プロポーズの数日後に、彼氏が余命宣告されたカップルのお話

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1級身体障害者が法律家を目指すブログ

今回はだいちゃんさんのブログ『1級身体障害者が法律家を目指すブログ』からご寄稿いただきました。

プロポーズの数日後に、彼氏が余命宣告されたカップルのお話

昨年、私は行きつけのバーでクリスマスイブを過ごしてきました。
独身の男が大半を占める状態になってしまいましたが(笑)それはそれで楽しいクリスマスイブを過ごすことができました。
そんな独身野郎が大半を占めるお店の少し端に、とあるカップルが座って食事をしていました。

店長から話を伺うと、そのお店の昔からの常連さんのようで、一昨年の年末に男性側がプロポーズを行い、婚約し、今年あたりに結婚するそうです。プロポーズは、このお店で行ったそうで、なんともロマンチックなお話だなぁと思い話を聞いていました。
しかし、なぜ一昨年にプロポーズを行ったにも関わらず、まだ結婚していないのでしょうか。

■このカップルの壮絶な人生

そのお二人に話を伺うと、プロポーズを行った数日後に、幸せから一転、このカップルをどん底に突き落とすような出来事が待ち受けていました。
体調が急変した彼。病院で精密検査を行うことになりました。
そして、下された病名は、

“急性白血病”

余命数年だと医師からは伝えられたそうです。プロポーズをして数日後に、このような診断を下されるとは、誰が予想できたでしょうか(ドラマなどでよくお涙ちょうだいで使われる病気、それが白血病ですが、これはノンフィクションです)。

そして、男性側は、このままでは数年後には自分は死んでしまうから、彼女を幸せにすることなどできない。仮に病気が治ったとしても、またいつ病気が再発するか分からない。
病気というストレスもあり、彼氏さんは自暴自棄にもなっていたのでしょう。上記にも書きましたが、自分では彼女を幸せにはできない。そこで彼氏は彼女にこう伝えました。

「このままでは君を不幸にするだけだ。別れよう」

婚約をしていたにも関わらず、彼女の幸せを思い、別れを切り出したそうです。
しかし、彼女の返事はこういうものでした。

「絶対に別れない」

■彼女さんとの話について

私は彼女さんに話を聞いてみました。
「現実的なことを考えると、旦那さんが病気の場合、特にこの不景気だと、将来不安になりますよね。よく別れを決意せずに、婚約を続けようと思いましたよね。それはどうしてですか?」

彼女さんはこう答えました。

「今、健康な人と結婚しても将来的にその人が病気になる可能性はある。だから、病気だからという理由で別れたくなかった。もし仮に彼氏が亡くなってしまったとしたら、その時に先の人生のことを考えればいいし、逆に今を乗り越えることさえできれば、この人となら幸せな家庭を築くことができるという確信があったから」

この言葉を聞いて、私は目頭が熱くなりました。
私自身、重度の身体障害です。やはり、例え恋人を作っても幸せにすることができないのではないか。自分の病気のせいでいろいろと迷惑をかけてしまうのではないかと、人を好きになっても、
「付き合って下さい」
という言葉が言えず、片思いを続けてきました。

特に自分は真面目すぎる部分があり、金銭面では絶対に恋人に迷惑をかけたくない。むしろ自分一人の収入でも十分に配偶者(結婚する相手)を養えるぐらい稼げないとダメだ。共働きが当たり前の現在ですら、このように時代錯誤な考えをしてしまう人間です。

特に、自分は母子家庭の貧乏家庭で育ってきました。やはり、自分の母親にも楽をさせてあげたいという気持ちがあります。でも、今の自分にはその両方を実現することはできない。まず、優先順位としては家族ですので、家族を養えていない自分が、彼女に金銭的な負担をかけずに付き合うことができるのか、というとそこには疑問が生じます。
しかし、その彼女さんは私に言ってくれました。

「そんなの関係ないよ。現実的なことを考えすぎる人は、男の収入で人を判断するかもしれない。でも、そうじゃなく、純粋にあなたの人柄を見て、ともに頑張ろうと言ってくれる人が必ず現れるよ。そして、一人で自分のためだけに仕事をするよりも、彼女がいるから頑張れる、そういうプラスに働く恋愛ができれば、迷惑をかけるどころか、お互いが幸せになることができる。だから、恋愛を諦めてはだめ。あなたの年齢で恋愛を諦めるのはもったいないよ」

この方の話を聞いて、私はやはり頭が固いのだなと。分かったような気になって、人間全ての性格を決めつけてしまっていたのでしょう。そういう大切なことに気が付かせてもらえました。
病気が原因で人の汚い部分を沢山見てきた為、多少人間不信にもなっているのかもしれません。

■彼氏さんとの話について

その彼女さんが席を離れた為、彼氏さんと話をすることにしました。そして、自分が今考えている恋愛観などについて話を聞いていただきました。すると彼氏さんは、

「俺も同じようなことを考えていたから、別れを切り出したんだ。でも、今は別れなくてよかったと思っている。彼女がそこですんなり別れていたら、今の自分はいなかっただろうね。だから、別れを切り出しても“別れない”と言ってくれた彼女。この彼女をずっと、そう、永遠に大切にしていきたい」

このように答えてくれました。
実はこの彼氏さんの白血病は、今現在(平成23年12月24日)には、奇跡的にも普通に生活できるレベルまで回復していたのです。
あとは、定期的に検査をして、転移などが見つからなければ、普通に生活できるそうです。

彼女さんは、彼氏さんが病気の間、毎日看病の為に病院に通っていたそうです。自分の仕事もこなしながら。
その愛情のおかげで病気が治ったのか、最先端医療によって治ったのかは分かりません。しかし、少なくともこの彼女の存在が、懸命な看病が彼氏の病気を助ける手助けになったのは確実でしょう。

病気の彼氏でも、支えようという人が世の中には存在する。人間不信気味の私にとって驚きであり、そして、そのことを私に教えてくれたこのカップルに、
「ありがとう」
という言葉を伝えたかったです

しかし、肝心なときにこういう言葉を恥ずかしくて発することのできない私は、このカップルに弾き語りの曲を1曲プレゼントしました。

曲は、Mr Children『抱きしめたい』。

長いこと弾いていなかったということもあり、弦が切れるなどのハプニングもあり、グダグダな演奏でしたが、このカップルさんはとても喜んでくれました。
そして、1曲で終わる予定でしたが、他にも聞いていた人のリクエストもあり、『君が好き』『Youthful days』『車の中で隠れてキスをしよう』『くるみ』と、計5曲を披露しました。当然、全曲グダグダな感じでした(笑)。

それでも、全曲このカップルは集中して聞いてくれました。そして曲の終わりには、
「ありがとうございました。感動しました」
と一言下さいました。

■最後に

私は、音楽の本質、
「心がこもっていれば、多少下手でも聞き手に伝わる」
ということを忘れていたのかもしれません
。そして、このできごとによってそのことをまた思い出させていただきました。
自分が例え重度障害者であろうと、必ず良い人は現れる。恋愛を諦めるべきではない。そのことも学ばせていただきました。

神様などという架空の存在を現実主義者の私は信じていません。しかし、敢えて願いごとをします。

「このカップルが、このまま彼氏さんの病気が完治し、幸せな家庭を築くことができますように」

そして私も、もう一度、“恋愛”というものを頑張ってみよう、という気持ちになりました。

執筆: この記事はだいちゃんさんのブログ『1級身体障害者が法律家を目指すブログ』からご寄稿いただきました。

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