【つくりおき】ムチャクチャ身体にいい!「生姜シロップ」を自作してみた【理系メシ】
5時間煮る! 超辛ごくうまジンジャーエールの「生姜シロップ」を自作する
今日は「生姜シロップ」を作ろう。
「科学実験酒場」でも出している「生姜シロップ」、こいつが超人気!
おかげで誰もビールを飲まなくなり、原価が下がって店主はありがたい。みんな「生姜シロップ」で割ったドリンクしか頼まないから、生姜シロップ専門店にしようかと思うほどだ。
実際、おいしい。
炭酸で割れば「辛口ジンジャーエール」、ビールに入れればビールのカクテル「シャンディガフ」、お湯で割ってもおいしいし、私のおすすめはジンで割る飲み方。ジンと「生姜シロップ」を1対1で混ぜ、炭酸で割ると、ジン特有の薬臭さが生姜でいい香りに変わる。
後味の重さも生姜の辛さでキレイにぬぐわれる。
そういうわけで作り方だ。用意するのは 生姜:2kg程度 唐辛子:1本 粒コショウ:お好みで 塩:小さじ1杯 白砂糖:500~600g レモン汁:レモン半個~1個分
※今回作った「生姜シロップ」の材料・分量です。
たったこれだけ。
もうひと手間かけて、味をパワーアップする方法は文中で説明する。
何はともあれ、生姜だ。
ちまちまと小さい瓶で作ってもすぐになくなるから、家でも一気に作ろう。水で割ってもおいしいので、すぐ飲み切ってしまうのだ。生姜1㎏でだいたい1リットルできると考えればいい。今回は2kg強を使う。
まず生姜を洗う。
生姜は中国産がびっくりするほど安い。しかし実は国産だって安いのだ。今回使ったのは高知産。「生姜シロップ」を作るまで、高知県が生姜の名産地だなんて知らなかった。
さらに、ネットで買うと超安い。スーパーでは100グラム100円前後だが、業務用スーパーや八百屋さんで買う方がずっと安く、ひと山5~600グラムで300円程度。私がネット通販で買ったのは5㎏で1,700円。
たぶんこれが底値だ。
隙間に泥が入っているのでよく洗う、面倒ならズバッと切って洗えばいい。
薄く切る。
スライサーはすぐ目詰まりして(生姜の繊維はタフだ)イラつくので、おすすめしない。包丁でサクサク切ろう。切り方は雑でいい。
中ぐらいの鍋にいっぱいできた。
煮詰まって蒸発する分を考え、ひたひたより少し多めに水を入れる。今回は3リットル作るつもりなので、3リットル半の水を入れる。
隠し味その1。
唐辛子と粒コショウ。
唐辛子は1本で充分。あくまで生姜の味を引き立てる隠し味であって、唐辛子の辛さが目立ってはいけないのだ。種は抜いておかないと、無駄に辛くなる。
隠し味その2。
塩を小さじ一杯。3リットルに対して小さじ1杯なんて誤差範囲ぐらいだが、これを入れるか入れないかで味のキリッと感が全然違う。
1リットルなら小さじ1/3で充分。
香辛料をいろいろ入れたい人も多いだろうが、入れすぎにはご注意を。一般的にはクローブやカルダモン、ローリエあたりだろうか。くれぐれも数粒程度。入れすぎると苦くなる。
これを煮る。とろ火だ。
絶対に沸騰させてはいけない。
上限は80度だ。
「生姜シロップ」の作り方を探すと、「レンジでチンする」とか「オーブンで乾燥させる」とか「天日で干す」とか書いてある。
はっきり言って、「ただ煮るだけ」というのは私ぐらいだと思う。
しかし、だ。
面倒だろう?
干すとかオーブンとか。ホントに必要なのか? さっそく調べてみた。
ショウガオールの効能がスゴすぎる
生姜を食べるなり飲むなりすると、体が温まる。
これは生姜の薬用成分によるもので、生の生姜に含まれるジンゲロールは末梢血管を広げる働きがある。ジンゲロールに熱を加えるとショウガオールに変わるが、ショウガオールはある種のペプチドの産出を促して、心臓の血液量を増やし、腹部の血行を良くする。(※1)
体を温めるという点では同じだが、この2つは働き方が違う。
そしてショウガオールの方が、より体を温める。
痩せるという話もある。
ショウガオールは体脂肪を分解し、筋肉に使われやすい遊離脂肪酸に変化させる。炎症を押さえたり、胃腸を整えたり……と、その作用は広い。
「生姜シロップ」は、「おいしい」ということ以上にそうした薬効も期待されるので、ジンゲロールをどうやってショウガオールに変えるかが作り方のポイントになる。
だから焼いたり干したり蒸したりする。
では、どのくらいのジンゲロールがショウガロールに変わるのか?
生姜のジンゲロール:ショウガロールの比は98:2。ほぼジンゲロールだ。(※2)
これを1時間ゆでると同93:7、蒸すと92:8。
増えましたよ、たしかに。でも2%が7~8%への変化ですよ?
オーブンで手間かけて1時間乾燥させてもそんなものなんだよ。
これ、手間をかけるほど見合う作業なのか?
言い切るよ……見合いません!
オーブンで焼くというのも最初はやってみたけどさあ、よほどの暇人だよ。
ひと切れずつくるくるひっくり返さないと焦げ付くし。
そういうわけで煮るわけだ。
なぜか?
ジンゲロール:ショウガロールの比が1:1、50:50まで跳ね上がるからだ。
すごいでしょ? これが正解でしょ? ショウガオールをマックスまで増やす、その方法は「電子レンジ」でも「オーブン」でも「天日」でもないの!
煮るの!
5時間、煮る。譲って4時間。
これでジンゲロールがショウガオールへ限界まで変化する。目安は80度。これを超えるとジンゲロールもショウガオールも分解してしまう。煮る意味がない。だから絶対に沸騰させない。
超弱火でひたすら煮る。
煮えたら砂糖を加える。
3リットルに対して500~600グラム。砂糖はいろいろ試したけど、黒砂糖やグラニュー糖よりもここは白砂糖。ホントにシロップみたいにしたい人はさらに砂糖を増やす。甘くすると辛さが感じられなくなるので、味をみながら調整しよう。ハチミツもおいしい。
レモン汁を半個~1個分加えると味が締まる。だからレモン汁は入れることをおすすめする。「科学実験酒場」では、飲む時に入れている。その方が香りが立つからだ。
容器に移す。
煮崩れた皮や繊維が気になる人は、あとで網でこして、詰め直せばいい。
完成。
簡単も簡単、時間だけはかかるが、その分、おいしい。
試飲。どうかね、辛いかね?
「おいしい! 辛いけどおいしい!」
さらに辛くしたい人は、瓶の中に生の生姜の薄切りを突っ込んでおく。ジンゲロールの方がショウガロールより辛いからだ。
1日たてば、辛さがパワーアップする。
ポイントは気長に弱火で煮るだけだ。
簡単なのでぜひお試しを。
【注釈】
(※1)参考:食品医学研究所:しょうが(生姜)の効果・効能::【お知らせ】体を芯からポカポカ温めるには加熱ショウガか、蒸しショウガを!
(※2)参考:「ショウガ中の6-ジンゲロールの加熱調理による変化」(聖徳大学/吉田真美,平林佐央理/日本調理科学会誌 Vol. 48 (2015) No. 6 p. 398-404)
※この記事は2017年7月の情報です。
書いた人:川口友万
サイエンスライター。科学情報サイト『サイエンスニュース』の編集統括。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。東京・武蔵小山で、毎週日曜日のみ、肉に電気を流して食べたり、ワインを超音波で振動させて飲むイベントバー『科学実験酒場』を主宰。 サイエンスニュース:サイエンスニュース 科学実験酒場:科学実験酒場 友の会 アシスタント高実のブログ:高実茉衣の♥こあく茉衣にゃん茉衣ペースブログ♥
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