平安時代創業の茶舗「通圓(つうえん)」でランチ&お茶でほっこりしてきた【京都・宇治】

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みなさまこんにちは。メシ通レポーターのナガオヨウコです。

京都には、数百年年以上続く、老舗中の老舗がちらほらあります。

平穏で平和な今の時代でも、10年、20年とお店を続けていくのは大変ですよね。

なのに、数々の乱世の時代をくぐり、今もなお愛されるお店があるのです。

しかも、平安時代の1160年創業!

平清盛や後白河天皇の時代ですよ。

もー、なんというか、なんじゃそりゃなレベル。

場所は、京都・宇治市です。

観光地・宇治にある

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最寄駅は、京阪電鉄の宇治駅。JR宇治駅からは東へ徒歩で約7分。

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京阪宇治駅を降りると、宇治橋があります。

写真は南方面(上流)でして、川の左方向は宇治上神社、右方向は10円玉のデザインにもなっている平等院があります。どちらも世界遺産です。

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こちら「通圓茶屋」で出迎えてくださったのは、24代目当主の通円祐介さん。

わざとらしく抹茶ソフトを手にしていますが、はいそうです。私が持たせました。

なお、抹茶ソフトはテイクアウトで350円(店内ではほうじ茶付きで400円)。

濃厚すぎず、宇治抹茶の香りをいかしたソフトクリームです。観光客だけでなく、地元のファンもかなり多いそう。

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建物は、寛文12(1672)年に建てられたもの。

江戸時代の町家の遺構を残す、貴重な建物として京都府より文化財の指定を受けています。

場所は、宇治橋の東詰、つまり宇治橋の東側のたもと。

「通圓」は、もともとは、宇治橋の橋守として始まりました。

ここは、京都と奈良を結ぶ街道沿い。

朝に京都を出発するとこのあたりでお昼時になったため(徒歩ですからね)、茶屋としてお茶や軽食を振る舞うようになったそうです。

ということで、足利義政や豊臣秀吉、徳川家康や諸国大名が、こちらでお茶などを飲んだことが記録に残っているといいます。

江戸時代、宇治茶を江戸に運ぶ「茶壺道中」のスタート地はココ。

茶壺道中は、大名行列よりも権威が高いものだったそうで、街道で大名行列とかちあったときは、大名の方が道を譲らねばならなかったそう。

広辞苑にも店名が載っている!!

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なんとこちら「通圓」は、広辞苑に名前が載っています。

(うちの広辞苑は1994年の第四版四刷、古いです)

日本広しといえど、辞書に名前が載っている飲食店ってここだけかも……。

広辞苑のページの写真はお見せできないのですが、確かにこう書いてあります。

つうえん【通円】

①宇治橋のたもとにあったという茶屋の名。

②狂言の一。舞狂言。通円という茶坊主の亡霊が現れて、旅僧に弔いを頼み、宇治橋供養で茶を点死(たてじに)したことを語り舞う。

ーーぢゃや【通円茶屋】茶人通円が宇治橋の東詰で茶を売っていたという店。

(広辞苑 第四版)

ほ、ほんまやん……!!

長い歴史の証が店内に数々と……

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▲初代 通円の木像

広辞苑の【通円】②にも載っている、狂言「通円」を舞う、通円さんの像です。

アニメ「一休さん」でおなじみ、一休和尚の作。 念のため申し上げますと、一休さんは室町時代の臨済宗の僧ですよ。

室町時代、「通圓」の七代目が一休和尚と親交が深かったことから、こちらの木像が送られたそうです。

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茶つぼは、400〜500年前のもの。

明治時代、お茶の保管に木箱が使われるようになるまで、茶葉はつぼで保管されていました。

昔は、和紙に包んだ高級な茶葉を中心にし、安めのお茶で周囲を埋めるようにしてつぼに入れていたのだそう。

秋に向かっていい具合に熟成が進むようにするための工夫だったようです。

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▲宇治川の水を組むための釣瓶(つるべ)

豊臣秀吉が、千利休に作らせたものだそう。

伏見城でしばしば茶会を開いていた秀吉が好んだのは、天下の名水と呼ばれた宇治川の水。

「通圓」11代目が、宇治橋の三の間(13あった橋脚のうち、西側から数えて3番目)から水をくむためにこの釣瓶(つるべ)を使ったのだとか。

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▲治承年間、つまりは創業当時(約800年前)、お店の土間で使われていたと思われる茶釜(下の台座は後年のもの)

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左は、伏見城の瓦。

どうですか、このお宝の数々。

お店の奥にさらっと置いてあるんですよ。もちろん、お店を訪れたら普通に見ることができるんですよ!

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大正8年5月、皇后陛下がお店を訪れ、商品をお買い上げされたという木札(というのかな)です。

ああ、すべてが神々しい。

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24代目 通円さんは、全国茶審査技術競技大会で全国6段、京都では初段の免状を持っています。

全国大会では、筆記試験はナシ。

実技で正答8割を取ると、6段の段位がもらえます。

どんな試験かというと……

・10種のお茶の産地を当てる

※見て、触って、匂うのみ。試飲はナシ

・器に4グラムの茶葉にお湯を入れ、香りのみで品種を当てる

※7種の品種の中から5種を当てる

……って、飲まへんのかい!!

実際に試飲する「茶香服(ちゃかぶき)」というのもあるのですが、見た目と香りだけで品種を当てちゃうってなかなかスゴいですよね。

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「通圓」の店舗はココ・宇治のみ。支店はありませんし、デパートや駅ビルなどに出店もしていません。

これだけの老舗茶舗ですから、引き手あまたでしょうし、支店を出せば売り上げはガンガン上がると思うのですが……。

「茶葉の流通事情を考えると、取り扱い量が増えると、どうしても品質を妥協せざるを得ないんですよ。

自店でブレンドしているような大きな茶舗はまだしも、ウチの規模では毎年品質を保ちながら同じ銘柄のお茶を販売するというのは、難しいのです」(通円さん)

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ということで、「通圓」のお茶を求めるには、こちら宇治のお店を訪れるか、通販を利用するかのどちらかしかないというわけなのです。

茶店でランチ&お茶でほっこり

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では、隣の茶店をのぞいてみましょう。

「京都の中でも、老舗中の老舗」というと、ビビってしまうかもしれませんが、ご安心を。

茶そば880円〜、抹茶パフェ850円、グリーンティ480円など、気軽に味わえるメニューが中心ですよ。

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宇治川を眺めながら過ごせる席もあります。

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「秀吉や家康も、同じ景色を見たんだろうな」と、歴史ロマンいっぱいの妄想を広げちゃってもオッケーです!

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▲ざる茶そば(880円)

わたくし何度も食べたことがあるのですが、宇治らしいランチならこれですよ、これ。

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有機栽培の抹茶を練り込んだ、茶そばです。

キレのある茶そばで、喉ごしつるん。

シンプルだからこそ、そばそのもののうまさが光ります。鮮やかな緑色も、美しい。

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お供はほうじ茶でした。お茶屋さんのほうじ茶、香りが良くてぜいたく。大好きです。

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茶店で振舞われているほうじ茶は「うきふね」(200グラム入り・950円)

お土産としてもらった人や、自宅用に購入した人の多くがリピートする大人気のお茶。

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▲上抹茶とお菓子(840円)

せっかくなので、食後に宇治抹茶をいただくことに。

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抹茶は「満天」というかな〜り高級なものを使用。

なんと、30グラム 4,320円!!

30グラムで15杯分飲める計算ですので、自宅でたてるとすると1杯あたり288円となります。うわ……高級!!

プロがたてたお抹茶は、香りが高く、たおやかでクリーミーです。ああ、至福の時間。

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宇治といえば茶団子も!

お菓子は<茶団子・もなか・抹茶あんぱん・煎茶大福ぱん・抹茶パウンドケーキ>からひとつ選べます。が、お客さんの9割がオーダーするのが茶団子。

宇治といえば茶団子ですから!

宇治の会社の人たちの手土産の定番といえば茶団子。宇治の子どもたちは、今でもおやつに茶団子を食べているそう。

茶団子はそもそも、観光客向けのおやつではなく、地元密着型のおやつだったんですね。

なお、茶団子はお持ち帰り用として10本 540円で販売されていますよ。

老舗すぎるにも程がある「通圓」は、歴史好き、抹茶フリークはもちろん、「そういうの興味なかったんだけど」という方にも訪れてほしいお店です。

なんだかスゴいものを、あまりにも気軽に楽しめてしまう衝撃を、ぜひ体感していただきたいです。

お店情報

通圓茶屋

住所:京都府宇治市宇治東内1

電話番号:0774-21-2243

営業時間:10:00~18:00(LO17:30)

定休日:無休

ウェブサイト:http://www.tsuentea.com/

www.hotpepper.jp

※この記事は2017年9月の情報です。

※金額はすべて消費税込です。

書いた人:ナガオヨウコ

ナガオヨウコ

ライター歴22年、京都在住のフリーライター。食、手芸、子育て、京都関連の雑誌や書籍、webに執筆中。10年間続けている自然農業の畑では、20~30種の野菜やハーブ、花を栽培。 ブログ:しましま畑でつかまえて

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