作家がカメラで撮影する“意外なモノ”とは?―池井戸潤さんインタビュー(3)

作家がカメラで撮影する“意外なモノ”とは?―池井戸潤さんインタビュー(3)

出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』! 第45回となる今回は、新刊『七つの会議』(日本経済新聞出版社/刊)が好評の池井戸潤さんです。

 本作で池井戸さんが描いているのは、よくある大企業の子会社「東京建電」で起きた一件の不祥事に揺れる人間たちの姿。好成績をあげていた営業課の課長が突然パワハラで社内委員会に訴えられた。一体何が起きたのか? 謎が膨らむ前半と、平社員から親会社の社長まで点が線で結ばれていきながら謎が解けていく後半。全8話から成る本作は、手に汗握る一冊になっています。

 今回は池井戸さんへのインタビュー、最終回となる後編をお送りいたします。

■ 池井戸さんがカメラで撮影している“意外なモノ”とは?

―池井戸さんは人と会う時に、どういう部分を見ていらっしゃるのですか。

池井戸さん(以下敬称略) 「どういう人なのかな、というところですね。話す時は、どういう人なのか探るような質問が多いですね」

―今、池井戸さんは刊行ラッシュが続いていらっしゃいますが、今後どんな小説を書いていきたいと思いますか?

池井戸 「ミステリーに戻ろうかなと思っています。もともと僕は乱歩賞作家で、ミステリー小説からこの世界に入りましたし、今までの作品も実はミステリーやサスペンスの手法で書いているのですが、作品そのものもミステリーに戻りたいな、と」

―では、影響受けた作家さんはいらっしゃいますか?

池井戸 「うーん、特にいないです。本はすごく読んでいましたけれどね。ただ、エンタメもここまで来たのかと驚かされたのがジェフリー・ディーヴァーです。『エンプティー・チェア』とか、これを書くためにどのくらいの取材や知識が必要だったんだろうと思いました。また、小説には才覚で書く小説と、足で書く小説がありますが、圧倒的な知識や事実の積み重ねが背景にある小説に対する憧れはあります。それはただ単に取材をすれば書けるというものではないんですよ。そういうサスペンス小説はすごく面白い。フレデリック・フォーサイスの『ジャッカルの日』とかね。そういう小説をいつか書いてみたいですけれど、読者がついてきてくれるかなあ」

―このベストセラーズインタビューでは、3冊影響を受けた本をあげていただいているのですが、その3冊を選んでいただけますか?

池井戸 「まずは『エンプティー・チェア』でしょ。あとは『ジャッカルの日』。それと、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』ですかね。ああいうテイストの青春小説は最近受け入れられなくなってきているけれども、あって良いと思うし、ああいうのが面白いと思える余裕があるといいですよね」

―普段の池井戸さんについてお聞きしたいのですが、執筆時間はどのように取っていらっしゃいますか?

池井戸 「だいたい午前8時から12時まで、と考えています」

―では、ご趣味は?

池井戸 「ゴルフとか、最近やっていないけれどフライ・フィッシングとか、最近人に貸しちゃったけど、バイクとかね(笑)。あとはカメラですね」

―外に行って撮られているのですか?

池井戸 「そうですね。事務所の近所の写真を撮影したり。地面を撮ったりしていますよ。人が歩いている地面、そこをパシャっと。『flickr』という写真共有サイトにたくさんの地面をアップしています(笑)」

―最後に、このインタビューの読者の皆様に、小説の読みどころやメッセージをお願いします。

池井戸 「読者の皆さんが自分の生活とどこかでリンクするような小説を書いたつもりです。その部分を楽しんでもらいたいですね」

■ 取材後記

 丁寧に自分の小説に対する想いを語って下さった池井戸さん。小説に出てくる登場人物たちの動きや言葉が非常にリアルなので、どんな風にして人を分析しているんだろう、そして、池井戸さんは自分をどんな風に見ているんだろうと思いながらインタビューをさせていただきました。

 小説の読者からの反応を見て、「ここまで考えてくれていたのかと思うとすごく嬉しい」とおっしゃっていましたが、これからも読者が小説の人物たちを通して希望が持てるような小説を個人的に期待しています。

(新刊JP編集部/金井元貴)

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