横浜市のごみ分別にかける本気度がすごい! 分別方法を教えてくれるAIが登場
自転車、梱包材のプチプチ、デオドラントスプレーの容器、フライパン……。あなたは、上記の品々を住んでいる自治体でごみとして捨てる場合、どのように分別すればいいのか即答できるだろうか。「梱包材のプチプチはプラごみ?」「スプレーは缶かな」「フライパンは粗大ごみ?」なんて、迷う人も多いはず。横浜市ではこうしたごみ分別をおしゃべり形式で教えてくれる「チャットボット」を現在、試験的に運用している。捨てたいごみを入力するとどの分類になるのかや、捨て方を教えてくれるスマートフォン用ごみ分別辞典アプリ「ミクショナリー」などもすでにあるというのに、どうしてそこまで「ごみ分別」に本気なのか、その取り組みを取材してきた。
「ごみ分別がされていない」は、地域のトラブルの悩みのタネ!
現在、横浜市とNTTドコモが共同で実証実験を行っているチャットボット「イーオのごみ分別案内」は、捨てたいものを入力すると、「燃やすごみだよ」「粗大ごみだよ」などと、ごみの分別方法や捨て方を会話のように答えてくれるシステム(好評につき現在、実証期間延長中)。捨てたいものを入力すると人工知能が答えてくれる形式なので、検索より会話に近く、より身近・手軽に楽しくごみ分別が分かる。対応している単語は2万語以上だという。【画像1】捨てたいごみを入力すると、捨て方を「イーオ」が教えてくれる。「粗大ごみの捨て方の詳細はこちら」のリンクをクリックすると粗大ごみの捨て方のページが表示される(「イーオのごみ分別案内」画面キャプチャー)
横浜市では、このチャットボットのほかに、ごみ分別の案内パンフレットの発行はもちろんのこと、スマートフォン向けの「横浜市ごみ分別アプリ」(※捨てたいものを入力すると種類を教えてくれる)、ごみ分別をゲームとして楽しめる「分別ゲーム」(流れてくるごみを分別していくゲーム)も開発。確かにごみ分別は10品目15種類と細分化されているとはいえ、ちょっと本気過ぎじゃないだろうか。担当部局である、資源循環局政策調整部3R推進課の江口課長に、その理由を聞いてみた。
「ごみ分別が徹底されていない、間違っている、ルールが守られないといったごみ問題は、地域のお困りごとのトップに入ってきます。そのため、ごみ分別の周知徹底は、どこの自治体でも注力しているんです。さらに横浜市ならではの事情として、横浜市から出ていく人よりも新たに住人になる人が多く、人口が増え続けていることがあります。他自治体との分別ルールの違いを分かってもらうため、さまざまな手法でごみ分別方法の啓発、お願いをする必要があるんです」とその目的を話す。
横浜市へ流入するのは学生や20代などの若い世代だけでなく、外国人なども多いため、横浜の生活ルールである「ごみ分別」について、さまざまな手段で知ってもらう必要があるのだとか。前述のアプリやチャットボットは、ごみ分別をより若い世代に知ってもらうための、「ツール」の1つなのだと解説してくれたのは、同じく3R推進課の宮永祐輔さん。
将来はカメラでかざす、語りかけることで「ごみ分別」が分かるようになる?
しかし、こうした行政の啓発活動はあっても、横浜市のごみ分別にはまだ「伸び代」があるとか。
「横浜市では、現在10品目15種類の分別をお願いしていますが、燃やすごみのなかの15%ほどは、分別が可能なごみが混ざっていてまだまだ減らすことが可能なんです。ごみ分別は、知るとやってみたくなるもの(笑)。行政としては、まだまだ分別の徹底をお願いしていきたいと思っています」(江口さん)【画像2】家庭から出される燃やすごみの中身(平成28年度)(出典/横浜市)
つまり、ごみ分別にここまで本気なのは、若い世代を中心とした人口流入、ごみ削減がさらに可能という、「伸び代」があるゆえ、といえるのかもしれない。
また、そもそもごみを減らすメリットとして、ごみ処理時に排出される温室効果ガスを減らすことができることに加えて、横浜市では7工場あったごみ焼却施設が現在4工場になるなど、自治体のごみ処理費用のコスト削減にもつながっているから。横浜市だけでなく、財政難に悩む地方自治体としては「ごみの削減」は必須といえるのかもしれない。
今回のシステム開発にあたっては、NTTドコモと地元自治体との共創ということで、約半年の開発期間で、「チャットボット」のリリースとなった。今年3月6日から試験運用中だが、累計で2万8000ほどのアクセスがあったというが(2017年5月現在)、多く検索されているのが「自転車」「パソコン」「ダンボール」「フライパン」「乾電池」などだ。
「これはリリース時期が3月ということもあり、引越しなどで大きなごみが出たためと想定しています。『ごみ分別アプリ』の検索との違いでいうと、項目を絞り込んですぐに結果が分かるように使いやすさを追求したこと、また名称が分からないものでも、素材別でヒントを見つけて、最終的に何らかの答えにつながるようにしている点です。ごみ分別の一番のストレスは、『検索にもヒットしなかった』『結局、なにごみか分からない状態』です。少しでもそのストレス軽減につながったら」と宮永さん。【画像3】捨てたいものの名称が分からず「あれ」と入力したときの会話のやりとりの例。ごみの名前が分からなくても、イーオがチャットで素材別に聞いてくれるので捨て方にたどり着ける工夫がされている(「イーオのごみ分別案内」画面キャプチャー)
実証実験は6月下旬までの予定だったが、現在、好評につき延長している。今後もチャットボットを継続するかは検証を経て未定ということだが、今回の開発のなかで、「カメラをかざしたら何ごみか教えてくれる」「話しかければ、ごみ分別を答えてくれる」といったことも将来は技術的に可能、という話が出ていたとか。
「ごみ分別は不慣れな人、高齢者や外国人などにもお願いしなくてはいけません。一方でごみ出し・処分は、行わないと生活が成り立たなくなるライフラインでもあります。チャットボットは、ごみ分別を助ける良いシステムではあるので、持っている可能性を広げていけたらいいですね」(江口さん)
誰もが無縁ではいられない「ごみ分別」。横浜市在住の筆者も内心、めんどうだと思っていたが、チャットボットで問いかけていると「あ、これは資源ごみなのか。じゃあ分別しようかな」となるもの。正しく「知る」ことが、キレイなごみ集積場・きれいな街をつくる第一歩なのかもしれない。●取材協力
・横浜市資源循環局政策調整部3R推進課
・イーオのごみ分別案内(ページ右下にあるイーオのアイコン「ごみ分別案内」から)
・ミクショナリー
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2017/07/137088_main.jpg
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