U-23世代にこそ乗ってほしい「U-50万円フランス車」
▲お若い自動車ビギナーにはとっつきにくい感じがあるかもしれないフランス車ですが、一度乗ってさえみれば、その良さがよくわかるはず。ぜひ前向きに検討してほしいものです。写真は70年代のルノー 5アルピーヌ
おっさん世代には伝わらないことも多いその魅力
筆者は「車の国籍」に関するこだわりは特になく、出来が良くて美しい車でさえあれば製造国はどこでも良いと思っている。が、強いて言えば「フランス車党」ではあるのかもしれない。最初に乗った輸入車である「87年式ルノー 5 バカラ」の影響を色濃く受けた自動車人生を送っているからだ。三つ子の魂百までといいましょうか。
で、それゆえルノーをはじめとするフランス車全般の魅力を各方面に問いて回ることが多いのだが、どうにもウケが良くない。フランス車の魅力をアツく語っても、「なるほど。ではわたしもフランス車を買ってみよう」という人はほとんど現れず、「あんなモノどこがいいんだ? ていうかキミは馬鹿か?」などと非難中傷されるばかりである。
彼ら・彼女らが言うフランス車の「あんなモノどこがいいんだ?」ポイントは、主に以下のとおりだ。
1. 最近のはそうでもないけど、ちょっと前までのはデザインがなんだかよくわからない
2. エンジンがたいてい非力である
3. いわゆるハイテクとほぼ無縁の古くさい設計である
4. しょっちゅう壊れる
これら4ポイントについて自分は逐一反論してきたのだが、なかなか聞いてもらえない。
そして自分は、ほとほと疲れた。
▲一部に派手なスポーツモデルもありますが、基本的には地味な実用車が多く、エンジンスペックなども地味な場合が多いフランス車。ハイテクな日本車やドイツ車を好む人から見ると「……なぜあえてフランス車?」と思う気持ちはわからんでもありませんが……
おっさんが無理なら若者世代に勧めてみようじゃないか!
自分を含むいい年の大人というのは脳ミソや価値観がすでにある程度完成してしまっているため(悪く言うと凝り固まっているため)、基本的には人の言うことなど聞かない。人生に新しいモノを入れたがらない。わたしを含め「あーはいはい、わかったわかった」とか言いながら実は全然わかっておらず、そして自分の方針を変えるつもりもない……というのは、そこかしこで見かけるおっさん特有の風景である。
ということで周囲のおっさんに対する折伏はあきらめた小生だが、フランス車へのこの熱き想いは如何ともしがたい。どうにかして、誰かに、あの素晴らしさを伝えずにはいられない。
そこで自分は、頭がまだ柔軟な「若者」をターゲットとすることにした。
具体的には18歳から23歳あたりの、大学生ぐらいの(主に)男子だ。いや今どき大学なんて出なくたって一向に構わないので、「そのぐらいの年齢の人」というだけの意味である。以下、そのあたりのU-23的人材に向けてフランス車に関する演説を一発ぶちかましたいと思う。
▲23歳以下の若者世代に向けてフランス車に関する熱弁を振るう筆者(のイメージ)
そのデメリットは、実はメリットだった?
さて諸君。……いや、若い人が相手だからといってエラソーにするのはよろしくないので、あえて丁寧にいこう。さて皆さん。「若者の車離れ」が叫ばれる昨今ですが、一部の人は趣味として、また一部の人は通学や通勤などの必要上、自動車の購入を検討しているかと思います。
その際はぜひ、だまされたと思って「フランス車」も検討対象に入れてみてください。
自動車に関する予備知識がさほどない人は、「あぁ、そうなんですか」とシンプルに考えていただければいいですし、下手なおっさん以上に予備知識がある人は、懐疑的な目での検討であってもぜんぜん構いません。とにかく、一度は検討対象に入れてみてほしいのです。
なぜならば、フランス車は本当にステキだからです。
何がステキって、まずデザインがステキです。
最近のフランス車のデザインは汎ヨーロッパ的ニュアンスに変わりつつありますが、中古車として狙える「ちょっと前のフランス車」のデザインは、ハッキリ言ってなんだかよくわからないフランス固有系です。でも、そこが逆にイイのです。
フツーの物をフツーに買ってもつまらないではないですか? 若いうちは冒険をしてみましょう。異国のセンスにどっぷりと浸かってみましょう。するとそのうち、フツーすぎる何かでは決して得ることのできないディープな満足感みたいなものが、腹の中にふつふつと湧いてくるはずです。「違いを知ってるオレ」みたいな選民意識も、もしかしたら出てくるかもしれません。選民意識は基本的には鼻につくものですが、まぁ若いうちはそのぐらいが逆に良いのかもしれません。ぜひ「選民」になってください。
▲写真は旧々型ルノー ルーテシアのスポーツバージョンであるルノー スポール2.0。02年初めまでの前期型は割と普通だったのですが、02年3月からの後期型はかなり意味不明な顔つきに……。でも、慣れてくるとそこが逆に「自分にとっての味」になったりもするものです
そして「基本、エンジンは非力」というのもステキな点です。
腹の出てる脂ぎったおっさんじゃないんですから、若い人がパワー(馬力)に頼ってどうするんですか? 小さめのパワーで、でも工夫をしながら、カネに物を言わせてるだけの大パワー系おっさんに吠え面をかかせるのが痛快なわけです。そしてフランス車はカタログ上の数値は非力な場合が多いのですが、実際乗ってみると不思議なことに結構パワフルです。フランス人はケチというか合理的なので、「使わん回転域のパワーをそんなに用意してどうすんねん? よく使うバンドだけ充実させときゃええやん?」と思っているのでしょう。関西弁ではないと思いますが。
▲スペックは大したことないのに高速道路では妙によく走る……というフランス車共通の特性は、フランス人が好きな「長期バカンス」に関係しているのかも。走りがイマイチな車で長距離移動するのはツラいですからね。写真は旧型シトロエン C5。これまた謎なデザインですが、そこがイイのですよ。よく走りますし
最新世代のフランス車はけっこうハイテクですが、中古車に関しては「いわゆるハイテクとほぼ無縁の古くさい設計である場合が多い」というのもグッとくるポイントです。理由は上の「非力なエンジン」と同じです。そして「でも実際乗ってみると、ハイテク系にも負けない走りっぷりを見せる」というのも、非力なエンジンとのアナロジーです。
フランス車は「しょっちゅう壊れる」との印象を持っている人もいるかもしれません。そこに関しては正直ちょっと微妙です。いや、最新世代のフランス車は決してそんなこともないのですが、安価な中古車、つまりちょっと古い世代のフランス車は、確かにマイナートラブルみたいなものが発生する可能性はそれなりにあるかもしれません。
ただ、筆者自身の経験から言って「しょっちゅう壊れる」というほどではないので、過剰な心配は無用です。もしもマイナートラブルが発生した場合は、若さと気合で乗りきってください。大丈夫、あなたならできます。なぜならば、若者だった筆者(かなりのボンクラ)でも余裕で乗りきれたからです。
▲流通量が多くて探しやすいのは、こちらプジョー 207。07年~12年に販売された(比較的)新しいモデルなので、昔のフランス車ならではの謎デザインではなく汎ヨーロッパ的な造形ですが、その分、いろいろな意味で扱いやすいフランス車であるとは言えるでしょう
以上のようにステキな中古のフランス車は、上を見ればウン百万円の物件も多数流通していますが、無理してそういったモノを買う必要もありません。一概には言えませんが「車両価格50万円以下」ぐらいの予算感で十分でしょう。フランス車の中古車はやや人気薄なためぶっちゃけ安く、そのぐらいの予算でもけっこういろいろな車種が狙えてしまうのです。
しかし当然、50万円以下ですとビカビカの高年式車みたいなのは狙えず、ビジュアル的には正直ちょっとボロめの物件になるかもしれません。でも、それもまた良しです。なぜならば、パリの人だって基本的にはそういった「使い古してる系」の車を自家用車としている場合が多いからです。キレイでビカビカの高年式フランス車より、50万円以下の多少くたびれてる系の方が「よりパリっぽい」「むしろ本格派」とすら言えますので、どうか安心してください。
▲写真はパリの一角。イタリアのアルファ ロメオ ジュリエッタを含む新しめのものから古いものまで、いろいろな車が止まってますが、一番手前のは左のドアが大きくへこんでますね。ホイールも黒のいわゆる鉄ちんですし。実はこんな感じの小型大衆車が数多く走っているのがパリという街です
さて皆さん。わたしからのプレゼンはとりあえず以上です。
これをお読みになったU-23人材の何割に刺さったかは甚だ不明ですが、もしもあなたが「フツーにトヨタとかミツビシとかのちっこい中古車を買うのも、なんだかなぁ……」と感じているのであれば、どうか以上の内容を少々の参考にしてみてください。趣味の対象であれ移動の道具であれ、あなたのカーライフってやつが、より充実した楽しきものになることを望んでやまない不肖筆者49歳です。
ご清聴ありがとうございました。
【関連リンク】
車両価格50万円以下のフランス車をとりあえずチェックしてみるtext/伊達軍曹
photo/ルノー、プジョー・シトロエン、photo AC
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