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文豪たちが愛したものから浮かび上がるライフスタイル

文豪たちが愛したものから浮かび上がるライフスタイル

 歴史に名を残した偉大な文豪たち。私たちは彼らの作品だけでなく人となりについてまで、どれほど知っているでしょうか?

 顔写真や著作から抱くイメージや、略歴から得る情報。それらもたしかに彼らを形成する要素ではありますが、一面的なものでしかありません。

 『文豪と暮らし 〜彼らが愛した物・食・場所〜』は、明治・大正・昭和に活躍した文豪たちの愛用品や好物、こだわりの場所に光を当て、その人物像に迫るというビジュアル書籍です。

 本書では文豪の愛した物・食・場所を3章立てで紹介。「文豪が愛した物」では作家の使った実物、「文豪が愛した味」ではおもに現代でも味わえるもの、「文豪が愛した場所」では私たちにも馴染みのある観光地を多く取り上げられています。

 たとえば明治の女流作家・樋口一葉。幼いころから学問に秀でた才女であり、貧しい境遇と格闘するかのように筆をふるった勝気な性格のイメージを持っている人も多いかもしれません。そんな彼女がどれだけ生活が困窮しても手放さなかったのが、薩摩七宝の紅入れ。9歳のときに一葉と別れ、のちに薩摩焼の絵付けの名手となった次兄の虎之助から贈られた逸品なのだとか。夭折の天才女流作家とはまた別の、ひとりの女性としての情の深い一面が浮かび上がってきます。

 また、『蟹工船』を代表作に持つプロレタリア文学作家・小林多喜二。治安維持法により一度は起訴されたものの、保釈された彼は神奈川県厚木にある七沢温泉「福元館」に向かいます。特高警察にばれれば自分たちまで逮捕されるかもしれない中、小林を受け入れかくまったという館主。警察が巡回に来たときも「お客様はおりません」と堂々とやり過ごしたそうで、このくだりはまるでドラマや映画の一場面を見ているかのよう。

 他にも、夏目漱石×ビスケット、萩原朔太郎×マンドリン、太宰治×黒マント、池波正太郎×ポークカツレツ、堀辰雄×軽井沢つるや旅館など、総勢47名の文豪と彼らの愛してやまなかった物や場所を本書では垣間見ることができます。

 特に食や場所に関しては、ガイドブック的な使い方もできそう。永井荷風が通いつめたという浅草の蕎麦処「尾張屋」や大阪生まれの織田作之助が愛した「自由軒」のライスカレー。谷崎潤一郎が名作『細雪』を執筆したとされる京都の宿「ぎおん森庄」、江戸川乱歩が『怪人二十面相』に登場させた東京ステーションホテル。今も実在するお店や宿ばかりなので、実際に自分の足でめぐってみるのも面白いのではないでしょうか。

 文豪たちの素顔をのぞくにはピッタリな一冊となっている本書。読後はきっと、彼らの作品もふたたび読み返してみたくなるにちがいありません。

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