100円台の手頃なビールを「クラフトビール風」に化けさせる裏ワザ【BEER HACK】

access_time create folderグルメ
f:id:Meshi2_Writer:20170720213541j:plain

マイクロ出版社ferment booksの(よ)です。

やっぱり夏はビールっすよね~。とくに、大流行のクラフトビールをグイッとできたら最高です!

でも、クラフトビールってけっこう値が張りますな。

350ml缶だと、どんなに安くても1本 250~300円くらいから。お店で飲むとパイントグラス(500ml前後)で1,000円くらいはします。

なんとか、財布に優しく楽しめないものか……。

あっそうだ! 自分で作ってみよう!!(突然)

ムクムクっと湧き上がってきたワケのわからないDIY精神に突き動かされた結果、安価な「第3のビール」をクラフトビール化する計画をぶち上げ、試行錯誤を開始しました。

第3のビールとは、「発泡酒」とは異なるビールテイスト飲料のカテゴリー。酒販店やスーパーに行くと、350ml缶が100円ちょいくらいの価格で販売されていますよね。

この「第3のビール」に、コーヒー、フルーツ、スパイス、ハーブといった、クラフトビールっぽいフレーバーをつければ、けっこう雰囲気出るんじゃなかろうか?

さっそく、クラフトビールに詳しい「麦酒処ぬとり」の山田泰一さんに相談しに行きました。

f:id:Meshi2_Writer:20170720213758j:plain

山田さんは、ビール関連イベントなどに出店してクラフトビールを提供する活動を展開中。また、謎のビールスポーツ「ビアポン」の普及につとめたり、王冠を曲げずに開栓できる栓抜き作りのワークショップ(ビール王冠コレクター向け)などを行いつつ、日常的にさまざまなビールを楽しんでもらうお店「麦酒処ぬとり」のオープンを目指すビールクリエイターです。

「第3のビール」にコーヒーやフルーツといった素材の風味をプラスして、クラフトビール化できるかどうか、さっそく山田さんにたずねてみました。

楽しい実験、ということで考えるなら、めちゃくちゃアリだと思います」(山田)

アリですか!

「もともとビールづくりには、醸造工程のさまざまな段階でフルーツやスパイスなどの副原料を投入してフレーバーを出すテクニックが存在します」(山田)

ほう!

「また、ランドルフィルターという器具もあります。お店で生ビールを提供する際、それにホップやフルーツなどを詰め込んで樽につなぎ、フレーバーを添加しながらグラスに注ぐんです。この実験は、そういった手法に通じるところがありますね」(山田)

なるほど!

要注意点は、アルコール度数20度未満のお酒に食材を漬け込むと、酒税法の「お酒の製造」に該当する可能性があること。そこで、ノンアルコールのビール風飲料に素材を漬け込んで作った「原液」に対して、飲む直前に「第3のビール」を注いで完成させる方法を採ることにしました。

まとめると、こんな感じ。

f:id:Meshi2_IB:20170801202527j:plain

かなりイケそうな感触! さっそく実験開始です。

その① 甘夏ホワイトエール風

f:id:Meshi2_Writer:20170720214121j:plain

【原液の材料】 甘夏 2個 ビール風ノンアルコール飲料 350ml(1本)

f:id:Meshi2_Writer:20170720214212j:plain

甘夏を適当なサイズに切り分け、ビール風ノンアルコール飲料とともにガラス瓶などに入れて一晩漬け込みます。

f:id:Meshi2_Writer:20170720214231j:plain

そして、飲む直前に上記の原液を茶こしなどでこします。

こした液体をグラスに1/3ほど注ぎます。

さらに、ホワイトエール風の「第3のビール」を2/3ほど注いでグラスを満たします。

f:id:Meshi2_Writer:20170720214258j:plain

完成。

さっそく山田さんにテイスティングしてもらいましょう!

f:id:Meshi2_Writer:20170720214426j:plain

山田さん評価:6点!(10点満点)

★★★★★★☆☆☆☆

「めっちゃ甘夏が効いていて、柑橘の黄がキレイ。ホワイトエールとも相性良し。もっと炭酸が効いていて、冷えていたらさらに良いですね。あと、柑橘の苦味は、漬け込み時間を少なくするか、原液を少なくするかで改善すべき」(山田)

なるほど~。

一晩漬けた原液はすでに炭酸が抜けているので、開栓直後の「第3のビール」と合わせても炭酸が弱くなってしまう……。これは課題ですね。

温度の問題は、原液と「第3のビール」を冷蔵庫でしっかり冷やしておくことでクリアできそう。

次に行ってみましょう。

その② コーヒースタウト風

f:id:Meshi2_Writer:20170720214643j:plain

【原液の材料】 粗めに挽いたレギュラーコーヒー 100g ビール風ノンアルコール飲料の「黒」 約700ml(2本)

f:id:Meshi2_Writer:20170720214735j:plain

上記を一晩漬け込み、原液とします。

原液をこして、

f:id:Meshi2_Writer:20170720214805j:plain

飲む直前に、「第3のビール」の「黒」とミックス。

f:id:Meshi2_Writer:20170720214835j:plain

完成。

テイスティング、お願いします!

f:id:Meshi2_Writer:20170720214904j:plain

山田さん評価:7点!(10点満点)

★★★★★★★☆☆☆

「ほ~! コーヒースタウトの味だ。ウマい! 色も澄んだ漆黒ですし。漬け込み時間を減らしてコーヒーの酸味を抑えたいです。これに関しては炭酸が少ないのが、かえってプラスに働いてます」(山田)

「ウマい!」の一言、ありがとうございます。

その③ チョコレートビール

f:id:Meshi2_Writer:20170720214956j:plain

【原液の材料】 ココアパウダー 100g ビール風ノンアルコール飲料の「黒」 約700ml(2本)

f:id:Meshi2_Writer:20170720215029j:plain

例によって材料を一晩漬け込んだあと、ココアパウダーは粒子が細かくて茶こしではこせないので、コーヒー用のペーパーフィルターでこしておきます。

f:id:Meshi2_Writer:20170720215121j:plain

こした原液と、「第3のビール」の「黒」を合わせましょう。

さーて、テイスティングタイム!

f:id:Meshi2_Writer:20170720215154j:plain

山田さん評価:7点!(10点満点)

★★★★★★★☆☆☆

「これも炭酸が少ないのが、かえって良いです。まさにチョコレートビール。さっきのコーヒーより、色が少しブラウン寄りの黒で、面白いですね~。デザートビールとして楽しめそうです」(山田)

ここで突然、山田さんが、先ほどのコーヒースタウトと、このチョコレートビールをハーフ&ハーフでブレンド! 飲んでみて、「角が取れて、こっちのほうがウマい。8点!」と高評価。実験精神、さすがです。

その④ トムヤムビール

さて、ここからは少々ハードルが高いレシピが登場。

まずタイ料理の名物スープ、トムヤムクンに使うハーブを使用した、「トムヤムビール」です。

f:id:Meshi2_Writer:20170720215244j:plain

【原液の材料】 レモングラス 数本 こぶみかんの葉: 0枚ほど カー 1個 唐辛子 数本 ビール風ノンアルコール飲料 約700ml(2本)

「カー」は生姜に似たタイ料理の食材。アジア系食材店やネットの通販サイトで入手できます。

これらを適当なサイズにスライス。

f:id:Meshi2_Writer:20170720215324j:plain

材料全てを、ビール風ノンアルコール飲料と一緒に一晩漬け込み……。

f:id:Meshi2_Writer:20170720215402j:plain

できた原液を、ホワイトエール風の「第3のビール」と合わせます。

f:id:Meshi2_Writer:20170720215429j:plain

さあどうぞ!

f:id:Meshi2_Writer:20170720215453j:plain

山田さん評価:5点!

★★★★★☆☆☆☆☆

「うわ、刺激的。かなーり辛いです。餃子から揚げなど、料理と合わせたいですね。調味料的なビールかも。沖縄のコーレーグスを思い出しました。アジア料理ともペアリングしたい。柑橘系の味わいも感じます」(山田)

柑橘系のフレーバーはレモングラスや、こぶみかんの葉から出ています。料理と合わせたいという意見には、納得。

その⑤ スモーキービール

ドイツに、燻製した麦芽を使用する「ラオホ」と呼ばれるビールがあり、飲むとスモーク香がします。そのビアスタイルを意識したレシピ。

f:id:Meshi2_Writer:20170720215753j:plain

【原液の材料】 燻製用チップ 100g ビール風ノンアルコール飲料 約700ml(2本)

f:id:Meshi2_Writer:20170720215837j:plain

チップをフライパンなどで熱してスモークをたたせ、褐色になったところで火から下ろします。粗熱がとれたら、ビール風ノンアルコール飲料とあわせて一晩漬け込みます。

こした原液は、ラガーテイストの「第3のビール」と合わせましょう。

f:id:Meshi2_Writer:20170720215858j:plain

さて、どうでしょうか?

f:id:Meshi2_Writer:20170720215917j:plain

山田さん評価:8点!!(10点満点)

★★★★★★★★☆☆

「スモーキーに仕上がるかと思ったら、乳酸菌みたいな甘さで、後味がヨーグルトみたい。燻製香よりヨーグルトっぽさが強いです。ラオホとは全然違うけれど、結構ウマい! この甘さは、スモークチップの木に由来しているのかな?」(山田)

狙ったところとは、全然別のツボで評価いただきました!

「バレルエイジド」と呼ばれる、樽で寝かせるビールと似たような味わいを出す目的で、ビールにオークチップを加えて樽香をつける手法もクラフトビールにあるのだとか。う~ん、勉強になります!

大ラス⑥ パクチービール

好みの分かれるパクチーですが、あえてビールにして楽しんでみましょう!

ダメ押しで、パクチーの種であるコリアンダーシードも大量に使用します。コリアンダーシードは、カレーにも多用されるので、手づくり派カレーファンにはおなじみのスパイスですね。

f:id:Meshi2_Writer:20170720220103j:plain

【原液の材料】 パクチー 50g コリアンダーシード(ホール) 50g ビール風ノンアルコール飲料 約700ml(2本)

f:id:Meshi2_Writer:20170720220220j:plain

パクチーは適当な大きさにカット。コリアンダーシードは軽くすりつぶして、ビール風ノンアルコール飲料と合わせ、一晩待ちます。

f:id:Meshi2_Writer:20170720220254j:plain

この原液は、ホワイトエール風の「第3のビール」と合わせましょう。

f:id:Meshi2_Writer:20170720220312j:plain

さて、お味はいかがでしょうか?

f:id:Meshi2_Writer:20170720220327j:plain

山田さん評価:9点!!!

★★★★★★★★☆

「おぉ~!! これ、今回の実験で一番ウマいかも! バランスが良いですね。パクチー臭はなくて、それより柑橘というか、ホワイトビールを濃縮したような味わい」(山田)

f:id:Meshi2_Writer:20170720220404j:plain

ペールエールっぽい琥珀(こはく)色で、見た目もビールらしい。いわゆるカメムシ臭というか、セメダイン臭というか、おそらくパクチー嫌いの人が気にするニオイはぜずに、コリアンダーシードが立っています!」(山田)

パクチービールは、もっともハードルが高いと思いきや、意外な高評価です!

まとめ

今回試した6種類の原液です。

f:id:Meshi2_Writer:20170720220536j:plain

いやー、パクチービールがダントツの9点で、まさかのダークホースでした!

「すべてが予想の斜め上でした。炭酸が弱くなってしまうのは、甘夏ホワイトエール以外はまったく気になりません。むしろ炭酸が少なくて良かったくらい。トムヤムは番外編というイメージで、好みがわかれそう」(山田)

うーん。個人的にはトムヤムビール、自信作だったんですけどね。

バランスが良かったのはコーヒーとチョコ。あと、このふたつをハーフ&ハーフであわせたのが気に入りました。燻製チップのヨーグルトっぽさは謎ですが、意外だったのがパクチー。一番おいしかったです」(山田)

パクチービール、パクチニストにはぜひ試してほしいです。

「ビールは自由なお酒なので、こういう実験はどんどんやってほしい」と山田さん。

近い将来、山田さんがオープンするお店も楽しみですね~。

自由なビールに乾杯!

※この記事は2017年7月の情報です。

書いた人:(よ)

(よ)

『味の形 迫川尚子インタビュー』などを発行するマイクロ出版社「ferment books」の編集者で、ベトナム大好きのアジア料理フリーク。ただいま発酵食品についての書籍を製作中。3ヶ月に一度開催されるECODA HEMでのイベント「ろじものや」では「発酵書店」としてポップアップ書店も展開している。 Twitter:@ferment books

過去記事も読む

関連記事リンク(外部サイト)

調理師に聞いた。ゴーヤってどうして夏に食べるといいの?保存法は?【レシピあり】
寄せ箸、刺し箸、迷い箸……「正しくない箸のマナー」をあらためて知っておきたい
1805年創業、帰省のおみやげに船橋屋のくず餅はいかが?【かき氷も大好評】

  1. HOME
  2. グルメ
  3. 100円台の手頃なビールを「クラフトビール風」に化けさせる裏ワザ【BEER HACK】
access_time create folderグルメ
local_offer

メシ通

食を楽しみたいあなたのスキマ時間を、笑顔と感動と知って得する情報で満たす「グルメ情報マガジン」です。平日は休まず更新中。

ウェブサイト: http://www.hotpepper.jp/mesitsu/

TwitterID: mesitsu

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。