どうして営業は体育会系のほうが強いのか?
営業の仕事の目標は「目標予算を達成させること」。
だからこそ、目標予算を意識しながら営業に臨むことが大切なのですが、『絶対達成する部下の育て方』(ダイヤモンド社/刊)の著者で、営業コンサルタントとして現場を見つめる横山信弘さんは、多くの企業で「目標予算に焦点が当たっていない」――つまり、チーム要員が目標予算を達成するという明確な意志がないことを指摘します。
では、目標を絶対達成するために必要なこととは一体なんでしょうか? 横山さんにお話しを聞きました。今回はその前編をお伝えします。
■目標を絶対達成するために必要なものとは?
―初めての著作となるそうですが、まずは本書を執筆した経緯から教えていただけないでしょうか。
「実は、以前から本を出さないのかと、セミナーに来られる経営者やマネージャーの方々からよく聞かれていたんです。この本に書かれている予材管理は非常に新しい考え方だからと言われていましたから。しかし自分としては本を出して知名度をあげなくても、セミナーには多くの方が来てくださいますし、そもそも執筆する時間もあまりとることができなかったということから、本を出すことに前向きではなかったんです。
ただ、営業活動で困っている人は非常に多いですし、セミナーに来たくても来られないという方もいらっしゃいます。自分の考え方をもっといろんな人に広げてもいいのかなと思うところもあったので、今回、出版させていただきました。ただ、出すからには絶対に売れないといけないと思っていましたので、メルマガ読者など多くのファンが増えたタイミングで初めての本を出すことができたことは、とても良かったことだと思っています」
―本書について、どのような反響が横山さんのところに届いていますか?
「具体的な声としては『よくぞ書いてくれた!』というものが多いですね。この本にはきれいごとは一切なくて、現場の問題に即して書いています。よく営業コンサルタントで『売上アップ』を掲げている人がいますが、何が一番問題かというと目標予算を達成できるかどうかなんですよね。前より良くするとは誰でも言えますが、社長がつくった予算計画を達成させるという発想や覚悟はあまり出てこないと思います。
絶対に目標を達成させるためには、目標額の2倍の予材を積んでリスクヘッジをするリスクマネジメントの発想が大切ですから、テクニックだけの効率化を叫ばれている講師やコンサルタントの方々は、なかなかそうは言い切れないと思います」
―その「予材」の管理法については後々ご説明をいただくとして、結果的には営業がひたすら動くということになりますよね。
「そうなんです。だから昔から営業は体育会系の方が強いんです。それはある意味、理に適っていると思います。理論はとても重要ですが、理論を現実的に形に変えるためには「インパクト×回数」を心がけて「体得」しなければ上手くいかないからです。
私が営業コンサルタントになる前、日立製作所でSEをしていたのですが、当時営業活動の合理化や効率化が叫ばれていました。企業が情報システムを導入し、営業に情報武装させることで商談プロセスが短くしたり、お客様に対する営業活動の質を高めるといったことが言われていたんですね。しかし本書にも書きましたが、営業一人ひとりがパソコンを1台ずつ所有するようになってからは、実際はメリットよりもデメリットの方がはるかに大きくなったのです」
―デメリットというと?
「社内にいる口実が膨大に増えたんです。昔は名刺フォルダの中を見て、お客様のところに行って会うしかなかったですが、今はパソコンや携帯電話などで机に座ってコーヒーを飲みながらメールチェックして、見積もりや提案資料を自分で作り、挙句の果てにマネジャーは自分で営業管理資料を参考書なんかを読みながらエクセルで作るために夜遅くまで残業しています。いつから社内作業が営業の仕事になったのでしょうか? 社内にばかりいると、行動量が伸びていきません。やはり、営業はできるだけ多くのお客様に会いにいくべきです。これは本書で「単純接触効果」という言葉を用いて説明しています。営業のスキルに左右されることなく、顔と顔を突き合わせて情報を交換することで信頼を得ることができるようになるのですから」
―本書で提唱されている新しいマネジメント術「予材管理」ですが、これは一体どのようなものでしょうか?
「まず一つ覚えて欲しいキーワードは“絶対達成”です。つまり、絶対に目標予算を達成させる、ということです。こう言うと、よく『“絶対”なんてない』と反論してくる方もいるのですが、例えば上司から明日の朝10時にお客様のところに行こうと言われたら、『なんで行かなくちゃいけないんですか』などと反論せず、当たり前のようにお客様のところに行きますよね。そして、10時にお客様のところに着くために交通機関を調べたり、地図を見たり、能動的に考えて行動すると思います。それは脳に空白が生まれるからです。無意識のうちに計画を立てて行動している状態です。
“絶対達成”もこれと同じなんです。例えば小さな企業で年間目標予算1億円と言われてて、『なぜですか?』と思う人は多いと思います。“いつも頑張って8千万円くらいしか届かないのに”と。でも、実際は上司や経営者がそういう目標を立てたのですから、『はい、やります』としか答えようがないんですよ。なぜなら、それが営業の仕事ですから。営業が納得するかどうかというのは関係がありません。達成するかどうかを考える以前に、前述したとおり、10時にお客様のところへ着くためにどうするかと同じ思考プロセスで、『どう達成させるか』を考えて能動的に行動しなければなりません。
“絶対達成”というのは、目標未達成というリスクをいかに回避するか、というリスクマネジメントの考え方なんです。そう考えることで目標達成が最低条件になるわけですから、そのための目標材料は2倍くらい積んでおけばいいだろうという考えになります。これが『予財管理』の入り口です」
(後編に続く)
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