北朝鮮の”衛星”打ち上げ 日本政府の発表まで40分以上かかった理由とは

左から、司会の増子瑞穂氏、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏、コリア国際研究所所長の朴斗鎮氏

 北朝鮮は2012年4月13日、かねてから予告していた”人工衛星”と称する物体の打ち上げに事実上失敗。同国の国営メディアも「発射失敗」を公式に報道するなど、北朝鮮国内では”異例”の事態が起こっている。同日夜のニコニコ生放送の特番では、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏とコリア国際研究所所長の朴斗鎮(パク・トジン)氏らにより、今回の一連の騒動が世界に与える影響と、今後の北朝鮮の動向についての議論が行われた。

■トラブルによる「自爆」の可能性も

 黒井氏によると、今回発射された”人工衛星”を搭載したとされているロケットは、アメリカなど西側諸国では『テポドン2号の改良型』と呼ばれているものであるという。

「基本的には中距離弾道(ミサイル)弾の部類に入るもので、弾頭の代わりに人工衛星(と称されるもの)を載せたため、軍事的には打ち上げ用のロケットである」

 また、朴氏によると、今回のロケット打ち上げには「数億ドル」もの巨額の費用が投入されており、「この金で食糧を買えば、(北朝鮮国民のうち)1500万人が1年間食べられる」という報道があったそうだ。

 しかしロケットは、打ち上げから約80秒後に海洋上に墜落したと見られている。これについて、黒井氏は、

「いろいろな解析を見てみないと分からないが、考えられることとしては、(三段式ロケットの)一段目の二段目の移行段階にトラブルがあり、自爆コマンドを押したのではないか」

との見方を示しつつも、元のロケットに引火して爆発したという可能性も含め、現段階では失敗の原因を特定することは難しいと話した。

■金正恩(キム・ジョンウン)体制に「大きな打撃」!?

 朴氏は、今回の北朝鮮による一連の軍事的挑発行動について、故・金正日(キム・ジョンイル)氏の「遺訓」とされている先軍政治・先軍路線(すべてにおいて軍事を優先する政治・考え方)が大きく影響しているのではないかと指摘する。朴氏は、

「『ミサイル』というのは、『核』とセットになったときに威力を発揮するもの。『ミサイル』を打ち上げ、成功させるということは、(金正日体制からの)政治路線の継承でもあり、『強盛大国』への新しい指導者(金正恩氏)をアピールする狙いがある」

と述べ、今回の”失敗”は、北朝鮮の現・金正恩体制にとって「非常に打撃が大きい」との認識を示した。また、同国の朝鮮中央通信が、”失敗”について初めて公式に報道したことも異例であるとし、故・金正日氏が日本人の拉致を正式に認め、謝罪した際の報道に匹敵する内容であるとの見解を述べた。

■「一番のミス」は日本の危機管理

 今回の衛星打ち上げについて、同日午前7時39分の発射直後、いち早くその事実を世界に公表した韓国、アメリカ両政府に対して、日本政府はそれらの情報を「未確認である」として当初は否定し、さらには発射事実の公式見解を発表するまでに40分以上の時間を費やした。

「日本政府の昔からのクセで、確認をしないと(事実を)言えない。中途半端な状況で言ったときに、あとで誰かが責任を問われることもあるため、完全に(事実が)確認されないと(発言が)できない」(黒井氏)

 また朴氏は、外交面からこの問題について言及し、

「(衛星が発射された)直後に情報を流すべきだった。韓国政府が(発射を)『確認された』と言っているのに、(日本政府は発射を)『確認されていない』ということになれば、米国、韓国、日本の連携は一体どうなっているのかということになり、(相互に)不信がうまれる」

と述べた。朴氏は、アメリカ・韓国と日本との間で情報共有が機能していなかったと指摘し、「一番のミステイクである」と日本政府の対応を酷評した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]黒田氏による衛星ロケットの解説から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv89093227?po=newsgetnews&ref=news#12:45

(内田智隆)

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