完璧主義に潜む病理性とは?

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 人間には二面性があるという。正しいことをしたい気持ちと、悪いことをしたいという衝動。そして、何かがきっかけで、異常な心理状態に陥ってしまう可能性が、人間にはあるのだ。
 『あなたの中の異常心理』(岡田尊司/著、幻冬舎/刊)では、誰にでも潜んでいるかもしれない影の部分を、悪いこと、異常なこととしてではなく、“人間の本質に根ざした一面として知ること”を目的の1つとし、正常心理と明らかな異常心理にスポットを当てる。
 例えば、真面目で努力家な人ほど、何事にも完璧を求めてしまうことが多いが、そうした完璧主義は、うまく機能しているときには、優れた向上心や高いパフォーマンスの原動力となる。実際、完璧主義の持ち主は、学業においても、職場や家事、子育てにおいても、すばらしい成果を収めているケースをよく見かける。
 しかし、完璧主義は両刃の剣だ。頑張っているのに、成果が出ず、目的を達成できなくなると、強い病理性が出てしまうこともある。完璧でありたいという思いを捨てることができないと、不完全で期待外れの状況にいることに強いストレスを生んでしまうのだ。
 世間一般からみれば成功の絶頂にあるとしか思えない人が、あっけなく自殺してしまうということもある。そうした場合に見られるのが、完璧主義が逆回りに作用してしまった状況であるという。
 その典型的なケースとして挙げられるのが、三島由紀夫の自決事件だろうと著者は語る。三島由紀夫の壮絶な最期は、彼の完璧主義なしでは起こり得なかったことだ。作家の三島由紀夫は強い完璧主義者であったことが知られている。約束事を重んじることで有名で、どんなに仕事が立て込んでいても、締め切りを守らなかったことは一度もなかった。時間にも厳格で、自分自身、遅刻することもなかったが、誰かが遅れてきたときには15分以上待つこともなかったという。
 完璧主義は人を成功へと押し上げる原動力にもなるが、ひとたび歯車が狂えば、完全を求める気持ちが、不完全な自分を死に追い詰める可能性も持っている。完璧ではない、不完全な自分に耐えられる力こそ、混乱した見通しのない時代を生き延びるためには必要ではないだろうか。
 完璧主義の他にも依存、コンプレックス・・・など誰もが少なからず持っている一面が、度を過ぎると、異常心理に陥ってしまう可能性がある。頑張りすぎる人や完璧主義の人は、たまには肩の力を抜いて、楽に物事に取り組んでみるのもいいかもしれない。
(新刊JP編集部)


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