うわさの「玉ねぎヨーグルト」は本当にカラダにいいのか?聞いてきた

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ワニブックスから発売されたばかりの『玉ねぎヨーグルト』(著・井上裕美子/医学監修・木村郁夫)という本があります。

表紙を見ると「腸を整える」とか「やせる」「免疫力アップ」「便秘解消」などなどのうたい文句があり、とにかく健康にいいことずくめのようです。

実際のところ、どうなのでしょうか。

簡単! 「玉ねぎヨーグルト」のつくりかた

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① 玉ねぎ100gを写真のように繊維を断ち切る方向でスライスして

② 200gのヨーグルトと、小さじ半の塩と一緒に混ぜて

③ 冷蔵庫で一晩ならす

……たったこれだけ。

つまりスライス玉ねぎと塩とヨーグルトと混ぜたものなんです。

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意外な組み合わせながら、見た目はおいしそう。

で、どうするかっていうと、普段食べているものにちょっと混ぜたり乗せたりして一緒に食べるんだとか。

ドレッシングみたいなものなので、簡単な調味料としてちょい足しするわけです。

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こんなふうにトーストに乗せるくらいの簡単さでいいらしい。

理屈っぽい性格の筆者としては、健康食のメカニズムは知っておきたい。

そこで、医学監修の木村郁夫先生が筆者の家の近所にある東京農工大で准教授をなさっていることもあり、お話をうかがってきました!

「玉ねぎヨーグルト」は体にいい?

木村先生は腸内細菌がご専門です。

今回は、「ヨーグルトと食物繊維とを合わせて食べるとよい、とくに玉ねぎがよい」という理由と、おいしくて健康になるという理屈を教えていただきました。

── 木村先生、「玉ねぎヨーグルト」ってホントに効くんですか?

東京農工大学・木村郁夫先生(以下・木村先生):玉ねぎの食物繊維はフルクタンといってフルクトース(果糖)が連なった多糖になるんですね。食物繊維っていろいろあって、一般的な野菜、レタスやキャベツなんかに含まれる食物繊維はセルロースといいます。

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── まさかやせるはずの食物繊維が、甘くて太る「糖」でできているとは知りませんでした。

木村先生:デンプンや炭水化物も結合している糖なんですけど、ヒトの消化酵素で分解される。分解されたあとグルコースになって小腸で吸収されて、エネルギーとして利用されるんです。

食物繊維の糖は、ヒトの消化酵素では分解できないんですよ。だから小腸での分解を免れて大腸まで行くんですね。

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木村先生:ただし、腸内細菌が分解できるのはフルクタンのような水溶性食物繊維だけ。普通のレタスとかキャベツに入っている食物繊維のセルロースは、分解できないのでそのまま便として出ていくんです。

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木村先生:フルクタンのような水溶性の食物繊維は、大腸で腸内細菌が自分のエサとして食べるんですよね。自分の栄養分として利用するんです。

その残りカスとして、腸内細菌が最終的に代謝産物として作るものが、「短鎖脂肪酸」っていう物質なんですね。

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木村先生:その「短鎖脂肪酸」を、ヒトはエネルギーとして利用します。それ以外にも腸内や大腸から吸収することによって、免疫機能とか抗肥満化作用というものを発揮するんです。

難消化性の食物繊維が、科学的なメカニズムで、腸内細菌も関係して、「短鎖脂肪酸」となって、ヒトにとっていいものとなる。

ということから、食物繊維、これを取ったらいいのではないかと考えられているのです。特に玉ねぎに含まれるフルクタンは、ほかの食物繊維と比べても「短鎖脂肪酸」をよく作ってくれます。

── なぜ玉ねぎがいいのかというと、その「たんさしぼうさん」がたくさんできるからなんですね。

木村先生:フルクタンってビフィズス菌のエサになりやすいので、食物繊維のフルクタンを食べると、ビフィズス菌がお腹の中で増える。善玉菌が増えるということで、腸内フローラ自体の改善にもつながります。

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菌と菌のエサを一緒に取る「シンバイオティクス」とは

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▲キャベツとカニカマの塩昆布ヨーグルト

── 玉ねぎとヨーグルトを一緒に食べると、よりいいということなのでしょうか?

木村先生:プロバイオティクスとかプレバイオティクスってご存じですか。

プロバイオティクスは「菌自体を取って効果を出そう」ということですよね。ヨーグルトを食べようということ。

対して、「菌のエサになるものを取って、お腹の中の腸内フローラを整えて、健康になろう」というのがプレバイオティクスですね。例えば菌のエサになる食物繊維を食べる。

この「玉ねぎヨーグルト」のやり方だと、プレバイオティクスもプロバイオティクスも両方一気に取れる。これ両方合わせて「シンバイオティクス」っていうんですけど、その方法のひとつなんです。

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▲漬けまぐろのヨーグルト山かけ

── つまり、菌と、菌のエサを一緒に取る方法というワケですか。ふむふむ。その結果、やせる、免疫力アップ、便秘解消、と。この部分が、われわれが実感できる部分ということなんですね。

木村先生:「短鎖脂肪酸」の効果としてはそうなります。ヒトが食べた食物繊維を、腸内細菌が大腸の中で「短鎖脂肪酸」に変えてくれると。その「短鎖脂肪酸」が血中に吸収されて、全身の組織に行き渡っていく。

── 健康に効くのは、腸内細菌の食べカスである「たんさしぼうさん」なんですね。

木村先生:たとえば脂肪組織の「短鎖脂肪酸」の受容体を活性化して、脂肪の蓄積を抑えるとか。免疫細胞に作用して免疫力を高めたり、アレルギー抑制作用を示したりとか、これは科学的に証明されているんですよ。

つまり「短鎖脂肪酸」を「腸の中で増やす」のが健康のためにいいことなんだと。それにはどういう方法があるのというと、こういう種類の食物繊維を取るいうことなんですね。

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▲味噌ヨーグルト漬け豚ロースときのこのソテー

── ヒトは「たんさしぼうさん」が欲しい。そのためには腸内フローラ的なものが整った状態で、水溶性食物繊維を食べるのがいいということですね。

木村先生:それがフルクタンならビフィズス菌が増えやすいから、腸の中で善玉菌やビフィズス菌を狙って増やすことができるということになります。

生きたままの菌と胃酸の問題

── 質問があるのですが、生きた菌は胃酸を越えていくことができるのでしょうか。

木村先生:ものによりますね。たとえば芽胞を形成するような菌は胃酸の影響を受けないからそのまま通り抜けますね。酪酸菌とかね。ビフィズス菌にも強い菌と弱い菌がいますし(※芽胞:一部の細菌が形成する耐久性の高い特殊な細胞構造。熱、薬、乾燥などに耐えられる状態)。

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▲味噌汁に加えてもよい

木村先生:口から入れた新しい菌は腸に定着しないと言われていますし、菌よりも、エサとして食物繊維を取るほうが腸内細菌は増殖します。それで菌叢(きんそう)が変わるんですよ。

また、菌を生きたままエサになる食物繊維と一緒に入れることで、最終的にできる「短鎖脂肪酸」の量も増える可能性も充分にあると言えます。

── 食べたビフィズス菌がそのまま腸で生き続けると思ってました。

木村先生:あと、聞いたことがあるかもしれないですけど、プロバイオティクスの効果って菌が生きてなくても効くと。それは菌の成分を認識するような受容体というものがヒトにはあって、それが活性化するからなんですよ。

玉ねぎを焼いたら甘くなるじゃないですか。あれは分解されているからなんです

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▲ヨーグルトミートソーススパゲティ

── いろんなものにかけて食べるだけでいいとはいえ、組み合わせのタブーってありますか。

木村先生:菌だから焼いたりしたら死んでしまうし、玉ねぎも焼きすぎたら分解してしまいます。

玉ねぎを焼いたら甘くなるじゃないですか。あれは分解されているんです。食物繊維、フルクタンの状態だったら甘くない。でもフルクトースになったら糖ですから、当然甘いわけです。分解してしまったら小腸で吸収されてしまうんで。焼きすぎないほうがいいのではないですかね。

編集・森さん:この本のレシピでも、あまり加熱しないようにしてます。麻婆豆腐とかでも最後に入れるようにと。

ちなみに本書の編集・森さんがおいしかったものは「鶏肉の照り焼き」とのこと。

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▲ヨーグルト照り焼きチキン

編集・森さん:辛いものや味の濃いものは、味がマイルドになるのでよかったですね。麻婆豆腐とかキムチ。すっごく合います。

味噌汁は入れるだけですけど、なかなかいける味でした。納豆はチーズっぽくなる感じですね。

食べものは「病気を治す」というより「健康を維持する」もの

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▲ヨーグルト麻婆豆腐

木村先生:食品の重要なところって、毎日食べるものなんで、効果がすぐに出なくても毎日続けることによって健康につながる。

日常食べているものって、我々が活動するために食べるものじゃないですか。食べものって、病気を治すというより健康を維持するものなんですね。だからこそ、こういうものを食べて、自分が健康でい続ける、予防するということを一番に考える。そのために菌叢とかを整えていく。というのが大事じゃないかと思います。

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原稿執筆中の現在も、このメニューを試している最中です。

「玉ねぎヨーグルト」は薄く塩味が効いているので、汁飯が好きな者としてはごはんにかけても意外とイケます。

これを主食にしつつ、たくさんの種類のオカズも食べたら、便通もさることながら、けっこうな健康体に近づける気もします。

協力:東京農工大学 農学研究院 応用生命化学専攻 木村研究室

web.tuat.ac.jp 玉ねぎヨーグルト

玉ねぎヨーグルト 作者: 井上裕美子,木村郁夫 出版社/メーカー: ワニブックス 発売日: 2017/07/26 メディア: 単行本(ソフトカバー)

※この記事は2017年8月の情報です。

書いた人:鷲谷憲樹

鷲谷憲樹

フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。 Twitter:@nwashy

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