内部被曝で重大な疾患の恐れ

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 福島第一原発事故から一年が経ちましたが、壊れた原子炉建屋からは今もなお放射性物質が漏れ続けています。この事故によってこの先何十年も放射能と付き合わなければならなくなってしまった日本で、これからどのようなことが起こるのでしょうか。
 医師として広島の原爆を経験した肥田舜太郎さんは、著書『内部被曝』(扶桑社/刊)の中で、長期間にわたり低線量の放射能に被曝し続けることによる健康被害の危険性を指摘しています。
■「原爆ぶらぶら病」が東日本で発生する
 肥田氏は、今後日本で原爆を投下された広島・長崎と同じことが起こりうるとしています。
 その一例が、有名な「原爆ぶらぶら病」です。広島・長崎に原爆が投下されてしばらく経ったあと、被爆者の中で「ある日突然たいへんなだるさを感じて会社へ行けなくなった」「3日も4日もだるさが続き、良くなったと思ったら翌月また同じことが起こるため働き続けることができない」といった症状を訴える患者が急増しました。そのだるさは強烈なもので、ある患者は肥田さんの診察中に座っていられず頬杖をつき、椅子から床に降りてあぐらをかき、最終的には横になってしまったそうです。
 この病気は低線量被曝が原因となった晩発性障害(被曝後、時間がたってからあらわれる障害)として知られています。すでに指摘されているがんや白血病だけでなくこの病気も、今後患者数の増加が懸念されているのです。
■低線量被曝による患者は社会に抹殺される?
 低線量被曝による晩発性障害において最も大きな問題は、診察できる医師がいない点だといえます。つまり、仮に福島第一原発事故による被曝で健康を損ねたという患者が病院にやってきたとしても、それが確かに原発事故の影響によるものだということを証明する学問がまだないのです。
 この点についても肥田さんは、かつて「原発ぶらぶら病」の患者が病気だと認定されず、満足な補償を受けられなかったのと同じことが、今後の日本で起きるのではないかと懸念しています。
■被曝から逃れるには?
 では、年を経てから健康に重大な影響を及ぼす恐れのある低線量被曝から身を守る方法はあるのでしょうか。
 肥田さんは「今も放射能が出ているので完全に逃れるは非常に難しい」といいます。原発から遠くに避難できたとしても、今の日本で汚染されていない食べ物だけを食べ続けることは困難であり、外部被曝は避けられても、内部被曝してしまう可能性が高いのです。
 被曝に対抗するには生まれ持った免疫力に頼るしかありません。
 肥田さんは、ほとんどの人は汚染された日本で生きるしかない以上、もう自分には放射性物質が入ってしまっていると割り切った方がいいとして、免疫力を高めることによって被曝による健康被害から逃れるという生き方を提案しています。
 本書は、放射能についての基礎知識はもちろん、原発事故後の日本社会の変化や、想定しうる放射能被害と対策について、医師として放射能と向き合い続けてきた肥田さんならではの視点で語られています。
 日本で暮らす以上、もう放射能からは逃れられないのかもしれません。だとしたら、このまま日本で暮らすのかどうかということも含めて、放射能とどう付き合っていくかということが、私たちに問われているのです。
(新刊JP編集部)


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