会社員のうちに身に着けておきたい「ビジネス系フリーランス」に必要な9つのスキル

「フリーランス」として働くというと、以前はデザイナー、ライター、カメラマンといったクリエイター、あるいはプログラマなどのエンジニアというイメージがありました。ところが昨今、ビジネス領域のフリーランスが増えています。

「事業企画、マーケティング、広報、人事、経理など、いわゆる『文系の総合職』と呼ばれる領域でフリーランスになる方が増えています。企業側にも、期間限定で特定のプロジェクトを任せられるプロフェッショナル人材のニーズがあります。そうした企業とフリーランサーのマッチングサービスやクラウドソーシングサービスが活性化しているため、幅広い職種のフリーランスに活躍のチャンスが広がっています」

そう話すのは、フリーランスとして働きたい女性と企業のマッチングサービスをはじめ、キャリアを磨きたい女性の転職支援、多様な働き方の推進事業を手がける株式会社Waris・共同代表の田中美和さん。

Warisでは、フリーのプロフェッショナル人材と企業のマッチングサービスを始めて5年、1年目は500人弱だった登録者が、現在は3600名以上に拡大しているといいます。平均年齢は38歳、既婚女性が多くを占めるとか。

そこで、ビジネス系フリーランサーがどのように働いているか、また、将来ビジネス系フリーランサーとして活躍するために、会社員時代にどんなスキルを身に付けておくべきかを伺いました。

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企業の課題解決、新たな取り組みを期間限定で支援する

ビジネス系フリーランスの人々はどんな働き方をしているのでしょうか。田中さんに一例を挙げていただきました。

●大手サービス企業が「PR戦略の立案・実行・内製化への移行」を依頼

→元・大手外資系企業の小売PR担当経験者が、週1稼働・3ヵ月間・16万円/月で受託

●ベンチャー企業が「管理部門の確立」を依頼

→元・ベンチャー企業の経理担当経験者が、週2稼働・期間未定・16万円/月で経理フローの構築と実務を受託

●ネットベンチャー企業が「新規事業戦略立案」を依頼

→元・大手IT企業マーケティング経験者が、週2~3日稼働・6カ月・25万円/月で受託

企業が新しい仕組みや制度を作りたい、事業・サービスを立ち上げたいといったときに、高度なスキルを持つ人材に数ヵ月~1年程度の期間、参加してもらうケースが多いようです。課題抽出、戦略や施策の立案、マニュアルやオペレーション作成を行い、それを実行するメンバーを指導・育成し、ミッションを完了するというわけです。

「自分の専門性や経験を活かせる。時間と場所の自由度が高い。そうした点で、この働き方に満足しているという声が多く聞かれます。特に女性は、育児との兼ね合いで働くペースをコントロールできる点をメリットと感じています。『毎日、子どもと一緒に夕飯を食べたい』、そんな理由でフリーランスの道を選んでいる方もいらっしゃいます」(田中さん)

ビジネス系フリーランスに必要なスキルは?

フリーランスで活躍している方々に「フリーランスという働き方に向いている人は、どんな人だと思うか」「会社員と比べてどんなスキルが必要だと思うか」という調査を行ったところ、以下の9つのスキル・特性が浮き彫りになったそうです。

1 )自走性高く案件を完遂

…時間やタスクを計画的に管理し、自ら考え自ら動き、さまざまなタスクを並行させながら着実に完遂することができる

2)コミュニケーション能力・良好な人間関係構築

…どんな環境であっても、周囲の人との良好な環境づくりを行い、相手に配慮しながら自分の意見を主張し、柔軟に対応していくことができる

3)成果に結びつく専門性・能力・経験

…主軸となる専門領域のスキルがあり、仕事への高いプライドを持ち、成果を出すことができる

4) 自分を売る力

…自分をブランディングし、社会のニーズを自らのサービスに転換し付加価値を付け、適切な値段で提案することができる

5) ニーズ・状況の判断

…クライアントのニーズやプロジェクトの状況を適切に判断することができる

6) 人を巻き込み・頼ることができる

…他者に働きかけ巻き込み、自身にないスキルを持つ仲間に頼ることができる

7) 前向き

…仕事が好きで、積極的に取り組み、細かい部分に一喜一憂せずに「何とかなる」と楽観的な考え方ができる

8)ありたい姿・ビジョンが明確

…自分の考えや行動を把握・理解し、自身を肯定し、どんなキャリア人生を歩みたいのか、何を実現したいのかを明確に持っている

9)自分の幅を広げる努力

…評価・望まれるスキルを高める努力を怠らず、常に好奇心旺盛で、リスクをとって自分のフィールドを広げることを恐れない

会社員のうちに、フリーランスで活躍できる力を磨いておく

こうしたスキルは、「会社で働く中で意識的に養っておくといい」と田中さんは言います。

「フリーになると、さまざまなタイプのクライアント企業に対応することになります。ですので、会社員時代に自ら異動を願い出るなどして、複数の部署を経験し、柔軟な対応力を身に付けるといいでしょう。また、業務面では、上流工程から下流工程まで――つまり企画から実行まで一貫して経験を積んでおくと、1人で担える範囲が広がり、重宝されます。新しいプロジェクトが立ち上がる際には、ぜひ手を挙げてチャレンジし、経験の幅を広げておくといいですね」

また、「働き方改革プロジェクト」「社内イベント実行委員」といったように、各部署からメンバーが集まって全社の取り組みを推進するプロジェクトやチームに手を挙げて参加するのもお勧め。

「異なる部署の人や外部の人と協働する、コラボレーションする経験を積んでおく。『フリー』というと、1人で動くという印象を持つ方が多いのですが、多様なクライアントと上手くつながり、人間関係を構築しながら業務遂行するのです。そういう仕事のやり方を20代のうちから身に付けておくと、フリーで活躍するチャンスが広がると思います」

副業・兼業からスタートしてみるのも手

いきなりフリーになるのは不安なもの。勤務先企業が副業・兼業を認めているのであれば、まずは副業として始め、手応えをつかんだ上で独立する道もあります。

「副業が禁止であれば、『プロボノ』という形をとってもいいでしょう。プロボノとは、専門的な知識やスキルを社会貢献のために、無償またはわずかな報酬で提供するボランティア活動のこと。NPOやNGOなどの仕事を手伝うといった形で、自身のスキル・経験が今の会社以外で通用するのかどうか試してみるのもいいと思います。そこで新たに得る経験や人脈も、その後、フリーになったときに活かせるでしょう。フリーランスになるのは片道切符ではなく、再び正社員に戻る方もいらっしゃいます」

労働力人口の減少や年金支給年齢の引き上げなど、今後「仕事する期間」が伸びていくのは必至。自分らしく働き続けるために、どこかのタイミングでフリーランスに移行、あるいは期間限定フリーランスを選択する道を検討してみてもいいかもしれません。

田中美和氏/株式会社Waris代表取締役・共同創業者

田中美和氏/株式会社Waris代表取締役・共同創業者

国家資格キャリアコンサルタント、一般社団法人プロフェッショナル&パラレル キャリア・フリーランス協会理事。

1978年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現 日経BP社)入社。編集記者として特に働く女性向け情報誌「日経ウーマン」を担当。これまで取材・調査を通じて接してきた働く女性の声はのべ3万人以上。女性が自分らしく前向きに働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年株式会社Waris設立。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』がある。

EDIT&WRITING:青木典子

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