黒人少年は射殺された

CNNにチャンネルを合わせているとニュース速報が流れ出し、2月下旬にフロリダで17才の少年を射殺した男が逮捕されたとあった。逮捕の速報は夜であった。午前中にもニュース速報で、その時はまだ逮捕されていなかった男の弁護士2人が、その男との弁護士契約を破棄したことをカメラに向かって話していた。その時点で射殺した男が逮捕される予想がついた。負け試合を好まない弁護士がいち早く手を引くと、その夜にはもう男が逮捕という展開になった。

今、アメリカではひっきりなしにこの事件が報道されている。アメリカでもっともデリケートな問題の人種差別に係わる殺人事件だからだ。

今夜、ニュース速報にあったその男はジョージ・ジマーマン容疑者(28)で、日本語のニュースでは元自警団員とされている。英語で“neighbourhood watch volunteer”とあるが、聞きなれない言葉である。その元自警団の容疑者が、黒人のトレイボン・マーティンさん(17)と、本人の弁では“小競り合い”になり、正当防衛で銃によってまだ幼さを残す17歳を射殺したのだという。

今まで何人の黒人がこのように事件性もないのに射殺されてきたか。警察官ですら黒人には発砲する確率が異常に高いのである。黒人にとって未だにアメリカは不自由な国でもあるのだ。事実、この逆のケースは記憶の中ではない。黒人が事件性もない白人を射殺する……実際にはあるのかもしれないが私の知る限り聞いたことはない。

容疑者が、まだあどけなさの残る少年を射殺したことは正当防衛だと主張したことで、逮捕されていなかった事実が恐ろしい。
射殺された少年の家族や弁護士、また仲間たちが人を殺しておいて逮捕もされないことに声を上げ、また黒人差別問題に必ずと言って良いほど登場するアル・シャープトンという黒人指導者も動き出したことで、メディアに注目された。黒人差別問題に関しては誰かが声を上げてメディアで注目されないと、葬られる可能性が残念ながらありうるのだ。

罪なき黒人が銃で殺害される度に、その母親が憔悴(しょうすい)しきった姿で、取り乱してインタビューを受けるのを見るのは胸が痛む。

ヒスパニック系白人の容疑者が殺人罪で逮捕されると決まったことに、遺族、弁護士が裁判に勝ったような落ち着いた笑みを浮かべた姿をCNNは報道したが、無実の何も武器をもたない17歳の少年を撃ち殺されて一か月半、殺した男は捕らえられることもなく塀の外の同じ空気をすっていた。こんな理不尽なことはない。

アメリカの子どもたちが子ども同士のケンカや親に注意をされて「It’s not fair.」と口にする。しかし、実際アメリカはフェアーではない国である。表向きは平等を主張するが、もしも全てにおいて自由と公平を主張するのなら、なぜこのように無実の黒人が白人に射殺される事件が後を絶たないのか。
悲しい予想であるのだが、白人が黒人を“正当防衛”と言う名のもとに射殺する事件がなくなることはないだろう。それはアメリカの恥部でもあるのだ。

画像:frickr from YAHOO!
http://www.flickr.com/photos/werthmedia/6916067892/

※この記事はガジェ通ウェブライターの「あおぞら」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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