一流の人は「勝負どころ」をわきまえている――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

一流の人は「勝負どころ」をわきまえている――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第8回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、読むリラックスタイムですら学びの時間に変えることができます。私が強くお勧めする選りすぐりのマンガの名シーンの1コマを解説することで、より多くの方に名作の良さを知っていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「投資に一番大切なのは、未来を予測する力。社会の人々を幸福にするために、将来どういう問題を解決すれば良いか。これを想像して、自分で答えを導き出すこと」

(『インベスターZ』第2巻credit.13より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

投資とは「未来の可能性に賭けること」

マヨネーズの一件(詳しくは「残念な人は『本当のところ』を“問う”ことすらしない――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス」を参照)から、「投資は勉強だけをしていても答えは出ない」ということに気づいた財前。それを先輩・神代(かみしろ)に伝えにいきます。

勉強とは、過去の経験などから導き出された“結果”です。確かに過去から学ぶことは大事ですが、勉強だけではわからないこともあります。その一例が「未来」です。

投資とは「将来、価格が上がる可能性があるものにお金を投じ、リターンを得ようとする」ことを言います。価格が上がるということは、普通はそれ以上に多くの価値を人々に提供できなければなりません。たとえば株式であれば、その株を発行した会社がよりよいサービスを世の中に提供する必要がありますが、実際にそのサービスがどれだけ世間によって受け入れられるのかは、それを世に解き放ってみないことには答えはでません。

投資を行うには、そうした「可能性を見抜く目」が必要となります。それが、本日のセリフでいうところの「自分で答えを導き出す」の意味であり、仮説思考です。

現実は理論通りにはいかない

「未来のことは勉強できない」という言葉は、ビジネスにも当てはまります。要は「理論と現実は別もの」だということです。

日本のトップマーケターと言われる神田昌典氏は、大学在学中に外交官試験に合格し、外務省経済局に勤務。その後、アメリカに留学し、MBA(経営学修士)を取得します。これ以上ない経歴の持ち主ですが、神田氏によると「当時、自分がアメリカ企業のCEOに対して語っていた経営戦略は、実戦ではまったく役に立たなかった」と述懐しています。

今でこそ敏腕コンサルタントとして鳴らしている神田氏ですが、駆け出しのころは「(MBAの知識は)状況を分析することには活用できても、そこから新たな戦略を発想し、キャッシュを生み出すにはまったく別の思考プロセスが必要であることに気づいていなかった」と述べています。

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©三田紀房/コルク

何でもできるようになろうとしない

最初にビジネスの基本を抑えておくことは大事なことです。先に基礎を抑えておけば、無用な失敗を避けることができるし、時間を短縮することもできます。しかし多くの場合、ビジネスで圧倒的な勝利をもたらすものとは「何もないところからものを生み出す力」、つまりゼロを1にする力です。

結局、「未来はすべてこれから起きる」ということです。ですからそれに気づいて、いち早くお勉強をやめた者が勝つのがビジネス。それが上記マンガの一場面で神代が言っている「知識だけでは答えが出ないと気付くには、一度過去を学んでみないとわからない」の意味になります。

これは、たとえば読書にも当てはまります。世間ではよく「ビジネス書を読んでも身にならない」「実践で活かせない」と悩んでいる人を見かけます。しかし、それは「人は努力をすればどんなことでもできるようになる」という思い込みから、すべてをできるようになろうとしているだけなのかもしれません。

一例を挙げると、マネジメントに関するビジネス書は山ほど出版されているのに、マネジメントが苦手な人は依然たくさんいます。もし、「これだけ勉強しているのにできない」「実践してもうまくいかない」というのであれば、理解が不十分で使いこなせていないのか、もしくは、それが自分の苦手分野だからに他なりません。

目指すべきは「スペシャリスト」

過去の日本では、長らくの間「何でも平均的にこなせる」ゼネラリストがもてはやされてきました。しかし、私たちがこれからの時代のキャリアで目指すのはスペシャリストであるほうが無難です。マネジメントですら1つのスペシャリストですから、ゼネラリストという都合の良い言葉に惑わされることなく、自分にとってのスペシャルを追求しましょう。ゼネラリストを目指すのは、何かのスペシャルを身につけた後でも遅くありません。

「スペシャリストになるための礎を築く」「自分の限界がどこにあるのかを知る」ために勉強する、というのは大いに結構です。しかしそこから先は、決して勉強だけで進める世界ではありません。

もし、あなたに「たいして勉強していない」「なのになぜか評価される」という分野があったなら、逆にそこは力を入れて勉強することをオススメします。なぜならそれこそ、あなたが一流になれる最短コースかもしれないからです。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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