたい」と考えました。
小倉さん「もともと整理整頓が好きで、『断捨離』に興味を持ったので、お片づけを支援するプロの資格である『ライフオーガナイザー』の資格を取得しました。フリーランスで活動を始め、ブログ執筆とFacebookを連動させたり、女性起業家が集まる交流会に参加したりしたところ、依頼が入るようになりました。銀行での月~金フルタイム勤務を続けながら、土日にフリーの仕事をするようになったんです」
さらには「インテリアコーディネーター」の資格も取得。11年勤務した銀行を辞めて、現在はマンションの施工を行う会社で派遣のインテリアコーディネーターとして勤務し、休みの日にはフリーランスとしてお片付けサポートやインテリアアドバイスをしています。
そして、友人の紹介でファッションアテンダントサービスを知り、「インテリア分野も強化したい」という横路さんの誘いを受け、アテンダントとして登録しました。
小倉さん「引っ越しを機に不要なものを片づけ、新しい家具を購入するのをサポートしてほしい…といったご依頼をいただいています。家具・インテリア購入の相談をお受けすると、その人の服装を見て、『こういうテイストが好きかな』と思ったショップにご案内します」
今は、平日は派遣社員として勤務し、土日のほとんどはお片づけサポートやインテリアコーディネート、アテンダントの仕事のアポが入っているそうです。
小倉さん「丸1日のお休みはなかなかないけれど、苦痛ではないですね。土日に登山やサーフィンをして楽しむ人がいるように、私は趣味を楽しんでいる感覚です。これからは、『派遣』という立場を活用して、キッチン、照明、壁紙、家具など、インテリア分野のさまざまな専門企業で経験を積みたい。そうしてトータルで知識・スキルを高めた上で、いずれは完全に独立起業したいですね。アテンダントの活動を通じては、リピーターのお客様を増やしたり、1対1のコンサルティングスキルを磨いたりできれば、と思います」
――このファッションアテンダントサービスを運営する横路さんは、「厳しい目で独自審査をしているので、他のスキルシェアサービスと違い、誰もが登録できるわけではありません。でも、ファッションの知識やセンスだけでなくいろいろなバックグラウンドやこだわりを持った人が集まっているので、自分に合う求めている方が必ず見つかるはず」と言います。
近年、シェアリングエコノミー型サービスが活発化していますが、これはまさにその一例。今後も個人同士が価値観や志向でつながり、サービスを提供するスタイルが幅広い分野に波及していくでしょう。
「自分の趣味や特技を活かして副業」のチャンスがさらに広がりそうです。
●ファッションアテンダント 公式サイト
●山田さくら 公式プロフィール
https://www.linkedin.com/in/sakurayamada/
タヒチダンススクール Te Mana O Te Ra
https://www.temanaotera.net/
●住まいのダイエットカウンセラー おぐらよしこ ブログ
https://ameblo.jp/yoshiko1833/
EDIT&WRITING:青木典子 撮影:出島悠宇
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