イグノーベル賞受賞の著者による抱腹絶倒のサイエンス・ドキュメント
皆さんはイグノーベル賞ってご存じでしょうか? ノーベル賞のパロディとして1991年に創設された「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられる賞のこと。
このイグノーベル賞生物学賞を2016年に受賞したのが、今回ご紹介する本の著者トーマス・トウェイツさんです。授賞理由は「両手足に装着してヤギそっくりに歩くことのできる装具を製作して、ヤギの群れに交じって野山を放浪して過ごしたことに対して」というもの。この実験の数々を書き起こした抱腹絶倒のサイエンス・ドキュメントが本書『人間をお休みしてヤギになってみた結果』です。
それにしても、なぜ人間を休んでヤギになる必要が……? まずそこからして私たち常人には理解しがたいところですが、事情を聞くと少なからず共感できるところもあるかもしれません。
トーマスさんはイギリス・ロンドンに住むデザイナー。過去に大学院の卒業制作をまとめた著書『ゼロからトースターを作ってみた結果』が各国メディアで大きな話題となったものの、33歳になった今はたいした仕事もなく彼女に怒られるダメダメな日々を送っている。……ってどこの国でも、いつの時代でも、パッとしない自分に葛藤する若者っているものなんですね。
けれど、ここで普通とは異なる考え方を見せるのがトーマスさんのトーマスさんたる所以。「こういう人間特有の悩みっていうのを、数週間だけ消しちゃうって楽しそうじゃない?」「人間をお休みしちゃうってどうだろう?」「少しの間、動物になれたら、すごくない?」。こうしてトーマスさんは人間をお休みしてヤギになってみようと思い立ったワケです。
しかし、「ヤギになる」っていったいどうやって? まず彼がおこなったのは、きちんとした科学的根拠からヤギの思考・行動にアプローチすること。イギリスで最も優秀なヤギ行動学の博士として知られるアラン・マックエリゴット博士に話を聞きに行ったり、その結果、ロンドン大学ユニバーシティカレッジでTMS(経頭蓋磁気刺激)という脳へ刺激を与える実験を自分に与えてみたり。こうして着々とヤギへの知識を深めた結果、ヤギを解剖し草から栄養をとる装置を作り上げ、ヤギ同様の四足歩行できる装置の開発へと進んでいきます。
そうして、獣医科専門大学のロイヤル・ヴェテリナリー・カレッジのジョン・ハッチンソン教授や義肢装具士で動物学者でもあるサルフォード大学のグリーン・ヒース医師の協力のもと、ついに四足歩行できる脚の装置を完成させたトーマスさん。最終的に彼はヤギのごとくギャロップ歩行でスイスのアルプスを越えるというミッションに挑むことになります。
彼の挑戦は見事クリアできたのか。人間をお休みしてヤギになってみた結果、彼が見つけたものとは……? ときに呆れ、ときに爆笑してしまうトーマスさんの実験ドキュメント。その結末はぜひ皆さん、本書を読んで確かめてみてください。
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