「超アガり症でプレゼンが苦手…今後のキャリアが不安です」【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

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曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)など著書多数。

CASE16:「超アガり症のせいで、今後のキャリアが不安です…」(29歳男性・メーカー勤務)

<相談内容>

企画職ですが、超がつくアガり症です。

自分のアイディアを形にしたり、企画を組み立てたりするのはとても楽しいし得意なのですが、クライアントへのプレゼンテーションが大の苦手です。緊張のあまり頭が真っ白になってシドロモドロになるか、話す内容を見失ってどんどん脱線し、「何が言いたいのかわからない」と言われるか、どちらかです。

クライアント相手だけでなく、社内の会議であっても、大きな規模のものになると緊張し発言できなくなります。できることならば人前で話す仕事はやりたくないのですが、このままではキャリア的に行き詰まってしまうのではないかと不安で…どうすればいいでしょうか?(メーカー・営業職)

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デキる人のプレゼンを「完コピ」してみる

クライアントへのプレゼンは、かなりの重責です。あなたがアガり症であることは、社内の人間ならば皆知っているはずなのに、なぜ重要なプレゼンを任されているのでしょう?

相談者は29歳。もう中堅どころではありますが、「まだ伸びる、頑張れる」とポテンシャルを期待されているのかもしれません。上司は「アガり症を克服して、壁を一つ乗り越えてほしい」との願いを込めて、あなたに重要なプレゼンを任せているのでしょう。つまり、上司はあなたに大きな期待をかけているのです。それをモチベーションに、「アガり克服、プレゼン力向上」に真剣に取り組んでみてはいかがでしょうか?

「守破離(しゅはり)」という言葉をご存じですか?

師匠から教えられた型を「守」り、それを自分のものにする過程で少しずつ改善を加えて師匠の型を「破」り、自分のスタイルが確立できたら師匠の型から「離」れて自由になる。この段階を踏んでこそ、1人前になれる…という考え方です。まずはこの「守破離」を実行してみてはどうでしょう?社内を見渡し、このプレゼンはすごい!と思える人を師匠と捉え、その人のプレゼンを「完コピ」するのです。

私は今でこそ、研修や講演会など人前で話す機会が多く、アガることもありませんが、学生時代は全くダメでした。プレゼンに苦手意識がなくなったのは、大学時代。アルバイトをしていた学習塾で、ものすごく授業がうまい先輩のアシスタントを務めることになり、そのやり方を完コピしたのです。その人の話し方のクセや、ちょっとしたギャグまで、すべてを覚え、真似していたところ、いつの間にか「生徒を引き込む授業」のコツがつかめ、自分の「型」が身に付きました。

基本が身についてないと応用はできません。初めから自分らしさを出そうとしても撃沈するだけです。アガり症であっても、誰かを真似することならばできるはずだし、完コピ過程で自信もつくはずですよ。

とことん準備し練習しておけば、緊張は軽減できるはず

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ちなみに、コミュニケーション能力を測る項目の中で、「プレゼンテーション」は最も簡単な部類に入ります。なぜなら、準備した通りに話せばいいだけだし、基本的にはこちらから一方的に発信すればいいから。つまり、プレゼンで必要以上にアガってしまうのは、単純に「事前準備が不足している」せいとも言えます。

これ以上ないというぐらい準備を万全に行って、ひたすらその通りにやってみてはどうでしょう?緊張して話が飛びそうになっても、無意識に言葉が口を突いて出てくるぐらい、何度も何度も、とことん練習するのです。そうすれば、「ここまでやったんだからきっと大丈夫」と、自分に自信が持てるようにもなるでしょう。

それに、工夫次第で、緊張を軽減することはいくらでもできるはずです。資料を作り込んで、スライドにある程度語らせるという方法もあるでしょうし、事前にシナリオを練り上げてそれを読み上げる(クライアント相手ならば、多少抑揚をつけて)という方法だってあるはず。頭をひねって、自分への負担をなくす方法を考え、実行しましょう。

なお、「緊張していることがばれないかな…」と気にしていると、余計に緊張してしまいますので、いっそ明かしてしまうというのも一つの手です。

「実は緊張していまして…」と素直に口に出して周りに伝えると、緊張がほぐれるという心理学の研究結果があります。伝えられた側も「あたたかく見守ろう」という気持ちになり、場があたたまるという効果もあるようです。

どうしても嫌なら「適材適所」を申し出て、我が道を進む

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相談者はもうすぐ30歳、「弱みを埋めてゼネラリストになる」か、「強みに特化する」かの分かれ道に差し掛かっています。

もしも、どうしてもプレゼンが苦手で、できればやりたくない、プレゼン力を鍛えるのも気が乗らない…というのであれば、上司に「適材適所」を申し出るしかないと思います。

企画職にはやりがいを持っておられるようですから、「プレゼンは別のメンバーに任せ、自分は企画立案などに特化したい」と申し出るのです。あなたに目をかけ、「弱みを克服してステップアップしてほしい」と望んでいた上司はがっかりするかもしれませんが、本当に嫌なのであれば、無理してプレゼンの場に立ち続けることは、あなたにとっても会社にとってもよくありません。

これからのキャリアを心配されていますが、確かにプレゼン下手では社長になるのは難しいでしょうが、企画部門のマネージャーや経営企画室長ならば目指せるのでは?自分の強みを活かせる環境で、スペシャリストとして強みを磨き続け、自分の道でステップアップを目指してください。

<アドバイスまとめ>

多くの悩みの解決方法は、

自分を変えるか、それとも環境を変えるか。

どちらならばできそうか、考えてみよう

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康

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