世界トップシェアを誇る会社の“熱い”企業風土とは?
あまり名は知られていないけれど、世界でも最高峰の技術を持ち、技術立国ニッポンを支える企業があります。
その代表的な例といえば、日本触媒でしょう。
1941年、八谷泰造氏によって大阪にて創業された日本触媒(当時は「ヲサメ合成化學工業株式會社」)は、約70年にわたり、“技術の日本触媒”というべき研究能力の高さで注目を集めてきました。創業者・八谷氏のエピソードをつづった高杉良氏の経済小説『炎の経営者』(サンケイ出版/刊)は、出版から26年が経った現在でも多くのビジネスパーソンに支持を受けています。
そんな日本触媒の代表的な技術が「高級水性樹脂」。紙おむつの原材料で、世界トップシェアを誇ります。体積の1000倍もの水を吸収できることから、海外では砂漠の緑化活動において大きく貢献しています。
では、その日本触媒の原動力はどのようなところにあるのでしょうか。
ビジネス・ノンフィクションを数多く手がけてきたダイヤモンド・ビジネス企画とその編集長である岡田晴彦氏が、120人に及ぶ日本触媒の社員へのインタビューを通して、その実像に迫る『テクノアメニティ』(ダイヤモンド社/刊)。そこには、日本触媒の技術者たちの熱い奮闘の記録がつづられています。
日本触媒が辿ってきたこの70年は、終戦、高度成長期、バブル期、そして平成の大不況とまさに激動の時代でした。めまぐるしく移るトレンドとともに、熾烈な技術開発競争の火花を散らしてきたのです。
そんな中で、日本触媒は時代の流れを上手く取り込みながら、基礎化学品から機能性化学品へと徐々に発展し、ここぞという局面では惜しみなく資金を投じます。例えば、1959年に川崎造船所、1960年に姫路製造所を相次いで立ち上げたときには、当時の資本金の何倍ものお金を銀行から借りていますが、そこには「優れた技術があれば、将来必ず回収できる」という自社の研究開発に対する自信があったのです。
そうした自信に執念で応えるのが日本触媒で働く人たちです。
日本触媒には開発者たちの自社製品とものづくりに対する熱い想いが詰まった物語がたくさんあります。
独自の技術にこだわり「技術立社」を標榜する日本触媒は、情熱溢れる研究者たちが生み出す技術や製品の「種」に支えられています。しかし、どんなに素晴らしい「種」でも、それを製品という果実にしなければ意味はありません。実験室の中だけでなく、実際に製品を作り出す製造現場の力によっても支えられているといえるのです。
そして、そうした土壌を作るのが、時代の変化を見据えながら、新しい需要を次々と掘り起こしていった事業戦略の確かさや優れた経営判断です。
岡田氏は、日本触媒の社員へのインタビューを通して、どの現場でも笑顔が溢れていることを実感したといいます。
社員数は1900人。アメリカのダウ・ケミカルやドイツのBASFと比べたら規模は小さいですが、だからこそ、一人ひとりの社員に課せられる役割も大きくなります。そこから風通しがよい企業風土が生まれ、従業員たちが自社を愛する精神が定着しているのです。
「テクノアメニティ」とは日本触媒の企業理念のこと。
本書を通して描かれる日本の持つ技術力の高さや日本触媒という企業の実像からは、日本のビジネスの未来に可能性を感じることができるはずです。
(新刊JP編集部)
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