“ひとくち餃子”で有名な「点天」は、かつてカウンターだけの小さなお店だった【大阪定番】

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“ひとくち餃子”で有名な「点天」は、かつてカウンターだけの小さなお店だった【大阪定番】 f:id:Meshi2_IB:20170801210301j:plain

点天の「ひとくち餃子」は大阪土産の代表格である。

私はもっぱら自分へのお土産に買って食べているが、サクサクっとした皮とニラの効いたあんのバランスがすごく独特でクセになる。20個が1人前の目安として売られているのだが、「今日は100個いける!」といつも思う。

ギッシリとあんが詰まったボリュームたっぷりの餃子ももちろん好きなのだが、点天の餃子はそれとは違い、食べ応えも非常に軽く、おつまみとしての機能性が高い。ビールのお供としてこの上ない餃子だ。

点天の餃子の顔である青い包装紙には「大阪北新地 点天」と書いてある。北新地か……。調べてみると北新地は点天の創業の地らしいが、現在、点天は飲食店を運営しておらず、百貨店や通販で冷蔵の生餃子を販売する専門店となっている。

「昔は北新地でお店をやっていたのかな」

「それが今の形になったのはどうしてだったんだろう」

など、点天に対するクエスチョンがじわじわと沸き起こってきた。点天のことを何も知らなかった自分に私は気づいたのだ。

というわけで、大阪市此花区にある株式会社点天の本社にお邪魔し、名物「ひとくち餃子」について詳しく聞いてきた。

こだわりは当日製造当日販売

お話を聞かせてくれたのは株式会社点天・総務部の長谷川尚大さん。

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── 点天の「ひとくち餃子」の包装紙には「大阪北新地」と書かれていますが、創業の地が北新地なんですか?

「はい。1977年、ちょうど今から40年前に北新地でお店を出したのが始まりです。7~8席ほどのカウンターだけのお店で、焼き餃子だけを出すお店として営業していました。

その焼き餃子がお客様に好評で、特に北新地という場所柄(高級なクラブや飲食店が立ち並ぶ)、東京からいらっしゃる業界関係者の方々なども多く、そういったお客様の『この餃子をどうしてもお土産に持って帰りたい』という声にお応えして、折り箱に入れて、青地の白抜きの紙袋で持ち帰っていただいたり、北新地内10分以内にお届けしますというのがスタートなんです」

── その頃から今のようなひとくちサイズの餃子だったんですか?

「そうです。あの辺りは飲み屋さんも多いので、お酒の合間に気軽に食べられるようなものをと、それでひとくちサイズのものになりました。また、北新地で働く女性の方々にも、上品に食べられるというので好評でした。北新地には他にも餃子を出すお店がたくさんあるんですが、同じような理由でひとくちサイズの餃子が多いんですよ」

── なるほど、北新地という場所ゆえに生まれた形なんですね。それから「点天の餃子をお土産に持ち帰りたい!」というリクエストが徐々に広がっていった、と。

「おかげさまでそういう声をたくさんいただいて、それこそまだ冷蔵の宅配サービスがない頃から、保冷剤をたくさん入れてなんとか工夫して、全国の人たちにおいしい餃子を食べてもらうために発送していました。お土産としての需要が大変大きかったんです。

そしてそれを食べた方がまた、他の誰かにも食べさせたいと、そういう風に広がっていったと社長よりうかがっています。北新地の店舗も2010年までは営業していたんですが、時代の変化にあわせて町の様子も変わってきたということで、そちらは閉めることになりました」

── 北新地のお店でも食べてみたかったです! そして現在は百貨店や駅などでの販売とオンラインでの販売を専門に行っているわけですね。月並みですが、餃子を作る上で一番のこだわりというと何でしょうか?

「当日製造当日販売、という点です。逆に言えば、うちのこだわりというとそれぐらいなんです。作り立てのおいしさが特徴です」

── 毎日工場で作って各店に運んでいるわけですよね。朝はかなり早くから動き出すんでしょうか。

「毎朝、午前3時にスタートして、早いところには午前4時、5時には出荷します。例えばJR新大阪駅構内でも数カ所で販売しているのですが、新幹線の始発に乗って東京に帰られる方が買っていくということもありますので、できるだけ早く店頭に並べています。ですので工場が一番忙しく動いているのが、午前3時~4時という時間帯なんです」

点天の餃子はこうして生まれる

早朝(というか深夜)から動き出すという点天の工場。その様子を撮影した写真を見せていただくことができた。

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専用の機械に餃子の皮を並べていく。

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皮にあんを詰めていく工程。4個のひとくち餃子を同時に製造できるという。

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生まれての「ひとくち餃子」たち。

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それを箱の中に美しく並べる。

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青い包装紙で梱包すれば、

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あとは出荷を待つのみ!

ちなみに点天の工場は大阪市此花区のほか、名古屋と東京にあり、それぞれの販売エリアの餃子を作っている。また北海道・札幌の大丸札幌店のみ、店舗内で製造しているのだそうだ。

「間隔をあける感覚」が大事!

ふたたび長谷川さんに聞いてみる。

── こんな風に点天の餃子が日々作られているんですね。

「以前は今のような規模のラインではありませんでした。大阪の工場は移転のたびに拡大しておりまして、昔は手で巻いてましたから(笑)」

── 使っている素材についてのこだわりはありますか?

「点天の餃子は“ニラ餃子”と呼ばれるぐらいニラの風味が重要なんです。高知県・土佐香美の生産者の方々に協力いただいて、新鮮で香りの良いニラを安定して確保できるようにしています。豚肉や白菜は国産のものにこだわっています」

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── 点天の餃子を焼く時に、失敗しない上手なやり方を教えていただいてもいいでしょうか!

「一番重要なのは間隔です。普通の餃子って割とくっつけて並べるイメージがあるでしょう? うちの餃子はよく熱したフライパンの上に並べる時、1個1個を、5ミリから1センチずつ間隔をあけて蒸し焼きにしていただきたいです。間をあけないと皮がカリカリ、パリパリにならないんですよ。“間隔をあける感覚”が大事なんです(笑)」

── なるほど。

「あとは、焼く時に必要な水は一般的な餃子に比べて少ないと思います(フライパンで10個焼くのに30ccの水で良いそう)。それに気をつけていただければおいしく焼けます。箱の中に焼き方の説明書きがありますので、そちらを参照していただければ!」

── 餃子に付属するタレについては何かこだわりがありますか? 割とシンプルな味ですよね。

「本当に、もう、酢と醤油です(笑)。家庭のお酢と醤油を混ぜてるだけなんです。餃子の味を引き立たせるようにシンプルなものを使っています」

── 普通に焼いて食べる以外におすすめの食べ方はありますか?

「水餃子はすごく簡単なのでおすすめですね。沸騰したお湯に餃子を入れて、浮いて来たらもう食べ頃です。お湯に入れる際に少し餃子の皮をキュッとしめてあげてください。寒い季節だと鍋に入れて食べるという方もいらっしゃいます。少しだけ余ってしまった餃子をカップラーメンのトッピングにするというお客様もいました。これはちょっとぜいたくですが(笑)」

── それはぜいたく過ぎますね! 一度試してみたいです。

「あとは、『ホイル餃子』と言って、ホットプレートで調理する際に、アルミホイルにニラを敷いて、そこに餃子を並べてお水を入れて包み、蒸し餃子にするという食べ方もおすすめです。ポン酢が合うんですよ。

点天では『点天こどもぎょうざ教室』という親子向けの食育のイベントを開催しているのですが、そこでお子さんたちと一緒に『ホイル餃子』を作ったことがあります。ちなみに点天の百貨店の店舗店頭では揚げた餃子も販売しているのですが、そちらは点天特有の辛みもほどよく抜けてお子様にもおすすめです」

── いろいろな食べ方があるんですね!

「百貨店の店舗では、通常の焼き餃子以外に、先ほどの揚げ餃子ですとか、しそ餃子、手羽先餃子などの変わり種餃子も販売しています。特に手羽先餃子はおいしいですよ! 手羽先餃子の具材は旬を感じていただけるような素材を入れて販売していますので、ぜひのぞいてみてください! 骨を抜いて手作業で具を詰めているのでそんなに大量に作れないんですよ」

── 会社として今後考えていらっしゃることなどはあるんでしょうか? 展望といいますか。

「お中元やお歳暮という文化も今や少しずつなくなってきていますが、そういった時に誰かに贈って喜んでいただけるように地道に当日製造当日販売を守ってやっていこうと考えています。お土産にしたい餃子ってそれほど多くはないと思うんです。やはりどちらかというと家庭で食べるものですよね。“贈り物にしたい餃子”と思っていただけるように地道に頑張ります」

── ありがとうございました! おかげでだいぶ点天に詳しくなることができました!

持ち帰って焼いてみた

帰りに「阪神百貨店 梅田本店」にある点天で「ひとくち餃子」や「手羽先餃子」、揚げ餃子タイプの「おつまみ餃子」を買ってきた。

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長谷川さんに教えてもらった焼き方で「ひとくち餃子」を焼いてみよう。

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いつも見てもきれいな餃子。生八ツ橋のような上品さだ。

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熱したフライパンに薄く油をひき、間隔をあける感覚を研ぎ澄まして10個並べる。水は30cc。大さじ2杯。かなり少なめだ。ここが大事。

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水分がなくなるまで火を止めずに中火で5分ほど。良い焼き具合に仕上がりました。

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皮がとにかくカリカリのサクサク。心地よいライトな食感が点天の特徴だ。

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おいしすぎる! 迷わずご飯に乗せてかきこむ。ニラの香りに食欲がかき立てられる。

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水餃子もおすすめとのことだったので、少しアレンジしてスープ餃子仕立てにしてみた。沸騰した鍋に中華ダシを入れ、白菜やもやし、しめじなどを適当に煮た後、皮をキュッとしめた「ひとくち餃子」を投入! ゆであがったら完成。

これが予想以上においしかった。

「ひとくち餃子」からニラやお肉の香りがしみ出し「これは本当に俺が成し遂げた味なのか!?」と驚くほどにスープにうま味がプラスされる。簡単においしいスープができるのでぜひ試して見て欲しい。

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「手羽先餃子」は「ひとくち餃子」とは別路線の、具がたっぷりのジューシー餃子。

肉汁のあふれ出す、うま味の塊です。ビールが進んで仕方ない。

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また、揚げ餃子タイプの「おつまみ餃子」もその名の通り、ビールととんでもなく合う。

カリッとスナック感覚で食べられる。店頭では「カレー味」「醤油バター風味」も売られていた。どちらも試してみたい。

点天の底知れぬ魅力を感じられた取材だった。

北新地にあったカウンターだけのお店の餃子が今のような規模に発展したのは「どうしてもお土産にしたい」というお客さんの声がきっかけだった。自分が食べて「おいしい!」というだけで終わらず、さらに「誰かに食べさせたい!」と思わせてくれるところが点天の餃子の一番の魅力なんだと思った。

取材協力:ひとくち餃子の点天

※この記事は2017年6月の情報です。

書いた人:スズキナオ

スズキナオ

1979年生まれ、東京育ち大阪在住のフリーライター。安い居酒屋とラーメンが大好きです。exciteやサイゾーなどのWEBサイトや週刊誌でB級グルメや街歩きのコラムを書いています。人力テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーでもあり、大阪中津にあるミニコミショップ「シカク」の店番もしており、パリッコさんとの酒ユニット「酒の穴」のメンバーでもあります。色々もがいています。 Twitter:@chimidoro

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