マンションが火事。その時ほんとに逃げられる?防災設備の使い方を実際に体験してみた
最近は、マンション管理のなかでも「防災」が注目されている。イベントとして防災訓練をする例も増えているが、住民が設備や使い方について知る機会は少ない。私自身も今期マンションの防災サポーターという役割を引き受けたが、分からないことも多いのが実情だ。そこで、マンション管理について、三井不動産レジデンシャルサービスが豊洲にオープンした「すまラボ」で、実際の設備を使って体験してみた。
体験型の施設を活用して、マンションの設備を確認
「すまラボ」は、東京都から東京都職業訓練校としての認定も受け、ビル内に実際のマンションに近い施設をつくり運営している。マンション管理者の研修のほか同社が管理する物件の住民イベントやコミュニケーションスペースとして利用が可能だ。また、体験施設として開放し、子どもたちの社会見学も受け付ける予定だそうだ。
具体的には、マンションの共用部・専有部のさまざまな設備の利用方法が試せる。例えば、「避難の際のバルコニー隔壁板蹴破り体験」や「火災時の実物消火栓での放水体験」など多彩な体験型研修企画を盛り込み、従来の施設とは一線を画した“体験型コミュニケーション研修施設”となっている。
今回は特に防災・防犯について体験したことをまとめてみたい。
いざというときのために、バルコニーの隔壁板を蹴破ってみる
地震でドアが開かない、あるいは共用廊下側に火や煙が回って逃げられない。そんな場合に大切な避難経路となるのが、バルコニーを利用した避難経路だ。自宅のバルコニーに避難ハッチがない場合は隔壁版を壊して隣家に逃げなければならない。「すまラボ」では新旧の2つのタイプの隔壁板が用意され、実際に蹴破ることができる。
旧タイプのものは、かなり固くて1回では蹴破れない。何回も挑戦してやっと穴が開く。新タイプのものは旧タイプに比べて壊しやすくなっているようだが、やはり女性の足では数回試す必要がある。ポイントはつま先ではなく、かかとで蹴ること。またバルコニーに置いてあるようなサンダルでは蹴破るときに足を痛めてしまいそうだ。バルコニーにはサンダルだけでなく古くなったスニーカーを置いておこうと痛感させられた。【画像1】隔壁板を実際に蹴破る(画像提供/三井不動産レジデンシャルサービス)
焦るとなかなか開けられない避難ハッチ
避難ハッチとは、【画像2】のように、避難用のはしごが組み込まれた防災設備である。避難ハッチを開けた経験のある人は少ない。ほとんどの人が経験したことがないかもしれない。開けてみたら、まずチャイルドロックが掛かっていて、すぐ開けることができないことに気付く。もちろん、バルコニーで遊んでいる子どもが間違って開けてしまう可能性を配慮してのことだが、初めてだと面食らうかもしれない。
また、はしごを下すにも、ハッチによって方法が違うこともあるようだ。どこを押すのか、どこを開けるのか、はしごを出すための一見して分かりやすいマークが欲しいと思った。いずれにしても、火事が起こってしまった状況なら、もっと気持ちが焦ってしまい、うまくできるかどうか不安を感じた。避難ハッチも平常時に一度使ってみることは必要だろう。【画像2】バルコニーに設置されている避難ハッチ(画像提供/三井不動産レジデンシャルサービス)
消火栓の扱い方も実践できる
マンションの屋内に設置された消火栓は、住民たちが初期消火に使うものだ。しかし、意外と浸透していない。私も目にはしていたが、自分たちで使えるとはマンションの防災訓練を体験するまで知らなかった。消火栓ボックスは自分たちで開けて、自分たちが使うためにあるのだ。
この消火栓だが、実際に放水してみると意外に力がいる。水圧があるのでホースの先をしっかり持っていないと、正しい方向に放水はできない。これも分厚いガラスで区切られた空間で実際に体験できる。いざというときに使えるように消火栓が建物のどこにあるかを知っていることはもちろん、使い方についても頭に入れておく必要があるだろう。消火栓で放水を体験(画像提供/三井不動産レジデンシャルサービス)
停電でもトイレの水は流せるって知ってる?
最新のトイレは手洗い部分がなく、すっきりしたデザインになっている。しかも、トイレ本体ではなくリモコン操作になっていることが多い。リモコンが使えないと水が流せないと思っていたが、最近の機種では、便器横のトイレのパネルを外すと、手動レバーがあるのでそれを引っ張ると水が流れるようになっていると教えてもらった。ふだん見えないところだけに、通常の生活をしていると気付かないだろう。もちろんトイレのタイプによって方法は異なる場合があるが、こういう点も日常の暮らしのなかで確認しておきたい。【画像4】左下の手動レバーを引っ張ると水が流れる(画像提供/三井不動産レジデンシャルサービス)
そのほかにも、マンションの入り口にAEDがあることは知っているが、いざというときに使えるかどうかは自信がない。また、防災用品があるのを知っていても使い方が分からない。どんなに設備が整っていても、万が一のときに使えないと意味がない。もちろん各々のマンションでも事情が異なってくるだろう。それだけに、一度住民で実際に体験し、自分のマンションに合った防災を考えてみることは大切だ。
今後、「すまラボ」のような施設が増えてくれれば、防災だけでなく、「暮らし方」まで含めてマンションの施設の管理方法全体についても知識が身に付きそうだ。何より、大人だけではなく子どもたちの自由研究としても、おもしろい体験ができるだろう。自分自身の命を守るためにも、マンションという自分たちの財産を守るためにも、体験してみることをおすすめしたい。●取材協力
三井不動産レジデンシャルサービス(株)
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